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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
少女誘拐編
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この生活も悪くないわね

 セラブレイトと名乗った男が帰った後、僕たちは夕食にすることにした。食材や器具は姉様が持って来ていた。


「姉様、どのくらい持ってきているの?」


「さあ。でも、今日とか明日になくなるようなものでもないわよ。なくなったら調達して来ればいいのだし、空気があれば、水にも困らない。本当に魔法って便利ね」


 姉様は落ちている石や土を使って、調理台やかまどのようなものを生成した。


「屋外での料理はカレーがいいって、何かの本に書いてあったわ。だから今日はカレーにしましょう」


 姉様は、ニンジンや玉ねぎ、米などを取り出した。


「って、お米まで持ってきてたの」


「ん、ルグリオはパンの方がよかったかしら」


 それなら、と言って、イーストや小麦粉、バターなども取り出す。


「いや、そうじゃなくて。カレーでいいよ」


「そう。ならさっさとはじめましょう。こっちは一応タネだけ作っておいて、明日の朝ごはんにでもしましょうか。今焼くよりは、いくら収納の魔法があるとはいっても、焼き立ての方がおいしいものね」


 姉様は、ポケットからゴムを取り出して、髪をまとめる。さらに、エプロンまで持っていた。


「なんでそんなものまで持っているのさ」


「細かいことは気にしてないで、手を動かしなさい」


 そう言われてしまったので、僕は包丁を持ってニンジンやジャガイモなどを切る。


「危ないから、ルーナは座って待っていてもいいのよ」


「いえ、私もお手伝いいたします」


「そう。ならお願いしようかしら。でも、その前に、ルーナも髪をまとめないとね」


 姉様は、今度はリボンを取り出すと、ルーナの髪を一つにまとめた。


「じゃあ、ルーナはお米を炊いてくれるかしら。その前にお米をといでね」


「はい」


 ルーナは水を出して、米をとぎ始めた。ルーナの手は小さいから、零れないか心配だ。っといけない。僕もよそ見をしている場合ではなかった。いくら、ルーナのうなじが色っぽく見えても。




「うん。なんとなくわかっていたけれど、おいしくはないね」


 出来上がったカレーらしきものは、これと言って特筆すべき点もなく、食べられないということはないけれど、素人が作ったらこうなるんだろうなあといった出来具合だった。


「愛情という名のスパイスも掛かっているから大丈夫よ。でも、そうね。これからは、もっと料理の勉強をしておかないと駄目ね」


「抜け出さない、という選択肢は」


「ないわ。それにね、これは別に抜け出すためだけに言っているのではないのよ。できることは多い方がお得じゃない」


 確かにその通りだ。クッキーなどを焼いたりしていたことはあったけど、あれはお城の調理場を使ってのことだし、こういう場所では少し勝手も違う。


「まあ、初めてにしては上手くいった方じゃないかな」


「そうね。さて、食器を洗ったら、明日のための作戦会議よ」


「その前に、寝床はどうするのさ」


「もちろん、テントを持ってきているわ」


「……姉様のことだから、ログハウスをそのまま運んできているのかとも思ったけれど」


「さすがに、見つからないように組み立てるスペースがなかったわ」


 あったらやっていたんだ。


「そうね。……ついでだから、ここで組み立ててしまいましょう」


 姉様がやる気になっていた。余計なことを言ったのかもしれない。


「材料は、この辺りにある土と石、あとは木を切り倒して加工しましょう」


「作り方なんてわかるの、姉様?」


「知らないわ。でも、それっぽい本は持ってきているから、読みながらやりましょう」


 行き当たりばったりだなあ。


「心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。それに、一度作ることができれば、それ以降は簡単に魔法で組み上げられるかもしれないし。要はイメージの問題なのよ。リリス女史もおっしゃられていたでしょう」


 つまり、ログハウスに対する明確なイメージが出来れば、作ることも可能だということか。確かに、言っていることは間違っていないのかもしれないけれど。

 僕たちは、木を切り倒したり、家を建てるスペースの確保をする。そこにある石なども使うのだから必要ないかもしれないけれど、きっちりスペースを区切っておいた方がイメージもしやすい。


「後は組み立てるだけね」


「それが一番問題だと思うけれどね」


「まずは、私たちのイメージのすり合わせをしましょう。3人で足りないところを補い合うのよ」


 大きさ、形、扉や窓の数と位置、向き、内装、それらを詳しく相談し合う。辺りも暗くなり始めていたけれど、楽しい話し合いだった。



 話し終わり、細かい部品などを加工し終えると、辺りはすっかり暗くなっていた。魔法で火をつけていなければ、真っ暗闇だっただろう。火を付けていたおかげで、野生の生物、魔物も寄ってこなかったようだ。


「じゃあ、大丈夫ね。しっかり、イメージできているかしら」


「うん」


「大丈夫です」


「疲れるから、一度で終わりにしましょう。また、ばらして、組み立てるのは大変だわ」


 僕たちは輪になって手をつないだ。特に意味はないけれど、こうした方が上手くいく気がしたのだ。


「切り倒してしまった木材には、感謝しましょう」


 姉様がそう言って目をつぶったので、僕たちもそれに倣った。


「じゃあ、いくわよ」







「つ、疲れた。ルーナ、大丈夫かい」


「……私も、疲れました」


「そうだよね。お疲れさま、ルーナ」


 作り終わると、魔力の消耗が激しく、僕たちはログハウスに入る階段に腰を下ろしていた。


「姉様はさすがに元気だなあ」


「すごいです」


 姉様も一緒に魔法を使ったのに、まるで疲れた様子も見せずに、ログハウスの内装を確認している。しばらくして、戻ってきた姉様は、座り込んでいる僕たちを見ると、キョトンとした様子で、階段の上から、声を掛けてきた。


「どうして、あなた達はそんなところで座り込んでいるの? どうせなら、中に入ればいいのに」


「ちょっと疲れたから、休憩していたんだ。中に入ろうか、ルーナ」


「はい、ルグリオ様」


 僕たちは手をつないで、ログハウスの中に入った。


 

 内装も、イメージした通りだった。

 入ってすぐに、それほど広くはないが、リビングがあり、木でできた椅子や机が置かれている。リビングのすぐ横にはキッチンがあり、こちらは火を使うことを考慮して、石造りになっている。キッチンと壁を隔てた後ろ側には、トイレがあり、一番奥にはお風呂が付いている。リビングの反対側には、寝室が作られていて、やはり、土と石でできた台の上に、木材を敷いて、その上に、姉様が出したのであろう布団まで乗っている。さすがに一人分しかないようだけれど。


「3人で一緒に寝れば大丈夫よね」


「いやいや、姉様。何を言っているのさ」


 姉様とルーナと一緒にベッドに入るのは、何というか、まだ早いような気がした。


「僕は、床に一人で寝るからさ。そのベッドは姉様とルーナで使ってよ」


 僕がそう言うと、姉様はわざとらしくため息をついた。


「我が弟ながら情けないわね。いいこと、ルグリオ。あなたは私たちと一緒にこのベッドを使って寝るのよ。大丈夫よ、獲って食べたりはしないから」


「どちらかというと、その心配をするのは僕の方なんじゃないかな」


「ルーナも、ルグリオと一緒に寝ても構わないわよね?」


 姉様は、僕の意見を聞くつもりはないようだった。


「もちろんです」


 もちろん、そういう意味で言ったのではないと分かっているけれど、僕は何となく赤くなった。


「何を想像しているのよ」


「……別に何も」


「ルグリオ。一つだけ言っておくわ」


 姉様は、いつになく真剣な声で言った。


「何かな、姉様」


「最低でも、後5年くらいはルーナに手を出すのは控えなさい。大丈夫、その間は私も責任を持って、義妹の貞操は守り抜いてあげる」


「その話、今必要だったかな! そして自分で言ったことを思い出して!」


 僕は、思わず声を張り上げた。

 なんで、姉様にそんな心配をされなくてはならないんだ。

 ルーナなんて、消え入りそうに俯いている。わずかに見える耳も、真っ赤だった。何か前にも似たようなことがあった気がする。気のせいかな。


「まあ、まだ寝るには早いし、お風呂にでも入ってこようかしら。行きましょう、ルーナ」


 言った本人は気にした様子もなく、俯いて固まっているルーナを連れて、お風呂に入っていってしまった。そのため、僕は一人取り残された。

 なお、狭いのではないかという僕の意見は、当然のごとくスルーされた。





「ルグリオ、一緒に入りたいかしら」


 姉様が扉から顔を出して、そんなことを尋ねてきた。服はすでに脱いでいるようだった。何も着ていない綺麗な肩が見えている。

 

「それは、もちろん……じゃない、危ない、引っかかるところだった」


「ふふふっ。べつに入って来てもいいのよ。据え膳食わぬはなんとやらって言うらしいじゃない」


「しないよ。紳士としてはね」


「あら、残念」


 残念なんだ。まったく、姉様は何を考えているんだか。もちろん、僕をからかっているんだということはわかっているけれどね。そして、目のやり場に困るので、少しは恥じらいというか、そういうものを持ってください。まったく見えないわけじゃないんだからね。

ルーナとセレンは、お風呂で色々話したり、キャッキャウフフ(セレン視点)があったりすると思います。

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