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サイリア交戦

もうタイトルとか、次からは1とか2とかでもいいのかなと少し思いました。

 会ったことがあるとはいっても、以前私が遭遇したのは暗殺者の方ではなく盗賊団のような方々でしたし、何よりその時の私はただルグリオ様とセレン様の後ろに守られていただけでしたので、個人的に相対するのは初めてのことです。もちろん、アースヘルムにいた時も、コーストリナに来てからもお城の中で遭遇したことなどありません。

 しかし、あの時とまったく状況が異なるのかと言われるとそんなこともなく、校章が私の代わりを、そして僭越ながら私がセレン様の代わりの役割を果たしていると考えるのが近いのかもしれません。

 もっとも、イグニスタ様も代表に選ばれるだけの方であることには間違いがなく、接近こそ許してはいないものの、私も防戦一方です。最初に姿を見てからは攻撃がくるだけで、ほとんど姿を捕らえることが出来ていません。それでも辛うじて防御が出来ているのは障壁と、小規模ながら展開している結界のおかげでもあります。


「仕方がありませんね」


 このまま防戦に徹して、攻撃陣の方々が相手校の校章を破壊するのを待つというのも一つの手ではありましたけれど、そのような甘い考えで打ち倒すことのできる相手ではなさそうです。

 私は先程お話をしたときにちらりと見かけたイグニスタ様の顔を思い浮かべます。特徴のないのが逆に特徴とでも言うような彼の顔は思い浮かべることは出来ますが、説明しろと言われても難しいものがあります。


「まあ、今は関係ありませんね」


 そうして一度深呼吸をしてイメージを集中させます。


「イグニスタ様」


 私が名前を呼んだ次の瞬間には、何が起こったのか分からないといったぽかんとした表情のイグニスタ様のローブを私は片手に握り込んでいました。


「・・・一体、何をしたのですか」


「こちらの手の内を明かすようなことをするとお思いですか」


 私が使ったのは対象の物や人などを呼び寄せる魔法です。ある程度近場になければ使えない、魔法的な防御がかけられていると効果が薄い、知っている形状のものでなければ呼び寄せることが出来ない等、様々な制約はあるようですが、今回は上手く使えたようで何よりでした。


「それはそうですね」


 ローブを握り込まれたまま小さな笑みを見せられた彼の意識を、私はすぐさま刈り取りました。



 眠ってしまったイグニスタ様をそのまま地面に横たえると、私はすぐさま振り返ってシエスタ先輩とリィン先輩に加勢しようとしました。私がイグニスタ様と交戦してすぐ、もちろん振り返ったりはしませんでしたけれど、反対側でも交戦されている音、声が聞こえてきていましたから。

 私が振り向いたときにまず目に入ってきたのは大きな、私が二人分くらいの身長の、豹のような頭と身体をしたものでした。ものと言うと少々語弊がありますけれど。

 思わず言葉を失って、その場にへたり込みそうになってしまいましたが、寸前でリィン先輩が声をかけてくださいました。


「あれはサイリア特能研の選手が変身した姿よ。にわかには信じられないかもしれないけれど、・・・・・・ルーナ、どうしたの、顔が青くなっているけれど」


 私が何も言わずに、いえ、何も言えずに黙っていたので、心配されたリィン先輩に顔を覗き込まれました。


「い、いえ、大丈夫です。問題ありません」


 動揺は隠しきれず、声が上ずってしまいました。


「本当に大丈夫なの。無理はしないでね。あっちは私たちで対処するから」


「分かりました。すみません。」


「謝るようなことじゃないわよ」


 どうにかそれだけ言葉をひねり出した私は、大人しくリィン先輩の後ろ、校章が視界に入る位置まで下がりました。


「動揺している場合ではありませんね」


 リィン先輩はあの豹のような頭の方が自ら変身したとおっしゃっていました。つまり、自由意思による変身の魔法で、豹に変身するつもりが途中であの姿のまま止まっているのではなく、あの形態になることが目的の魔法だと言えます。もしくはそういった体質なのかもしれませんけれど。


「私とは違うはずですよね」


「ルーナさ、どうかしましたか」


 私の様子がおかしかったからなのか、それとも思わず漏らしたつぶやきが聞こえたからなのか、校章を守って隣にいらっしゃるシエスタ先輩が、心配そうな顔で私のことを覗き込まれました。


「お気になさらないでください。少し昔、といってもそれほど昔でもないのですけれど、思い出していただけですから」


「そうですか」


 シエスタ先輩は尚も心配そうなお顔でしたが、試合中ということもあり、それ以上深くは尋ねられませんでした。私は気合を入れなおすために、頬を両手で挟むように叩きました。



 

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