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第36話
「遅いぞ。まだか? 」
おもむろに扉が開いたかと思うと、先ほどのピエロが顔を出した。
「あ、お疲れ様です。
今終わったんですよ。ほら」
「あの、俺……」
真宙は顔を紅潮させながらスカートをきゅっと握った。
「――終わったんなら行くぞ」
そう言って真宙の腕をつかむとピエロは早足で歩きだした。
「ちょ、ちょっとまってっ――っ!!」
初めて履いたヒールの高い靴に翻弄され、真宙はピエロめがけて派手に転ぶ。
「なっ! なんだよお前っ! 」
真宙はピエロの胸に飛び込む形となった。
「だ、だって俺、こんな靴履いたことないしっ!
なんかバランスとれねぇってっ!! 」
「……」
「……あの、でも、ごめん……」
「……そうか」
そう言うとピエロはそのまま真宙を支えつつ、近くにあった椅子へと座らせる。
「……足、大丈夫か? 」
そう言うとピエロはひざまづき真宙の足を取る。
「……大丈夫……です」
「靴。変えてもらわないとなぁ」
そう言うとピエロはヒールを脱がし、女性スタッフに指示を出した。