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敵艦隊ヲ迎撃セヨ!!  作者: 信濃
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十四話 密約の終着点

こんばんは^^

「でだ・・・この前の話の答えを聞きたい」

今まで彼の声に含まれていたおどけさが消えたのをチャーチルは感じ取った。僅かに溜まった唾を飲み込み、議会との話を打ち明けた

「やっぱり反対か・・・まあ、それはそうだろうな。こっちには大義名分が無いんだから」

話とはとある’’国’’に宣戦布告する話だった。確かにチャーチルもその国に反感を抱いていたがいざ戦争になるとどうしていいか分からないのが本音だ。

「ああ、それにこっちはまだドイツが片付けられてない、どうせならこっちに宣戦布告してくれないか?」

この世界でもドイツはヨーロッパの各国に宣戦布告、もちろんフランスを占拠、ポーランドのソ連との半割・・・史実どおりの快進撃をとっていた。そしてフランス政府の助けに答えるためイギリスもドイツとの全面戦争に突入していったが連戦連敗の毎日だった。一つ違うとしたらソ連に攻め込む機会を現在は窺っていないことだろうか・・・それだけでなくドイツはイギリスに連日空襲を行うなどイギリスは疲労困憊していた。

それなのに、新しい’’国’’と戦うことになるとは・・・それは避けたい。

「いいじゃないか、あの’’国’’は何にもしてないんだから。こっちを早く終らせないと前の世界大戦の時みたいになってしまう。本土に来るかもしれないんだ、そろそろそっちの重い腰も上げてくれないか?」

チャーチルは自分の言い放った声に怒気をこめた。

『未だにレンドリース法だけに頼っていてばかりでは負けてしまう、アメリカも傍観するだけでは無くて助けてくれ。』その意味も込められていた。

これだけ願っているのだ、彼も諦めて私の意見に賛同してくれるだろう。

そんな甘い事を私は考えていた。

「そっちの事情など知った事か。俺がこの電話を掛けたのは前回の話の返事を聞くためだ、泣き言なんか聞きたくない。君が持っている発言権は’’YES’’か’’NO’’なんだよ、チャーチル」

思わず受話器を私は握り締めた。この男はまるで世界の王様にでもなった気分でいやがる!たった数百年前に移民して勝手に独立した野蛮な国の癖に!

今すぐにでもその言葉を奴にぶつけてやりたかった。

だが、彼を怒らせると此方が不利になるのは見えている・・・私は自分の面子よりも国の運命が重要だと考えその怒りを静めた。

「だが・・・だが此方には大義名分が・・・」

「そんな物どうにでもなる、あっちは小国、こっちは世界のトップなんだぞ?誰が小国の言葉なんか信じる?お前はただ国際連盟の一人としてあの’’国’’との戦線に賛成してくれればいいのさ。そうでもしないと・・・お前さっき先の大戦のようにって言ったな?」

少々不安なところもあるが私は彼の話を聞かざるを得なかった。

「ああ、言ったが・・・それと何の関係がある」

「大ありさ、先の大戦の時日本は何をした?ドイツと俺達が争ってる途中にドイツ領の青島や太平洋の島々を占領して太平洋の主権をほぼ握りやがった、あれと同じことが繰り返されるかもしれないんだぞ?」

私はふとアジアにあるインド、シンガポール、オーストラリアなどが頭に浮かんだ。確かにそれぞれには防衛部隊として軍隊を派遣しているが’’あの国’’がドイツとの争いに乗じて乗り込んでくるかもしれない。自国軍とその土地の民衆で作った寄せ集めの軍隊なのだ。一国の軍隊なれば攻め落とすのは簡単だろう・・・

「確かにそうだが、あの時は同盟を結んでいたんだから当然の事だ。確かに危惧すべきことだが今はそちらに兵を動かせる状態ではない」

「中国だって’’あそこ’’が狙っているんだ、なあこれは一つの世界の平和を守るためなんだ。

決して悪い話ではないだろう?」

なにが、悪い話ではないだ。胸糞が悪い・・・

確かに我がイギリスも中国には手を伸ばしたいが・・・どうもドイツとぶつかる。

奴らも中国を植民地にしたいのだろう・・・それから考えることはたくさんあったが、私の怒りは彼の冷たい声でかき消された。

「友人に聞いたよ、この前のダイナモ作戦の大半は失敗したそうじゃないか?多くの有能な兵士がドイツに捕らえられたのだろう?だからお前は焦ってる・・・ちがうか?」

その冷たい声はナイフのように私の心を抉った。ダイナモ作戦の失敗・・・それはイギリス軍、フランス軍合わせておよそ10万名の兵の捕虜を生み出してしまったのだ・・・ただ全員ではない

「でだ・・・賛成してくれるのならこっちはそちらに協力してもいいのだ。なに’’小国’’なのだ、すぐに終わってドイツも片付くぞ?」

その声に私は思わず受話器を握り締めていた力をゆるませた・・・不覚にも自国の存亡とあの”国”を自分の天秤にかけてしまったら・・・傾いてしまったのだ。

「どうだ?チャーチル?」

私は即答した。

「YES」

「なら、よろしい」

ブツッ・・・

あっけない返答だった。私は今の今まで吸えていなかった葉巻を手に取りマッチで火を付けようとしたが私の手は若干震えていた。

「焦っているのはお前じゃないのか・・・?ルーズベルト」

その声はもはや向こうには届いていないだろう・・・聞こえているのはツーという音しかない。受話器を静かに置いて私は椅子に背を預けた。


「JAPAN・・・か」

気づけば私は切り捨ててしまった国の名前をつぶやいていた・・・


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