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vsルーラル魔術学校決着

「シェリル、そちらは頼みましたよ」


「任せて」


 エミリア先輩たちが相手校の選手を引き連れて戦場を移動されたので、この場には人数の減ったここから突破を図り、私たちの足止めも担当されているらしい数名の方だけが残っています。

 早くキャシー先輩たちのところへと駆け付けたい気持ちはありますが、焦っては逆にこちらがやられてしまいます。

 私はシェリルと背中合わせに立つと、先へと向かわずこの場にとどまられている相手選手へ顔を向けます。こちらが牽制して相手を進ませていないということもありますけれど、彼らには彼らで私たちをここで倒したいという気持ちがあるのでしょう。

 私たちより多くの人数をこの場に引き留められているということは、他がそれだけ有利になっているということなので喜ばしい状況とも言えますが、逆に私たちにとってはピンチであるとも言えます。


「ルーナ様、これは競技ですのでご容赦ください」


 正面の方は礼儀正しい性格のようで、このような状況にもかかわらず、一言断りの文言をおっしゃられました。


「もちろんです。ここにいるのはエクストリア学院3年1組のただのルーナ・リヴァーニャですから」


 私もそれに応えて、緊張は崩さずに、軽く周囲を見回しました。彼らは頷きあうと、一斉に、待機させてあったらしい魔法陣を展開しました。

 私は、私とシェリルを覆うように、対物体及び対魔法障壁を重ね張りします。もちろん、地震を起こす魔法のように、障壁では防げない魔法もあるのですけれど、今回は障壁で防ぐことが出来ました。まあ、地震を起こしたりするような魔法は、味方を巻き込む恐れもありますし、このような屋内では過剰攻撃と取られる可能性も全くないとは言い切れませんから使用される可能性は低いとは思いますけれど。


「攻撃の方は任せましたよ、シェリル」


「任された」


 もちろん、彼らの魔力が私の魔力を上回れば障壁は突破されますが、幸いなことにシェリルが準備をしている間に突破されることはありませんでした。

 魔法を行使する要は魔力と想像力ですので、彼らの想像力が高く、私の魔法障壁を突破するだけの力を持っていた場合、障壁の内側に魔法の始点を作られる恐れもあるのですけれど、それを含めても障壁は無事でした。

 そして、同じことは私たちにも言えます。


「大丈夫ですか、シェリル」


「いけるよ、多分」


 その言葉からほとんど遅れることなく、彼らの足元の床がひび割れて崩れます。予期していた私たちはジャンプすることで足場が完全に崩れ去る前に足場を移すことが出来ましたが、こちらに集中していた彼らは魔法を行使するだけの暇もなく、驚いたような声を上げながら下の階へと落下していきました。


「大丈夫でしょうか」


 さすがに覗きに行くほど無謀ではありませんけれど、上の階から落ちた場合の負傷は気になります。


「大丈夫だと思うよ。一つ上の階から落ちたくらいじゃ死にはしないよ。その証拠に審判の先生からは何も言われてこないじゃない」


 シェリルは何でもなさそうにそう言うと、そくさくと先へ進み始めました。私はすみませんと手を合わせて、シェリルの後を追いかけてキャシー先輩が向かわれた方へと足を向けました。



 

 私たちがしばらく進んでいると、目の前に青い小鳥が一羽戻ってきました。


「これについていけばいいのかな」


「おそらくは。そしてこれが戻ってきたということは、おそらく、先輩方は相手方の陣地に到達されたのでしょう」


 私たちは頷きあうと、速度を上げて小鳥に導かれるままに進みました。



「おおおおおおおお」


 小鳥が消えると、先の方から大きな爆発音とともに文字通り火花が散っているのが目視できるようになりました。

 

「なかなか楽しいじゃねえか」


「それは俺も同じことだ」


 エミリア先輩と相手校の方の拳がぶつかる度に閃光が走り、火花が飛び、およそ人体の立てる音とは思えない硬質な音が響きます。


「エミリア先輩っ」


 私がそう叫んで加勢を伝えようとしたところ、なせかエミリア先輩よりも先に相手校の男性の方が反応されました。


「あ、隙あり」


 その方がこちらを向いた隙を逃さず、光り輝くエミリア先輩の右こぶしが相手の顔面に一撃を叩き込みます。

 物凄い勢いで吹き飛ばされた相手の方に手を合わせられてから、エミリア先輩は私たちの方へと歩み寄って来られました。


「いやあ、ナイスタイミング。ちょっと手こずってたから助かったよ」


 私は何も助けるようなことをした覚えはないので、首を傾げてシェリルの方を向いたのですが、シェリルにはヤレヤレと言うように首を振って伸びている相手選手を指差しました。


「ルーナが気にすることじゃないよ。ただあの人が修業不足だったってだけだから」


「そんじゃ、はやく行ってセティアたちに加勢しますか。少し離れちまったからな」


 エミリア先輩が小鳥を軽く撫でられると、青白い小鳥は光の粒となって消えていきました。


「この近くなのですか」


「ああ、すぐ先だ。聞こえるだろ」


 そう言われて耳を澄ますと、風に乗って、建物が壊されるような音が聞こえてきました。


「セティアたち、派手にやってるなあ」


 それは先輩も同じなのではと、周囲の状況、破壊されぼこぼこにへこんでいたり、ひびが入っていたりする壁や柱を見てそう思いましたが、そう伝える前に、目の前に相手校の攻撃であろう石を削って作ったようなナイフが迫ってきていたので、部分障壁を展開したのですけれど、シェリルが前に出てそのナイフを吹き飛ばそうと肉体の強化と風の障壁を展開する横から、エミリア先輩がそのナイフの横を正確に拳で弾き飛ばされました。


「セティアの方もすぐに決着するだろうけど、先にこっちがクリアするとしますか」


 エミリア先輩が本陣の真ん中を突っ切られるのを、横で私とシェリルが援護します。ルーラル魔術学校の生徒の方達は、私が言うことでもありませんけれど、先程エミリア先輩が吹き飛ばされた方と同じように、あまり戦闘に慣れているとは言い難く、セティア先輩が立てていたと思われる音が止むころには私たちも敵方陣地の奥まで入り込んでいました。


「くそっ」


 苦し紛れの最後の魔法陣をエミリア先輩が打ち砕かれ、そのままの勢いで相手校の校章を破壊され、審判の先生によって決着と終了が告げられました。

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