第二十四話
「あー、疲れた」
「お疲れ~」
「お先に!」
放課後、応援練習も終わり、生徒は自宅である寮へと帰っていく。
今日の練習は桜井と共に本番さながらに行われた。
ちがう点は、ガクラン&セーラー服ではない、といったところだろう。
「先輩お疲れ様でした」
真宙は桜井と加賀谷にぺこりと頭を下げる。
「先輩方のお陰で、なんとか本番に間に合いそうです」
真宙がそういうと、桜井は柔和な笑みを浮かべ、加賀谷は「本番も期待してるぞ! 副団長! 」と言うと、真宙の背中をばんばんと叩いた。
荷物を片付けてから真宙は岐路につく。
隣には、清盛。
特に話をするわけでもなく、仏頂面で真宙の隣を歩いている。
(俺、こいつに告白されたんだよな……)
真宙はちらりと清盛を見た。
(本当に、俺なんかを好きなのかよ?
でも、真剣……だったよな……)
昨日のこと、今朝のこと、昼間のことを真宙は思い出していた。
自分も清盛のことが気になっているのは分かる。
好きだということも。
しかし――答えを清盛に言う前に、確認しなければならないことがあった。
それは自分の血が、どこまでアルデイシアとして忠実であるか、と言うことだ。
真宙が肉体的な成熟を迎えたとき。
その時、本当に女になってしまうのか、もしくはそのままなのか。
実際その時期にならないと分からない。
アルデイシアの純粋種なら、なって当然、当たり前だ。
地球人とのハーフであっても、まあ変わるだろう。
しかし、実際のところ真宙は1/16くらいの混血具合なのだ。
真宙の母親、美宙は生まれたときも女であったため、性別は変わっていない。
祖父もそうだ。
彼も生まれたときから男だった。
真宙は自分も男として生きていくものだと思っていたので、アルデイシア人は肉体的に変わるときもあると知ってはいたが、いまいちわかっていない部分もある。
まじめに話を聞かなかったことが一番の原因だろう。
山田が自主トレに行ったら、母さんに電話を掛けようかな。
真宙はそう思い、ふと空を見上げた。
空は夕日に染まり、雲まで赤く染まっている。
「綺麗だな――」
真宙は思わず呟いた。
「ああ」
横を見ると清盛が真宙を見て微笑んでいた。
彼の顔も夕日に照らされて、赤く色づいている。
どきり。
真宙の鼓動が急に早くなった。
「か、帰るぞ。もう暗くなるし」
それを誤魔化す様に、真宙は清盛から視線を離すと、寮に向かって歩き始めた。