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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
出会い~お披露目編
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誕生日プレゼント

「それじゃあ姉様。少しの間、ルーナのことを頼んでいいかな?」


「ええ、任せておきなさい。あなたもしっかりやるのよ」


「うん。大丈夫だよ」


 今回はルーナを連れていくことは出来ないため、僕は姉様にルーナのことを任せて城を出た。

 誕生日の贈り物を手に入れに行くのに、本人を連れていくわけにはいかないからね。





 僕たちが婚約してからしばらく経ち、気候も大分涼しさを感じられるようになってきていた。

 春になればルーナも学院へ入学するため、今のようにずっと一緒にはいられない。

 本当なら少しでも長く一緒にいたいのだけれど、僕はもう学院は卒業しているし、付いて行くこともできない。学院は全寮制であり、例外はないからだ。

 長期休暇や、式典のときには帰ってこられるだろうけれど、気軽に会いに行くこともできなくなるだろう。

  寂しい気持ちはあるけれど、ルーナの新春からの学院生活と誕生日を祝して、僕は贈り物をすることに決めた。


「やっぱり、宝石か貴金属かな」


 学校に持っていけるものにするならば、小さくて持ち運びが簡単にできてそれでいてなくなりにくいもの。指輪、腕輪、首飾り、イヤリング。何が一番「指輪がいいと思うわ」


「わっ」


僕が考え込んでいると、後ろから姉様が、僕の思考を読んだかのように声をかけてきた。


「ルーナの誕生日のことでしょう、悩んでいるのは。だったら、指輪がいいわよ。……私はてっきり、あなたがお披露目の場でルーナに嵌めてあげるのではないかと思っていたのだけれど。どうしてそうしなかったの?」


「……指輪は、結婚式のときに嵌めるものだから、本番までは待っていた方がいいのかと思ったのだけれど」


「そんなこと気にする必要はないわよ。贈りたいものを贈ればいいのよ。それに、この国にはあなた達の関係を知らない人はいないと思うけれど、学校には他の国から来る人たちも大勢いるでしょう。リリス様は有名でいらっしゃるから」


 僕たちに魔法の稽古をつけてくださっているリリス女史は、学校でも教鞭をとっていらっしゃる。何代か前の国王様が、つまり、僕たちのご先祖様なのだけれど、顧問にしておくだけではもったいない、と学校でも教鞭をとっていただくことにしらしい。

 そんな、年齢不詳の美女教師のことは有名で、国内外を問わず、大勢の生徒が入学してくる。


「それに、虫除けにもなるでしょう」


 姉様は自分の左手の薬指を眺めて微笑んだ。




 別に見られてもまずいことはないけれど、できるだけ目立ちたくなかった僕は、転移先に人がいるリスクを避け、徒歩で向かった。馬車を使ってもよかったかもしれないけれど、ルーナへの贈り物は自分の足で探したかった。


「しかし、目立たないというのは無理だったかな」


 先程から、すれ違う人皆に挨拶をされる。本当はあまり騒がれたくなかったけれど、仕方がない。あきらめて、目当ての店に入る。姉様もよく城を抜け出して来ているらしい。よく騒ぎにならずに済んでいるものだと感心する。


「失礼します」


「これはルグリオ様。この度はご婚約おめでとうございます」


 店主と思しき初老の男性に祝辞を述べられる。


「ありがとう。それで、今日ここに来たのは彼女への贈り物のことなんだ」


 僕は店主に事情を説明した。


「—―なるほど。承知いたしました。それでしたら、こちらの指輪はいかがでしょうか?」


 店主が一つの箱を持ってくる。中には、月を象ったモチーフに天使の羽のような飾りがついている、銀色に輝く指輪が入っていた。真ん中にはダイヤモンドが埋め込まれている。


「こちらでしたらサイズも、用向きもぴったりかと存じます」


「とても綺麗な指輪だね。これは結婚指輪ではないつもりなのだけれど」


「もちろん、承知しております。ですが、私はその時、その女性に最高のものを贈るべきかと考えております。結婚指輪もこちらでお求めいただけるのならば、その時にも、その時の最高のものをご用意致します」


「……そうですね。ありがとう。じゃあこれにしようかな」


「ありがとうございます。是非またご来店ください」


 僕は、店主にお礼を述べて、店を後にした。




 帰りはすぐに転移して戻ろうと思っていたけれど、街に出ると前にルーナとデートしたときのことを思い出して、ブラブラと街を歩いてみる。危機感が足りない、と怒られるかもしれないけれど、なんとなくそうしたい気分だった。


「また、ルーナとこうして一緒に出掛けたいな……」


 今は忙しくて無理だけれど、落ち着いたら、また二人で色々見て回りたい。ルーナのご両親にも挨拶に行かなくてはならないし。……緊張してきたな。

 そんなことを考えながら歩いていると、不意に横から声を掛けられた。


「すみません。ルグリオ・レジュール様でいらっしゃいますよね?」


 横を向くと、いつかみたような白銀の馬車が止まっていた。扉には月を象った文様がついている。中からは、金髪の男の人と、同じ金髪の女の人が顔をみせていた。


「突然で申し訳ありません。私は、アルヴァン・リヴァーニャと申します。ルーナの兄です。ご婚約のお祝いに参りました」




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