十七話 彼の思い
こんばんは^^
堀越は廊下を早足で会議室に続く廊下を歩きつつ考えていた。
零戦の開発の終了の後に堀越には何も通達が無かったため自分の役割はもう終わったものだと思っていた。今更軍部の関係者から通達も来るはずはない、と考え歩いていた。だが、もし、もしもう一度私に機体を設計するよう頼みに来てくれているのなら・・・堀越はその希望を胸に抱きさらにその足を速めた。
「おい!早く救護所に!」
「搭乗員が重症だ!道を空けてくれ!」
そう言いつつ担架を運んでいた二人と廊下で堀越は無意識の内に避けた。
その時の喧騒など希望に満ちていた堀越には気づいていなかった。
「堀越、只今到着しました」
「入れ」
中から無機質な上司の声が聞こえてきた。
「失礼します」
堀越は入室し部屋を一瞥した。そこにはやはり自分の思いの通り海軍の将校たちが毅然と座っていた。席に座れなかった将校たちもだ、まさに直立不動であった。
「ああ、あなたが堀越さんですか」
不意に呼びかけられ堀越は顔を呼ばれたほうに向けるとそこには第一種軍装に見を包んだ士官がいた。
「どうも、お初にお目にかかります。今年10月より海軍航空本部長となりました井上成美です。」
そういうと井上は起立し堀越に深々とお辞儀をした。
それにつられ若干遅くなりながらも堀越もお辞儀をした。
「まあ、お二方もどうぞ座られて下さい」
そう上司の計らいでようやく着席できた。その後に嘱託の事務員のお爺さんがお茶を人数分出して配り終えるまで何も会話が無かった。ごゆっくり、そういい残しお爺さんが居なくなった後でようやく井上は口を開いた。
「堀越さん、実はお願いがあります。」
「お願い・・・ですか?」
「ええ、新型機をつくっていただきたいのです」
堀越は心の中で飛び上がった。自分の生きがいをもう一度与えられたのだ、これが嬉しくないだろうか!嬉しいに決まっている。
「零戦では・・・満足できませんでしたか?」
その嬉しさとは反面悔しさもあった。せっかく自分が考え、考え抜いて出したのがあの零戦だったのだ。自分のかけがえの無い機体なのだ。
「そうでは無いのです。堀越さんもご存知かと思いますが先日呉の海軍基地が襲撃されました。詳しい事は言えませんが・・・隊員の方から様々な点が浮上しまして・・・」
堀越は目を瞑った。まさか、戦うために生み出してやった戦闘機が戦う前に廃止されるとは・・・自分の弱さに頭を抱えていた。
「まあ、堀越さん付いて来てください、お前達は待機してくれ」
そんな堀越の思いも知らず、そういって井上は立ち上がり中庭に堀越だけ付いてくるよう促した。堀越はようやくのようにふらふらと立ち上がった。
廊下から中庭に彼らは出た。
今まで部屋の中にいた堀越には日の光が強すぎて少し立ちくらみがした。
どうやって此処まで来たのかなど堀越の頭には入ってこなかった。
井上は第二倉庫の前で立ち止まった。
「堀越さん・・・これを見てください。」
そういい井上は第二倉庫のシャッターを空けるよう工員に頼んだ。そこには先ほど堀越と出会っていた工員もいた。工員はテキパキとシャッターを巻き上げていった。
「堀越さんこれは・・・」
井上が説明しようとしたがその声を堀越が遮った。
「F4Fワイルドキャット・・・」
そこにはアメリカ海軍のF4Fが鎮座していた。
お詫びなのですがちょっと文章が短かったり同じ単語が重複しているところがあったり変換ミスがあるかもしれません。スマホだとパソコンのようにはいかないんです・・・ご了承ください。
それでは!次回もお楽しみに!ご意見・ご感想お待ちしております!!
追記 2016年3月
初投稿のときF6Fになっておりましたが初飛行は確か1942年と記憶しております。まだ量産機ではなく試作機の段階ですので一世代前のF4Fに変更いたしました。