異世界召喚
俺たちは今まで何をしていたのか。
ある者は次の授業に必要な教材を準備していただろうし、ある者は友人と仲良く喋っていただろう。
俺はと言うと、スマホでネット小説を読んでいた。
異世界追放もの、それも召喚された勇者の中で一人だけ弱かった、と言う設定だ。
実は最強でした、なんてありきたりだが、それでも面白いと思う。
共感できる。
俺はいわゆる陰キャで、大した能力を持ち合わせていない。
鶴城 優斗の様にサッカーが上手い訳でもなく、青柳 花音の様に皆から好かれる才もない。
クラスのヒエラルキーにおいては最下層、スクールカースト三軍だ。
友人がいない訳ではない。
山田 善悪(本名)、鈴木 健、彼らは俺のオタク友達だ。
しかし彼らとつるんでも俺のステータスになる訳ではない。
もし俺が青柳 花音と付き合う事ができれば、それは大きなステータスとなるだろう。
だから実は最強でした、という展開が好きだ。
俺にだって最強の能力があるかもしれない。
みんなが知らないだけで、実は俺はすごい奴なのかもしれない。
そう思いたい。
そう思わないとやっていけない。
俺たちは今まで何をしていたのか。
俺はネット小説を読んでいた。
現実の虚しさを小説で埋めていた。
今まで何をしていたのか。
これから何をするのか。
「あなた達には魔王を討伐してもらいます」
俺たちは勇者として異世界に召喚された。




