五話 戦友
五話です。投稿遅くなりました。
あれから何分、いや何時間たっただろうか・・・
神野は重い体を起こして周りを見た。
機銃台から少し後方の空弾薬箱を置く所に寝かされており、自分の配置には同班の分隊士が既に到着し、自分の代わりに仰角俯角の操作をしていた。
「俺は・・・どうなったんやろう・・・?」
死んではいない。だが体が石のように重く意識もぼんやりしていた。
全く状況が飲み込めない彼はまるで誰かに聞くようにぽつりとそうつぶやいていた。
「神野!気づいたか!!」
彼が起きたのに気づいたのか渡部が配置から抜け出してきた。後ろでは班長が何か叫んでいたがお構い無しに自分のたもとにやってきた。
渡部の顔は汗が埃を吸着し、黒くなっていた。その黒い汚れを流すかのように涙が滴り落ちていった。
「神野・・・よかった・・・俺はダメかと・・・」
男泣きだった。彼はよほど自分のことを心配してくれていたようだ。
「大丈夫や・・・俺が死ぬわけないやろ・・・」
安心させるために減らず口をたたいた。
「そうやな・・・そうやな・・・」
彼はまだ泣きじゃくっていた。渡部は戦闘服の袖の裾で涙を拭き笑顔をつくった。彼が落ち着いたのを見計らって神野は自分がどうして怪我をしたのか聞いてみた。
「ああ・・・戦闘機の機銃弾が銃身にあたってその破片砕け散ってがお前の眉間を切ったんや・・・」
眉間を切られたと聞いて神野は自分の頭をさすってみると頭に鉢巻が巻かれていた。おそらく止血に使ったのだろうかピンポイントに当てられていた。
「なるほど・・・この鉢巻はお前のか?」
「いや違う、班長のや。恥ずかしい話俺は焦っていて止血の処置が出来んかった。ちょうどそのとき班長が駆けつけてくれて止血を施してくれたんや。
その傷で助かったんは班長のおかげかもしれんなぁ・・・」
そうか・・・いつも人当たりが激しくていちいちうるさいと思っていて班長の悪口を言っていたり、よく衝突していたが自分の命を救ってくれたと思うと今までの行為が申し訳ないように思えてきた。
その様な事を考えていると班長も神野を見舞いに来た。
「おう神野、気づいたか」
班長の顔はしかめっ面だったがそれは少し我が子を見るような目をしていた。
「あ、班長・・・ありがとうご・・・」
「ええ、言うな。渡部戦闘が一時終了した。もしかすると敵は第二次攻撃隊を送り込んでくるかもしれん。今のうちに神野を衛生所へ連れて行け。」
神野の声をさえぎった班長は今のうちに彼を第一線から退けたほうがよいと判断した。本当はすぐにでも衛生所に運んで行きたかったが、戦闘の時に運んでいると二次被害にあうかもしれないと思い止血しか出来なかったため彼はこの命令が贖罪になれば・・・と感じていた。
そして言い終わった後彼は踵を返し班員をまとめるため配置に帰っていった。
「了解しました。さっ、神野行くで」
渡部は班長に敬礼し菅野を負ぶさった。
神野は言われるがままにし、戦闘配置を後にした。彼は遠ざかる班長の背中を見えなくなるまでじっと見つめていた。
その視線には言葉では言い表せられない感謝の念がこもっていた。




