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フランケンシュタイン

作者: ケユーナ

 地区にして、東西。天候にして東に日が沈むころ、街中にはあと少しで夕闇が浮かぶ。

通学路の中で、その存在がはっきりしている中で三人の学生が道を外れている。大雑把な街作りの中ではその存在はただの躯な姿でしか確認できない。

 心なしか危険なことがあった場合であっても、そのようなことが最悪の場合になってしまう。

その少年たち、三人とも特徴もあまりなく、三人の同一人物かと思えてしまう。そんな感じの認識でしかないかもしれない。 薄ら暗くなる街用。

 普段とは違う、淵垂れた中の道。あかる物も徐々に少なくなる。

 日常から除外されるような土地に踏み入れていた。

「ほんとにいくのかよ、俺はそんな噂信じねえけどよ」先に口をきいたこの中では背の高い少年。肌の焼け具合から野球部員かと思われる。

「まあいいさ、いてもいなくてもそれなりの証拠があるのだからな。あそこは今まで様々な噂がたっているからな」中心の少年が言った。この雰囲気で三人はとくにおびえる様子ではない。むしろ、度胸を試すような気持であった。

「ああ知っている。いつかの市長が市の特別条令金をもらうために汚染廃棄物を埋めたとか、エリア5.1が隠されているとか」特別な博識たてる彼も、少し浮かれ気味であった。

 ただの肝試し気分で向かっているその土地には一件の小屋があった。

だが、それを小屋と識別できるものはいないだろう。だれも住んでいないし、手入れもしない。

一つの屋敷林とされているような場所である。

 だが、そんな場所を訪れる人は何かしらの噂を立てていった。何しろ、特に都会というほど都会ではないこの街にはちょうどいい娯楽のようなことである。

一種の迷スポイットとされるようになったそんな場所であった。

 噂が噂に重ね、あるものは軍事利用の兵器開発の研究所。あるものは、異世界へのゲートが封印されている。またあるものは、世界のすべての中心の空間である。

 などとして、年々楽しまれてきたことである。町から遠く離れているため、あまりそこに向かうものはいない。

 そして彼らはその噂を楽しみにしていた、第三者たちの目撃者である。

「そろそろ着くのじゃないか。この大木を抜けたとこらしいぞ」

目の前に現れるいかに通せんぼを擬木したようなもの。樹齢は軽く二百年はつづいている気がする。太く厚い緑葉に囲まれていく。そんな光もあと少しで絶えてしまう時刻であった。

 そこにはあけた広場。森林で言うギャップのような場所。だがそれよりも普通に広いような場所が。

 そんな場所には植物と思われる形作られたものが。

「おい、この木、形が変じゃないか」

思わず駆け寄ってみる。遠くから見るからに違和感を覚えてしまう、おかしな奇形。

だがそれは、距離を縮めていけば徐々にわかってしまう。

「これ。椅子だ…」

葉がかなり会うその中で、人工的に型取りされた木版。そこに打ち付けられたカレー粉のように錆びた金属。

 そこにはベンチが崩れずにあったのだ。この奇妙な光景に三人は唖然した。

「いつから放置されたのだ。だけど、木自体は腐ってもいない」

ちゃんとしたベンチの形はまだ利用もできる。自然でも造形化のように。

「お前らそんなことより本題だよ。あそこに小屋が見える」少年が指を示しもあと二人はあやふやな表情であった。

「小屋って。どこだよ」

「何言ってる。すぐそこにあるのじゃないか」

「だから、どこだよ」

「すぐ目の前だよ!」突然に少年が切れ出した。怒声が森の中を反響していったようだ。

「落ち着け。まずお前は小屋だと言っている場所を指そうとしている。間違いないな」

「なんだよ突然。俺はとりあえず小屋を見つけたと言っているんだよ。なのにお前たちはとぼけた顔しやがって。なめていんのか」

けんか腰になる少年に追い打ちかのように冷静に対処していく。

「もう分かった。お前の言う小屋というのはあれを指すんだな。だけど俺たちにはあれが小屋だとは分からない」

「分からないどういうことだよ。どう見ても小屋だろ。少しぼろついてて、木々に挟まれて」

「その表現は俺たちにも分かってる。だが、その小屋なんて建物一つも見えないぞ」

衝撃が走った。この時点の発言で対立する一対二。意見に矛盾が生じていた。

「わかったよ。俺が悪かった。つまりここから見えないっていうんだろ。近づいたらわかるはずだよ」沸き立った血液を冷却させたかのような応変。熱力学ではその熱量はどこに逃げたのか。

 そして二人を差し置いて一人でその茂みへ歩み寄っていく。足元がおぼつかないままその中へずかずか入っていく。

「危ない!」少年の後方から声が響き渡った。警戒を発するその声は瞬発的に反応してしまう。

「ッイタ!」鈍い声だった。突然、二人の視界からその少年の姿が消えたように見えた。そしてその場に駆け寄っていく。

「大丈夫か。そのあたりは苔のせいで滑りやすくなってるから」

「それを先に言え」手を貸してもらい、立ち上がる。特に目立った外傷はない。ただとても恥ずかしいくらいに草がくっついてた。

「どうだよ。ほんとに小屋があるだろ。ちゃんと扉もあるし」再び同じように指す。

「小屋?」「どこに?」2人は息を合わせたように疑問をたてた。

「おい、いい加減にしろよ。ここには小屋としての小屋があるじゃないか」

「いやいや、それは含まれた方の小屋の意味でしょ」

「何わけのわからないことを言ってるんだ」

「仮に言えば、ここには小屋があるとお前は言ったね。でもそれは個体としての小屋を指しただけであるんだよ。全体からすればかやなんて言わない」

「なんだよ、もしかして俺の言ってることが正しくて屁理屈言ってるのか。それに小屋って呼ばなければなんて言うんだよ」

 そして二人はその場をのけぞるかのように振り返りながら。

「林だね。小屋なんてなかった、だから帰ろう」

全てが転回するかのような一言。

「おい、なんだよそれ!せっかくここまで来て怖がってるのか」

「別に怖くはないよ、ただ指定された場所ではなかっただけだ」

「だったらそんなことどうでもいいよ。おまえら帰るんならおれ一人で見ていくよ。この腰抜けどもが」颯爽とひとりでに古ぼけた扉に手をかけた。

「分かった俺たちも行くよ」二人はその場に集まった。

「なんだよ今度は変えるのが怖くなったのか。まあいい、行くなら早くしようぜ」

 扉を開ける。お尋ねのチャイムのような気がきしむ音。耳がかゆくなるような雰囲気。

 中はほぼ視界が悪かった。いたるところに、木などが入り込んでどちらかと言えば、洞窟の中を彷彿とされる。

木造の家具などホコリあるいは破損、腐りかけているのもあった。

「殺風景…」

「とりあえず何を散策する」

「何にもない感じだけどね」

三人は互いに距離を離しながらそのあたりを散策していった。

 この室内は床や壁や天井など均一とされていない。長年の風化のせいかもしれないが、あたりからの自然による圧力に押されている。

 そのため一方に歩いていても自然とその面が壁と一体とされている。

 ただ無駄に秘匿この室以外にもいくつか扉が存在していた。

「まずこの部屋に入ってみよう」扉を開ける。拒絶したがる音に歓迎させられながらなかへ進む。案の定中の状景は壊れかけのものばかりだった。

「置いているものとしては、まだ原形はある。なにがある?」

「なんかの書類だね。ええっと、英語で読めないや」

きっとこの中で英文の読めるのはいなかっただろう。書類などを後回しにして、他を散策して回った。

 この時にはまだ部屋の中の状態はきれいなままであった。気味の悪いくらい木目の傷みも少なくなっている。

「なんなんだろう。ここは」

「こういう場所、病院の一室に似ている」

言われてみれば床板もきれいで何かリハビリトレーニングの場所にも見える。中には使われていた痕跡もあった。

「やっぱりあやしいよ。人々が使っていた感じだよ」

「でもこれだけではなんなのかわからない。もっと奥へ行こう」

進む。ただ、この謎が分かるようなことさえあれば、それを信じて。

「何の器具だ」少し錆び気味の鉄の棒。

それはこの室内に多く置かれている。それ以外にも、球型や半球型など、見た感じ医療器具のようにも見えた。

「なんか怖くないか」

「何言ってる。ここまで来たんなら最後まで行くんだよ」

次の部屋、次の部屋、次の部屋へと少年たちは入っていく。そこはもう新しく作られた一室のようにリノリウムの床の一室。

 いや、部屋じゃない。そこは、長く続いた廊下だ。そしてその両方に鉄板の扉が奥まで続いていた。

まるで刑務所のように。

「ここは…」

「…」「…」ただの驚きを隠せなかった。唖然でもない。ただ言葉が出ないくらい。

静かな場所のはずなのに、そこには呼び声が反響するかのような気もする。

静寂に包まれる。

…。

… …。

… … …。

『おかえり』

それは聞こえたのか直接の幻聴なのか。かすかなものだった。

「ただいま…」その声が聞こえると少年は言った。眼が光がなく、血を感じられない顔色そして動作も、規則上に作られたもののように。

 そのまま歩き始めた。

「成功しましたね」

「ええ、これでフランケンシュタイン372号は完成です」

ひとりでに歩き始めた少年をおいて後ろで話す二人。それもとても、笑うように。

そして、歩き出して止まった先の扉にはこう書かれていた372号。

ひとりでに音を立てながら開いた。中は狭いものだった。コンクリートで囲まれた立方形の空間。

そしてその中心にはカラス張りの筒状の電子機器が。そのハッチが開いた。

 それに収納されるかのように少年は入ってった。

 入ってから少年は動かなくなった目を閉じなにか電子的な音が聞こえながら、その機能を停止していった。

 鉄の扉は閉められる。

「よかったですね。今回もスムーズですよ」

「何を言ってる。まだこれの倍以上を作らねばならないんだ」

二人の絶え間ない笑い声はこの館内に響いた。だがそれを聞く人間などいない。

人間など。

 この中におさめられたフランケンシュタインと言われる者たち。それは、一度命を亡くした者たちでもある。

 この街の子供たちは全員、命を落とした。

それは突然やってきた。多くの者たちが疫病にかかった。発生源はこの森の近くにあるとされていた。

研究員はそれを突き止めるために、研究所を立てた。

 そしてひとつ方法があった。それは体に耐性を加えることであった。

その研究が重ねられ、人々は耐えるための体を作り上げた。

それがフランケンシュタインであった。

それによって作られた子供たちは、一時的な実験のために町で暮らしてもらう。

そして、ここへ帰ることをするかを試していた。

 互いが互いに志向がかみ合わなかったりする中でも、それは機能する。感情もある。

この街もそれによって作られたものでった。

「よし、次はもっとてっとり早くいこう」

「お前が途中帰るような判断を入れなければもっと早くいってるよ」

フランケンシュタインを作った彼ら。

 1号2号は永遠の命を手に入れた。


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