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ユニコーンの学習能力は高いらしいです

 コーストリナへ来てからは3度目、エクストリア学院へ通うようになってからは2度目の冬が訪れました。

 肌を切るような寒さに加えて、先日降った雪の影響で、女子寮から学院へと向かう道もすっかり白くなっています。

 新雪の感触を確かめつつも、足をとられてしまわないように注意しながら日課となった走り込みを終えてアーシャと一緒に朝食へと向かいました。


「この寒いのによく頑張るねえ」


「当然です。続けなくては意味がないですから」


 トゥルエル様からお弁当を受け取ってから学院へと向かいます。

 この時期になるとやはり5年生の先輩方は学院にいらっしゃる頻度が少なくなってきて、寮だけでなく学院でも寂し気な雰囲気が漂い始めます。


「もう2年生も終わりになるのか……」


 教室の席に座ると、アーシャが感慨深そうにつぶやきました。


「あっという間でしたね」


 1年生のときも感じたことなのですけれど、2年生はハーツィースさんとの出会いから始まって、本当にあっという間に過ぎ去ってしまった気がします。

 

「私も選抜戦に出たり、収穫祭でルーナと模擬戦したり、なによりユニコーンなんて初めて見たりもしちゃったし、本当に楽しかったよ」


 アーシャの言葉に私も同意を示すために頷きます。

 私たちがハーツィースさんと出会ったのは偶然ですけれど、そのおかげでより刺激的な楽しい学院での生活が送れたのだと思います。


「春からはきっと学院に通うようになるユニコーンの方たちも増えることになると思いますよ」


 すでにコーストリナとユニコーンの方々の間での取引は始まっているはずです。

 代表となるはずのハーツィースさんが自ら学院に通ってきてしまっているので大丈夫なのかとは思っていましたが、彼女によると、その辺りはきちんと夏の間に話し合ってきたから問題はないとのことでした。

 ハーツィースさんの場合には途中からということと、最初ということで、一応顔見知りであった私やアーシャのいるクラスへの編入という形でしたが、春からはレーシーさんたちもきちんと新入生として学院に通うようになることでしょう。


「しかし、本当に大丈夫なのでしょうか?」


 実際に私たちが目にしたのはレーシーさんが襲われていらっしゃるところだけでしたが、私たちとユニコーンの方との間の問題はいくら私たちは信用していただいているとはいっても限度があるのではないでしょうか。

 私とアーシャは不安を胸に抱きながらハーツィースさんのお顔を窺ったのですが、私たちの不安をよそに、ハーツィースさんは全く心配なさっていないご様子でした。


「大丈夫だと思いますよ。収穫祭のときにはセレンに大分世話になりましたし、他の人間とも大分話をすることができました。おそらく、私たちが街中を歩きまわっていても問題は起こらないでしょう」


 私はセレン様の手腕にあらためて驚愕しました。

 収穫祭でハーツィースさんを含めてユニコーンの方たちにコーストリナの案内をされていたことは知っていたのですけれど、まさかその一日だけでそれほどまでにユニコーンの方々を浸透させることが出来るとは思っていませんでした。

 何より、おそらくは人間不信であっただろう他のユニコーンの方々を、短い時間で、納得させるだけの姿を見せられたということに尊敬の念を抱きました。

 

「そういえば、試験の方は大丈夫なんですか?」


 アーシャが心配したように問いかけます。


「何をいまさら。あなた方もトゥルエルに聞いているのですから知っているでしょう。私はちゃんと試験を受けてこの学院に通っているのですよ」


「いえ、ハーツィースさんのことではなく、春から通うようになるという他のユニコーンの方達です」


 ハーツィースさんは学院で、もっと言えば私たちの部屋で過ごされていたので、寮の本を使って学習することもできたでしょう。しかしアーシャは、他の、学院に足を踏み入れていないユニコーンの方のことを心配しているようでした。


「大丈夫だと思いますよ」


 しかし、私は言い切りました。元々ユニコーンの方達の学習能力は高いようですし、それに、その件に関して国王様、ヴァスティン様が何も対策を考えていらっしゃらないはずはないと思うからです。

 はたしてハーツィースさんも私の言葉に頷かれました。


「心配には及びません。私が今学院に通っているのもあなた達の王様の計らいです。そのことに関して夏に告げられた時に、人間の、そう、この学院においてあるような書物もいくつか受け取りましたので、学院に通っていない皆もそこから多くの知識を得ていることでしょう。まあ、現在は様子見の段階ということで私しか学院に通っていたりはしませんけれど」


「そうなんですか」


「とはいえ、全員が学院に通うのかと言われると、そうではないのですがね」


 たしかに知識を身につけることは重要ですが、それによって群れが維持できなくなれば本末転倒です。何もユニコーンの方にとっての敵と言っては何ですが、敵は人間だけではないのですから。


「グリムベアなど敵から群れを守る必要もありますし、かといって全員で学院に来るわけにもいかないでしょう。生まれたばかりだったり、幼い皆はあまり群れから離したくはありませんから」


「そうですね」


 そういったユニコーンの方たちにとっての敵とも私たちが実習に出れば遭遇することにはなるのでしょう。弱肉強食が掟のような世界ですから、どちらがどうというわけではありませんけれど、いただいたノートのことも併せて考えながら、気を引き締めていかなければならないと強く思いました。

 

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