十一話 二つ目の案
二つ目なんだがー
全員が山本の発する言葉を今か今かと待ちわびていた。
山本は彼らを一瞥した後子供に見せるかのような笑顔を作って言い放った。
「君たちで考えてごらん?その後に話そう」
非常事態の中での会議だったが何も山本は面白半分に言ったわけではない
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』
この言葉が彼の考えを表してくれているだろう、ただ自分だけでなく他の者にも考えるチャンスを与える・・・山本独特の話術だ
告げられてやや半刻が過ぎたがなかなか思いつくものは居なかった。
「長官、二つ目は何でありますか?自分には先ほどおっしゃられた一案以外に良策は思いつけませぬ。」
少々伸びた無精ひげをさすりながら南雲が白旗を降るかのように言った。
その言葉を聞き、山本は少し唇を吊り上げ言い放った。
「―持久戦―だよ」
「持久戦!?ですが先ほど長官は・・・」
南雲が何か言いたそうにしていたがそれを山本は手で制した
「まあ、南雲。聞いてくれ。黒島、地図を」
「はっ」
後ろに控えていた黒島参謀が黒い筒状の中からアジア周辺の地図を取り出して机の上に広げた。
会議室にいる全員に地図は見渡せた。その地図の中には数字や矢印などが無数に刻まれており、タバコの灰などもくっついて少々黒ずんでいた。
黒島は地図の四方を固定すると指示棒を山本に手渡した。
「まず日本には資源が無い。資源は様々だけどね・・・石炭は山ほどあるが今では油がたくさんの物を動かしている。軍艦、自動車、戦車、火力発電や航空機・・・油が無ければただのお飾りになってしまう。よってまず油田を押さえたいと思う。黒島」
そう言い山本は指示棒を黒島に返した。
「はい、これより私が説明させていただきます。専門家の話によると満州のほうで大規模な油田があるそうです。そこの開発を陸海軍ともに進めていこうと考えています。ですがそれだけではまだ足りません。よって・・・」
彼は一旦声を止め、体を少し移動させ指示棒を強く地図に押し当てた。
「インドネシアのパレンバン油田を制圧します!」
その声に迷いは無かった
遅くなりました・・・申し訳ありません。思うように時間がつくれず、前回から一ヶ月という空きが出来てしまいました。応援してくださった方々になんとお詫びをすればよいか・・・