男子高校生のリーガル
世界にほんの一握りの才能を持ったヤツらがいた。
その能力とは、言葉によって他人を操作できる能力であった。
能力者たちは、それとなく社会に溶け込んで暮らしている。
そして、私たちの社会を牛耳っているのもまた彼らである。
ある者は大統領であり、ある者は高名な研究者であり、ある者はテロリストだ。
能力はある種のライセンスだった。
名誉や財産によるランクなど、はるかに下賎に見えるほどの重要な能力だ。
この物語は、そんな能力を幸か不幸か手に入れてしまった人々の話・・・。
小中ランは高校2年生だった。
ごく普通に見える男子高校生である。
短髪黒髪、茶色の瞳に、やや痩せた体型で学生服の中に灰色のパーカーを着ている。
彼はやや俯きがちに、高校から歩いて帰宅しているところだった。
彼は小学生以来、一度も声を発したことがなかったからだ。
小学生のとき、自分の特殊な力に恐怖したからであった。
ある日、毎日喧嘩ばかりだった両親が満面の笑みを浮かべて、ランが小学校から帰ってくるのを待っていた。
仕事に行ったはずの父も「これからは毎日一緒に、仲良く暮らして行こう」と優しい声で言う。
ランは、両親の喧嘩が嫌いだった。
そして前日の夜も両親は喧嘩をしていた。
そしていよいよ離婚という言葉が飛び出したとき、ランは泣きながら「ずっと一緒がいい」と叫んだのだ。
その時両親は、張り裂けそうに泣くランを、あやすようになだめたのだった。
そしてその日以降、両親は一切喧嘩をしなくなった。
父は仕事をやめ、家に居てなにやら母の手伝いなどをして暮らしている。
母は毎日の夕食にご馳走を作り、日々の家事に一切の不満を言わなくなった。
ランは幸せだった。
しかしその幸せは長くは続かなかった。
ドン。ドン、ドン。
ランの家のドアを叩く音がする。
「小中さん、小中さん、いらっしゃるんでしょ?」
それは父の同僚であった。
突然辞表を出し、それ以来音沙汰の無い父を心配して尋ねてきたのだった。
父は優秀な営業マンだったし、人望も厚かった。
それゆえ、突然の辞表に疑問を持つ者は少なくなかったのである。
すると父は尋常ならざる寄生をあげた。
「帰ってくれ。私たちの家庭を壊さないでくれ。私たちは一緒なんだ。
お前らとはもう絶縁だ。金輪際関わるな。」
金切り声で叫ぶ父に、ランは恐怖した。
そこで初めて、仕事人間だった父が、急に自分たちと常に一緒に居るようになったことについて疑問を感じた。
その瞬間、母親は包丁を持って、玄関を開け、訊ねてきた父の同僚を刺したのだった。
間髪居れず、父も拳を振り上げ、元同僚を殴り始めた。
3名居た父の同僚のうち、一名は母の包丁によって胸から赤黒い血を流し、さらにもう一名は父の暴行により意識が無かった。
もう一名は命からがら逃げ出し、警察を呼びに行ったのだった。
そして一通りコトが終わると、父も母も笑顔を浮かべて「もう大丈夫」と言うのである。
そういいながら両親は、何事も無かったかのように自ら浴びた返り血を洗い流そうとしていた。
ランは恐怖した。
そのすぐ後、逃げ出した元同僚とともに押し入ってきた警官に両親が逮捕された。
両親は逮捕される寸前まで、奇声を上げ必死の抵抗をしていた。
そしてランから見えないところで、ランの名前を呼ぶ金切り声が聞こえるたび、ランは震え嗚咽していた。
両親は精神鑑定の結果、要入院となり、現在に至るまでランは会っていない。
膨大な賠償金を抱えた小中家から鼻つまみ者にされながら、唯一居候を許してくれた祖父の家に下宿しているのである。
だがランは確信していた。
あのとき喧嘩している両親に対して自分が言ってしまった一言が両親を変えてしまったのだ。
あのとき「一緒にいたい」とさえ言わなければ、両親はおかしくなってしまうことはなかったのだ。
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