表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵艦隊ヲ迎撃セヨ!!  作者: 信濃
16/26

十七話 堀越二郎

こんな話も・・・いかがでしょう?

1939年12月9日 正午


三菱重工業株式会社で職員は昼飯をとっていた。

「今度の飛行機は何が出るんですかね?」

「いや、上はもう発注しないんじゃないか?零戦は最強だ、と豪語してるんだから」

技術工の彼らは注文した物が来る前に談笑していた。

彼らにとっても零戦は誇りだった。

「支那戦線でもだいぶ戦火をあげているらしいぞ、今度の戦も勝つんじゃないかね」

「そりゃいいや!」

話に花を添えていると注文していた物が来た。

それと同時にある一人の男も彼らの横に座ってきた。

「ここ、いいかな」

彼らの見上げた先には零戦の生みの親、堀越二郎であった。

「ああ、堀越さん!どうぞどうぞ、今ちょうど零戦の話について聞きたかったんです」

失礼するよ、と言って堀越は丸椅子に座った。

「堀越さん、零戦は最強って今日の新聞にも書いてあったが96式とはどう違うんだい?俺達にはまだ良く分からないんだ」

96式とは勿論96式艦上戦闘機のことである。

「ああ、いいよ・・・ちょっと箸を借りるよ」

そういって堀越は彼らに有無を言わせず彼らの箸を取った。

「まあ、まず96式と同じところを説明するよ。全面的な沈頭鋲の採用、軽量化、主翼翼端の捻り下げ、スプリット式フラップ、落下式増槽などは96式から受け継いだんだ。今度は違うところだ、主翼と前部胴体の一体化だね」

そこまで言ったところでもう一人の技術工が話を割った。

「すみません堀越さん、一体化はどこから?」

「ああ、陸軍の97式戦闘機だよ。」

ああ、そうでしたかと言うように彼は首を頷かせた。

「他に分からない事は?無いようだね・・・続きを言うよ、上昇力、航続力、戦闘力・・・どれも全てが96式艦戦を上回っているよ。特筆すれば96艦戦の武装は7.7mm機銃2挺だったけど零戦は機首に7.7mm機銃2挺、翼内に20mm機銃を2挺という重武装なんだ。アメリカの戦闘機は最大でも12.7mmなんだからそれ以上の対策は出来ていない。つまり20mmが火を噴けば敵機なんてあっという間に落ちてしまうんだ。」

ははあ、と技術工の二人は感心した。

アメリカでも研究されていない飛行機をこの人は開発してしまったのだ。

まるで目の前に超能力者が現れたような反応をしていた。

「でだ、軽量化やフラップのおかげで格闘戦が比較的容易になってる・・・例えてだね・・・よっと」

そう言いつつ堀越は箸を取った技術工が注文したカレーうどんに一膳の箸を漬けた。勿論その箸にはターメリックがつき黄色が付着している。

「軍隊では練習機は橙色になっているそうだ・・・この箸を零戦の練習機に例えよう。そして色が付いていない方が敵機とする。このように・・・」

『堀越技術官、堀越技術官、至急会議室まで出頭願います』

と、話を続けようとしていた堀越の話はアナウンスに打ち切られてしまった。

「どれ・・・悪いがまた今度ね・・・」

そういって堀越は駆け足で食堂を後にした。彼らは堀越の話の熱で意識がほぼ飛んでしまっていた。まあ、また聞けばいいやと二人は笑いあったが彼らは大事なことに気づいた。


「箸・・・返してもらってないや・・・」


彼らは泣く泣く食堂を後にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ