①
朝起きてカーテンを開ける。
太陽がサンキャッチャーを照らしていて、サンキャッチャーが室内を虹色にする。
窓辺には一目惚れして買った多肉植物が並んでいる。
土と葉っぱの状態を見て、水遣りが必要な植物にだけ白いジョウロで水を与える。
顔を洗って、働きだしてから出会って今は大好きなブランドの化粧水をつける。
そしてワンピースのパジャマのままリビングへ。
リビングには1人がけの丸くてふわふわで大きいソファがある。
珍しいかもしれないけど、私は新聞を取っている。その新聞を玄関へ取りにゆき、テーブルに置く。
昨日買ってきたコーヒー豆を挽いて、コーヒーを丁寧に淹れる。
いい匂いがリビングに漂う。
昨日仕事帰りに寄ったパン屋で買った、ドライフルール入りのかためのパンを白いお皿にのせる。
パンの皿とコーヒーを持って、特等席のソファへ。
ぽすりと座る。
新聞ををぱらりぱらりと読みながら、パンをかじりコーヒーを飲む。
毎日の習慣。
私の素敵でお気に入りの集大成。
少しずつ、私らしく過ごせるようにしてきた。
そうして今の私がある。
友だちと日々遊びに行くわけではない。
一人で映画を観に行ったり、図書館へ行ったりする。
服は流行に乗るのではなくて、お気に入りを長く着る。
仕事はやっと楽しくなってきたところ。
去年から新人に指導までするようになった。
のんびりマイペースなお気に入り日和。
この小さな幸せを毎日積み重ねていきたいな。
「自己完結してるような生き方はどうなんだろうね」
突然、玄関から声が聴こえてきた。
新聞をとったときに鍵を開けてそのままだったな、と思いながら特等席から玄関の方へ目を向ける。
「ふほーしんにゅーなんですケド」
声の主を見ながら口を尖らせる。
私のお気に入り日和を邪魔してきた人、井崎くんは手にブリザートフラワーを持っていた。
「これ、新作だって。あんずちゃんにって」
「…ありがと」
素直に受け取る。
この可愛いお花たちは私のお気に入りに是非とも加えたい。
井崎くんのお母さんは多趣味で、刺繍をしたり編み物をしたり、今はブリザードフラワーをアレンジメントするのにハマっている。
私の雑貨趣味のストライクゾーンであり、時々習ったり作品をもらったりしている。
「鍵空けたらあけっ放しの癖はどうにかしないとね」
「こうやって朝っぱらから男性が入ってきちゃいますものね。はい、コーヒー」
嫌味に嫌味で対応し、私は幼馴染にコーヒーを渡す。
井崎くんは対面キッチンに後付けした、小さなカウンター席に座ってコーヒーを飲み始める。
井崎くんのおかげで、いつものお気に入り日和から少し逸脱した朝を迎えることになった。
でもこの幼馴染の来訪は決して、心地よくないものではないのだった。
こうやって私の1日が始まった。




