十話 海軍内会議
10話です。投稿が遅くなり申し訳ありません。
「さて・・・合同会議ではいい案が出なかったね。陸さんはもっと情報や知識を培っておかないと」
陸さんとは日本陸軍のことである。
山本も少なからず陸軍が嫌いであった。隼戦闘機について
ー君のところ(陸軍のこと)の飛行機もやっと飛んだかー
と言っていることもあるからだ。場所は先ほどより変わり海軍省の地下の一室で海軍だけでの会議を行っていた。
「でだ、私が考えたのは2つある。もし意見があったら気軽に言ってくれ。」
山本の酷評に苦笑していた海軍将校は口をふさいだ。
本当は笑えばいいのだが実際に彼らも全く良い案が出なかった。
山本は自分の考えのもと黒島参謀に案を出してもらい、思い通りの内容だった。ここはあえて「山本案」と呼ぼうか
「一つ目は""早期講和""。日本にいる無傷の艦隊を率い***や***を強襲し、敵の士気をそぎ講和に畳み掛けるんだ。」
「失礼ながら長官、日本の連合艦隊は壊滅、多くの戦艦、巡洋艦は大破など被害をこうむっております。動かせる状態では・・・ありません」
とある中佐がおずおずと手を挙げ発した。
確かにーと彼の意見を同意するように周りの将校もうなずいた。
「うん、確かに軍艦はほとんどが使えないね。けど向こうはどうやって我々を攻撃したのかな?」
「それは・・・航空機で・・・あっ」
全員に震撼が走った。航空機を攻撃手段にするという敵の戦略を活用する。
それは海軍の伝統ー大艦巨砲主義・艦隊決戦ーを覆す発言だった。
航空機・航空母艦を活用する作戦は幾度か奏上されたが、どれも前例がなく適用された事はなかった。
それによって大艦巨砲主義を推す戦艦畑の者たちがホクホクと育ってしまっていた。だが目の前では皮肉な事に見出された。
「ですが・・・その作戦が成功したとして、敵国の士気が下がるのでしょうか?自国が攻撃されると逆に反撃を、と士気が高まってしまうのでは?」
今度は山本のお付として参加していた井上成美中将が発言した。
彼は山本と同じ考えだったがいささか疑問に思っていた。
「勿論、一回だけの勝利だけでは無理だろう。早期講和を求めるのは我々日本には資源が少ないからだ。正攻法ではすぐ負けてしまうだろうよ。限りある資源をいかに上手く生かし、連戦連勝``日本は強い``と認識させれば国民の士気も下がるだろう・・・だが報道、情報を伝えるのはメディアだ。例えばそうだねえ・・・。」
山本はそういって出された水をぐいっと飲み干した。
うまい、と従兵に一言言って話を戻した。
「もし今回の事件をメディアに圧力をかけ、介入し情報統制したらどうだい?被害は少ない、と。国民もそれを信じるだろうね情報がそこからしか入ってこないのだから。これが負の面だ。向こうのメディアが真実を伝えるかどうかだね、これがこの作戦の鍵となる。」
「なるほど・・・ですが連戦連勝ですか・・・過酷なものになりそうです。」
そういって井上は山本に最敬礼しメモを再びとり出した。
その姿を山本は、うんうんとうなずきもう一度切り出した。
「で、二つ目なんだがー」