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魔王様、勇者がまた来ました

作者: 焼き鰹~たたきが美味しい~

魔王城の広間にて、魔王と勇者が戦う。どちらも高度な魔法を使い隙あらば剣を振るい、ほぼ互角だと思われる。


魔王が勇者の剣を強く弾き風の魔法で吹き飛ばし、火の矢で追撃するが勇者は水の壁を作り出しこれを防ぐ。水蒸気で勇者が見えないが構わず魔王は何本もの闇の剣を作り打ち出す。魔王は当たらないだろうと考えながら、何故この様な状況になったかを思う。



「魔王様、また勇者がやって来ました」

「そうか・・・」


魔王は幹部の一人からの報告に、軽く溜め息をついた。そんな魔王を見ながら、幹部は報告を続ける。


「今回の勇者は一人のみで、魔法も剣をかなりの腕の様で」

「・・・今は誰が行っている?」

「火と水の二人があたっていますが時間稼ぎにしかならないでしょう。・・・この後我ら幹部魔族で迎え撃ちますので、その間に魔王様には」


ここで魔王は手を幹部に向けて、報告をやめさせる。


「いや、今回も私一人で行こう」

「せめて我らも共に!」

「ならぬ」


さらに何か言おうとした幹部から目を離し、勇者が来るであろう広間の方へ歩き出す。魔王はできる限り無表情を作るものの、勇者ではなく人族を統べる王達に向ける怒りが滲み出ていた。


「魔王様!」


その言葉に返事は無く、ただ扉の閉まる音が響いた。暫く扉を見つめていた幹部は、何かを堪える様な表情をしながら、壁に寄りかかった


「また・・・、繰り返してしまうのか」


その呟きは、静かな部屋の中に消えた



広間に着いた魔王はもうすぐ来るであろう勇者について、どのような方法で迎え撃つかを考える。魔王自身もそれなりに魔法が使え剣も振れる。伊達に魔王とは呼ばれていないのだ。


「どうしたものか・・・」


そして、勇者がやって来る



魔王と勇者の激闘は長く続き疲弊し合い、お互いに魔法を撃つ数を減らし剣をぶつけ合う。勇者は残りの魔力を全て注ぎ込んだ、自身最大の魔法を撃たんとして隙をみているが、魔王はすでにそれを察して勇者を集中させまいと剣を振るう。


勇者は魔王の突きを紙一重で避け、後ろに大きく飛ぼうとする。魔王はそれを止めず勇者と距離が空いたこの瞬間、ある魔法を発動した。


勇者は魔王がわざと止めなかったとは考えず、好機と思い魔法を放つ。その魔法は上空から幾つもの光の弾丸を相手に向かわせるもので、まるで星が落ちていくような光景が魔王には見えた。


そして光は消え、そこにはなにも残っていなかった。勇者はしばらくその場から動かなかったが、ふらふらと歩き出し、何故か魔法の範囲外に落ちていた首飾りを拾う。それは魔王が身に着けていたものだ。その後勇者は周囲を警戒しながら、何故か誰にも会わず魔王城を去って行った。





その後の魔王城・広間にて


「お疲れ様です、魔王様」

「うむ、今回の勇者はそこそこ強かったな」


元気な魔王様と報告をしていた幹部が、掃除の行われている広間を二階から見下ろしながら会話していた。


「しかし、いつまでこの様な対応を続けられるので?」

「人族がもう少し発展し、交渉ができるまでは諦めぬ」


魔王は長生きだ。人族がまだ魔法も使えない頃から生きている。その頃の人族は素直で、魔物の被害が酷くなると直接魔王に間引きの協力をしに来た程だ。その頃の人族の王とは友と言える仲であったが、世代交代していき人族が魔法を使える様になってからは、傲慢と言える態度でこちらと接して来た。


かといって人族を滅ぼすのも躊躇われる。かつての友の子孫がいると言う事と、人族の治める広大な土地が原因であった。

魔王も強いが魔物も強い個体がまれにいる。長く生きた魔物程強く賢くなっていく。故に魔物は強くなる前に数を減らす事が大事なのだが、人族の土地全てを警戒できるほど魔族は多くない。だから魔王は魔物の数を適当に減らしてくれる人族を滅ぼさないのだ。


「人族と魔族は共存すべきなのだ」

「しかし人族達は魔王様に勇者を差し向け殺しに来るばかりで、交渉に来た事はありません」

「ならば待つまでだ、人族とて年々進歩している。

いずれ交渉にも来るだろう」


過去に魔王から交渉に行ったことがあるが、人族は話もせず魔法を撃ってくるばかりだった。この事を反省し、魔王は人族の土地に行かなくなった。


「ならば、我ら幹部魔族もこの生続く限り魔王についてゆきます」

「あぁ」


これは寛大な魔王のお話し

いずれ来る人族との平和を目指すお話し


「ところで火と水はどうなった?」

「二人とも喧嘩の途中で来た勇者の対応で機嫌が悪いですが、しっかりと魔物の間引きに出ています」

「そうか、勇者も間の悪い時に来たものだ」


結局勇者は誰一人殺さずに帰ったのだった


おわり

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