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vsルーラル魔術学校

 何の手掛かりもなく廃学校の中を進んでも相手校の陣地にたどり着けるはずはありません。幸い、相手との距離は問題ないようですし、妨害の心配もなく魔法が行使できます。


「さあ、導いて」


 5年生のセティア先輩が、濃く艶のある長い紺色の髪の毛を広げて、誰かに手を引かれているかのように右手を前に差し出されました。そうすると、その右手の指先の辺りに青白い3羽の小鳥のような形の光が灯りました。3羽の小鳥たちは、何か相談でもしているかのように忙しなく嘴を動かしながら、私たちの先導をして飛んでいます。

 学内の対抗戦の時には相手の陣地が分かっているため必要のない魔法ではありますけれど、相手の陣地の位置から知らなければならない本戦では、この廃屋のように遮蔽物や建物によって相手校の陣地が視認できない場合は特に、必須ともいえる魔法です。

 おそらく、細かい違いはあれど、どこの学校も似たような魔法を使用しているはずです。


「じゃあ行くわよ」


 小鳥たちからもたらされる情報を一言も逃すまいとばかりに黙ってしまわれたセティア先輩の代わりにキャシー先輩が小さく声を上げました。




 相手も似たような魔法を使用しているということは、遭遇の位置は両校の陣地から、最短距離で、丁度中間の地点になるはずです。つまり、相手と交戦したのなら、残りの道のりは半分ということです。そして、屋外と違って屋内では得てして最適なルートというのは一本に絞られるものです。

 果たして、近くの階段を上り、曲がり角を出て捜索しようとしていた私たちは、同じように姿を現せた相手校の選手たちとの交戦に入りました。


「先輩方、ここは私たちが押さえますから先に向かっていてください」


 私は違う種類の障壁を10枚ほど重ねながら、先輩方に先へと進んでくださるようにお願いしました。


「任せるわ」


 キャシー先輩は少しの逡巡も見せずに、言うが早いかセティア先輩とご自身を雷で全身を覆われました。


「待てっ」


 キャシー先輩がセティア先輩を抱えられて、小鳥たちに先導されていくのを、相手の選手の方もただ見ているだけではありません。素早く地面に何か魔法陣のようなものを描かれていたり、キャシー先輩と同じように、しかし、全身ではなく脚部に集中させるようにパチパチと電気―—―雷を発生させていらっしゃいました。


「素直に追わせるわけがないだろうが」


 エミリア先輩の剛腕からボールのように放たれた圧縮された空気の塊が、相手の鼻先で衝撃波を発生させて、キャシー先輩の背中を後押しするのと同時に相手選手を後ろへと弾き飛ばしました。その衝撃なのか、脚に集まっていた雷は霧散しています。

 エミリア先輩の動きに合わせるように、先輩方は床に描かれた魔法陣が発光を始めるのとほぼ同時に対象部分の床を燃やし尽くされました。


「しかし、もう遅いですっ」


 上手く障壁を張って炎から身を守った相手校の選手の前には、炎に包まれた鳥、土くれで出来たような豹、石で出来たゴーレムがあとを追うようにそれぞれ飛び、走り、動き出しました。おそらく、召喚魔術と使役魔術を組み込んだ魔法陣だったのでしょう。

 

「さあ、追いかけろ、お前たち」


 使い魔が放たれようとしたのを、私は電撃で行く手を遮り、床から、もちろん床は燃やさないように、炎を燃え上がらせました。同時に外側には結界を展開して、万が一炎の壁が突破されても簡単には行かせないようにします。

 

「そういう訳にはいきません」


 私が障壁を作り相手の足を止めたところにエミリア先輩が再度衝撃波を発生させて、相手をさらにキャシー先輩とセティア先輩から遠ざけます。遠ざけられたところで、私は間に壁を作り出し、より強固なものにするべく強化の魔法を次々かけます。


「キャシーのところへは行かせない」


 相手校の選手が襲い来る風から顔を庇おうと防御に回られた瞬間に、エミリア先輩は相手選手の前に回り込まれました。


「あんたたちの相手はここであたしが務めてやるよ」


 相手校の選手も、私たちを行動不能に追い込まなければ追うことすら出来ないと理解したようで、キャシー先輩たちの駆けて行かれた方向から視線を外されて私たちの方へと向き直ってくださいました。


「ならば、あなたたちを倒してすぐに戻るとしよう」


「女だからって容赦はしない」


「望むところさ」


 エミリア先輩以下、キャシー先輩とセティア先輩を除いたエクストリア学院攻撃陣は、ルーラル魔術学校の生徒と正面からぶつかり合いました。


 エミリア先輩があちらの攻撃陣の代表と思われる方へ向けて拳を放たれます。

 

「なんとか隙を作る。だから、ここを突破してくれ。こちらは突破されているのにむこうを突破できないのでは、格好悪いからな」


「分かった」


 彼らの会話は聞こえていましたけれど、もちろん、突破させる気はありません。

 先輩方もそう思われていたようで、私に向けて叫ばれます。


「ルーナ、いくら守備陣がいるとはいえ、ここを通すなよ。これだけしか攻撃側の人数がいないはずがない。最適ルートではなく、外れたルートから向かっている選手もいそうだし、合流されては厄介かもしれない」


「たしかに味方の援軍は嬉しいですけれど、敵の増援は嫌になりますもの」


「分かっています」


 ここを突破して、キャシー先輩とセティア先輩の元へ向かうのです。時間のことも気になりますし。



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