表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/39

第三十九話

NO・38


「おかえり~! ひろちゃん♪

温泉たのしかったわよぉ~。

あ、遼君。おじゃましてるわね」


 遼の家の扉を開けると、そこには温泉から帰ってきた両親たちが楽しそうに談笑していた。

傍らには明らかに出かける前にはなかった酒の瓶が無造作に転がっている。


「おかえりって……母さんの家じゃないだろ?」

真宙はがっくりとうなだれてつっこむがそこは全く気にしていないらしい。

「遼くんもおかえり~

昨日はホント楽しかったのよ~

あ、そうこれお土産!

ひろちゃんと一緒に食べてね~」

にこにことしながら真宙の母、美宙が箱を手渡した。

名物温泉まんじゅうと書かれている。


「それにしても真宙ちゃん。随分美宙に似てきたわね~。

ほんと美人さん! 遼のお嫁さんになったらいいのにー」

「なっ?!」

 顔を赤く蒸気させて綾瀬の母がうっとりと見つめながら言う。

「でしょー?

私もひろが綺麗なドレス着てぇ~、可愛いお嫁さんになったらいいな~って思ってるのぉ。

遼君かっこいいし、ほんとステキよねぇ~」

うふふ。と母二人は夢見る少女のように笑った。

「いやいや! 俺はまだ真宙が嫁に行くなんて認めないぞ!

まだ高校生じゃないかっ!

俺の目の黒いうちはそんなの――」

「まぁ! 真さんってばひろちゃんのドレス姿見たくないの?

それに結婚は早いって言いますけどねぇ、私が真さんと結婚したのって16歳のときで……」



「……行こうぜリョウ」

「ああ……」

 俺は男だと突っ込む気力もない様で、真宙は深いため息をつくと両親たちのどうでもいい話に背を向けた。


*********


「それにしても、見せたらよかったんじゃね? ヒロのドレス姿」

 一口サイズのまんじゅうをほうばって綾瀬が尋ねる。

「ぜっっったいヤダ!」

眉間にしわを寄せながら真宙もまたまんじゅうを口に放り込んだ。

「でもさー、結構お前似合ってるよな。姫的なコスプレ……」

右手に今日の撮影の記念にと貰った写真をひらりとさせて綾瀬がしみじみと言うと、真宙はかっと顔を紅くした。

「な、なんでそれお前持ってんだよ?!」

「え? ピエロのにーさんが記念にってくれたけど? あぁ、そういやその時お前居なかったからヒロの分もって渡されたんだった」

 はい。と渡されたのは王子と姫の恥ずかしいくらいの乙女チックな写真。

「……お前、この写真どうすんの?」

真宙が恐る恐る聞くと綾瀬はにやりと笑い一言。

「せっかくの記念だから部屋に飾るかなぁ」

「それだけはほんとマジ勘弁して下さい。

そんで親たちにもぜったい見せたりしないで!」

ちょっと涙目になりながら真宙は上目遣いにそう言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ