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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
少女誘拐編
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姉様は行動的

 ルーナと姉様がお風呂から出た後、僕も入って今日の疲れを癒した。ちなみに、姉様とルーナはお風呂から出た時、スケスケのネグリジェだったので、目のやり場に困った。なんてものを持ってきているんだ姉様は。魔法を使えば、温度の調節もできるから、風邪をひくことはまずないだろうとはいえ、もうすこし自重して欲しかった。ルーナはずっと恥ずかしそうに真っ赤になって下を向いていたし、姉様はそんなルーナの背中を押してくるものだから、僕も苦労した。いや、もちろん、嬉しくなかったかと言えば、そんなことはないのだけれど。

 それにしても、今日は、城から抜け出したり、自分たちで料理をしたり、家を組み上げたり、色々と大変だったなあ。まあ、姉様は楽しんでいたみたいだし、ルーナも、きっとこんな経験はしたことがなかっただろうから、良かったのかもしれない。普通は経験できないことだし、しようとも思わないだろうからね、城から抜け出すなんて。


「それにしても、あの男。セラブレイト、とか名乗っていたっけ」


 僕は、こう言っては悪いけれど、恰好と言葉遣いが全く似合っていない男のことを思い浮かべる。違法奴隷の商人だと姉様は言っていたけれど、自らそれを白状したのだろうか。だとしたら、その目的はなんだろう。彼は、姉様のことを知っていながら、正体を明かした。そして、明日もまた来るとも。だとすれば、目的は絞り込める。


「姉様の、そして僕とルーナの身柄か」


 僕たちのことを知ったうえで、余裕を崩さなかったあの態度。確実に捕らえることができる算段でもあるのだろうか。済んでしまったこととはいえ、転移できることを知られてしまったのは失敗だったかもしれない。かといって、ここから別の場所へ移ることもできない。あの男が言っていたように、違法奴隷の商人など放置できるはずもないからだ。誘導されているようではあるが、それは結果論であり、向こうも意図してのことではないだろう。こんなところで、僕たちに遭遇するなど予想出来ようはずもないからだ。まして、護衛も何もつけずにこれほど遠くまで来るなど、普通ではない。


「何にしても、もう一度、会うしかないか」


 最悪の展開は、僕たちが全員捕らわれることだ。もちろん、そんなことをさせるつもりはないし、どんな手段を取ろうとも、最悪、姉様とルーナだけは無事に帰すつもりだ。

やはり、今からでも戻って、父様と母様に事情を説明するべきだろうか。いや、それでは相手を警戒させてしまうか。そうすれば、ここへは訪れない可能性もでてくる。それでは、他の人が助からない。彼らに囚われていると思われる人たちを解放するためにも、そして今後新たな彼らの犠牲者を出さないためにも、彼らを逃すわけにはいかない。


「問題は、この思考は完全に読まれているってことか」


 何にしても、明日、もう一度会わなくてはならないな。




 僕が、風呂から上がると、姉様とルーナは部屋のベッドに座り込み、談笑していた。

薄い生地なので、身体のラインは透けていたし、下着とかいろいろ、見えてはいけないものが見えそうになっていたり、だけどやっぱり見えなかったりと、改めて目のやり場に困ったが、ここで引いては姉様の思うつぼなので、僕も意を決して、ルーナと姉様の前に座り込んだ。


「あら、残念。押し倒してくるかと思ったのに」


 僕が座り込むと同時に、姉様がそんなことを言うものだから、思わず咳き込んでしまった。


「冗談よ」


 落ち着くんだ、ここで姉様のペースに呑まれるわけにはいかない。ルーナはまだ10歳になったばかりなんだから。

 そんなことは関係がないのだけれど、考えていないと色々と余計なことを考えてしまいそうなので、気合を入れるためにも頬を叩いた。


「それで、姉様はどうするつもりなの」


「もちろん、あの男とその背後にいる人物まで引き摺り出すつもりよ」


「ルーナもいるし、正面切って戦うのは愚策だと思うけれど」


「そのことなら大丈夫よ。応援を呼んでおいたから」


 姉様がそう言うと、後ろで扉が開く音がした。


「セレン様。準備が整いました」


「お疲れさま」


 入ってきたのは、ルーナの従者のフェリスさんだった。


「お久しぶりでございます、ルグリオ様」


「どうしてここに」


「それはもちろん、私が呼びに行ったからよ」


「アースヘルム王国まで転移してきたの、この短い時間で」


「そうよ」


 姉様は事も無げに言ってみせる。確かに姉様が父様や母様に頼るとは思っていなかったけれど。それにしても行動的すぎる。僕が驚いていると姉様は神妙な面持ちで続けた。


「もちろん、すぐに捕らえるわけではないわ。向こうの決定的な証拠を掴んでから、おそらく、人手が足りないと思って来てもらったのよ。捕まっていると思われる人たちを解放するには、私たちだけじゃ足りないでしょう」


それにしても、これだと、母様にはこちらのことが伝わってしまうのでは。


「ルディック様に話をしたら、面白そうなことをしているな、と協力してくれたわ」


 ルディック様というのは、アースヘルム王国の国王様でルーナの父親のルディック・リヴァーニャ様のことだ。ライオンのような風貌の、金髪で引き締まった体をしている、いかにも歴戦の強者といった感じの人だ。ルーナの母親で、アースヘルム王国王妃のアリーシャ様は、ルーナと同じ長い銀髪に、母様にも劣らないふくよかな魅力のある女性で、とても三児の母とは思えない方だ。直接会ったことはないので、肖像でしか見たことはないけれど。いずれは、挨拶に伺わなくてはならない。


「アルヴァン様とカレン様も来られるとおっしゃられたのですが、それは私がお止めしました」


「面白そうなことって」


「心配しなくても大丈夫よ。万が一にも想定外は起こらないわ」


「いや、それが起こるから想定外なんじゃ」


「とにかく、私たちを信じなさい」


 そう言って姉様は、フェリスさんが入れてくれた紅茶の入ったカップに口を付けた。


「具体的にどうするのか決まっているの」


「当然よ」


 姉様は自信たっぷりに言い切った。

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