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ルーラル魔術学校

忙しくて本当に時間がないのですみません。

 対抗戦初日。私たちは朝から馬車に揺られてルーラル魔術学校へと向かいました。

 魔術の研究をしているとはいっても、人里離れた山の中に引きこもっていたり、世間との干渉を発っているわけではなく、エクストリア学院などと同じように街中から少しばかり離れたところに寮と校舎を構えています。

 丁度お腹も空いてくる頃、私たちを乗せた馬車はルーラル魔術学校に到着しました。

 馬車が停車すると、綺麗な赤レンガの門につけられた黒い柵がガラガラと音を立てて引き上げられました。

 学校の敷地内で馬車から降りると、私たちのことを見にいらしていたらしい、学校の生徒と思われる制服の方々からどよめきが起こりました。


「ようこそお越しくださいました。エクストリア学院の皆様」


 馬車から降りると、綺麗な緑色の長いローブに包まれた、頭に乗せた黒いとんがり帽子の間から少し癖のある薄紫の髪の毛が見えている教師と思しき女性の方に声をかけられました。


「私はこちらのルーラル魔術学校で魔法史について教鞭をとらせていただいている、カリア・リクシーヌと申します。本日は試合の審判を務めさせていただくのと同時に、皆様のご案内も務めさせていただきます」


 硬い口調でそのようにおっしゃられたカリア様に先導されて、軽くルーラル魔術学校の説明と昼食を交えながら、会場となる競技場へと案内していただきました。





 お貸しいただいた更衣室には奇怪な魔法陣が描かれたお札のようなものがいくつも貼ってありました。 私たちは運動着に着替えると、実際のフィールド内に入って、試合が始まる前に軽く身体を動かしたり、魔法を使ってみて調子を確かめたりします。

 フィールドには全体に魔法陣が散りばめられていて、説明されたところによると、これにより楽にフィールドの作成が行えるのと同時に、試合の様子も常に魔法を使っている必要もなく特定の場所に映し出すことが出来るのだそうです。

 難なくフィールドを作り出したり、投影する魔法を使用されるエクストリア学院の先生方にも驚愕してはいましたけれど、より効率を重視しているようなルーラル魔術学校の方の技量にも感心して学ぶべきものがたくさんありました。


「ルーナ、調子はどう」


 身体をほぐすために体操をしながら、隣で同じように手足を伸ばしているアーシャの方を向きます。


「問題ありません。大丈夫そうです」


「少しくらいは緊張してるんじゃないの」


 アーシャは、自身も緊張しているような声色でしたので、私はアーシャの緊張を和らげるためにも、極力普段と変わらない調子を心掛けました。


「そうですね。初めての選抜戦本戦ですし、全く緊張していないと言えば嘘になります。ですが、学院で観戦されている皆さんに、代表として情けない試合をするわけにはいきませんし、きっとご覧になられているルグリオ様やセレン様にみっともないところをお見せするわけにはいきませんから」


「不要な心配かもしれないけど、あんまり気張りすぎないでね。ルーナがいつもの実力を出したら、きっと誰にも負けないんだから」


「そうよ」


「キャシー先輩」


 頭上から聞こえてきた声に顔を上げると、先輩方がすぐ隣までいらしていました。

 どうやら、私たち選手の様子を見るためと、緊張をほぐすために、皆さんに声をかけて回られていらっしゃるということでした。


「こう言ってはあれだけれど、おそらくうちの学院の男子の方が今日の対戦相手よりも手ごわいはずよ。だから自信を持っていきましょう」


「はい」


 私たちは十分に身体を温めると、私たちに示された陣地で開始の合図を待ちます。最初の試合のフィールドは廃屋の学校内のような空間でした。


「それと、いまさら言うこともないけれど、相手が男子だったとしても、むしろ男子と女子が混じっているのが普通なのだから遭遇するなという方が無理な話ではあるけれど、怯んじゃ駄目よ。身の危険を感じたらすぐに戻ってきなさい。それからなるべく単独行動はとらないこと」


 開始の合図を待つ間、キャシー先輩がこれでもかというくらいに試合における注意点をひたすら上げてくださいます。おそらく、私たちの心配と、ご自身の緊張をほぐすためなのでしょう。


「ありがとうございます、キャシー先輩。十分に気を付けます」


「大丈夫そうね」


 一通りの説明を終えられたキャシー先輩にお礼を告げると、安心したようにほっと胸を撫で下ろされました。

 キャシー先輩がキサさんとエリィさんの方へと向かわれたので、私もハーツィースさんのところへと向かいました。


「調子はどうですか」


「無論問題ないです」


 私が話しかけると、ハーツィースさんはほとんど緊張していない、いつもと変わらない調子で応えてくださいました。


「いらない心配だったようですね」


「ですが、心配してくれたことには感謝していますよ、ルーナ」


 私が微笑むと、ハーツィースさんも笑顔を見せてくださいました。





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