第十八話
「応援合戦ってこれを見てもらえばわかると思うけど、毎年みんな力を注ぐんだよ。
応援ポイントは結構点数入るからね。
実際球技大会って銘打ってあるけど、そっちのほうがオマケっぽくなってきてるし」
桜井は去年の応援合戦のDVDを見せながら、真宙に説明する。
清盛が言っていた通り、副団長はすんなりと真宙に決まった。
団長は本当に接戦で、数表の差で桜井がその座に納まった。
「先輩。応援の曲とか、応援のときの動きってどうやって決めるんですか? 」
真宙はDVDを見ながら、桜井に質問をした。
画面には去年の応援団長たちが機敏な動作で応援をしており、ひな壇に上がっている他の生徒が色紙を持ち音楽に合わせて人文字を作っている。
それはとても統率の取れた動きで、真宙を釘付けにした。
「曲のほうは俺と真宙君で1-A、2-A、3-Aに行って、投票してもらうしかないだろうね。
一応先生方には言ってあるから、明日の休み時間にクラスを回って、投票をしてもらって、放課後二人で開票。
明後日にそれぞれのクラスに通達して、明々後日までには応援の練習を始めるつもりだよ。
応援の動きは曲が決まらないとだめだけど、振り付けが大好きな人が3-Aにいるから、まあその辺は心配しなくて良いんじゃないかな」
桜井は優しく微笑むと、真宙の頭をくしゃっとなでた。
「そうそう、一応他のクラスを意識して、練習は秘密裏にやることになってるんだ。
去年は無かったみたいだけど、スパイとかが出るときもあるらしいし……」
「す、スパイ? ですか? 」
真宙は目を丸くして桜井を見る。
「そう。スパイ。
だから、応援合戦が終わるまでは、他のクラスの友達にも応援の内容は秘密だよ」
桜井はまじめな顔で、真宙を見る。
「は、はい! 」
真宙は思わず身を硬くしたが、すぐに桜井は柔らかい口調で「まあ、大丈夫だから心配しないで」と言って頭をくしゃくしゃと撫で、真宙の緊張を解きほぐしてくれた。
その後、投票用紙の準備を終えると、夕食の時間を少し過ぎたところだった。
「ご飯食べにいこう」と桜井に促されて、食堂へ向かう。
今日は肉じゃがだろうか?
先ほどから煮物のよい匂いが真宙の鼻先をくすぐる。
「それにしても、真宙君と同じ寮でよかったよ。
これで団長と副団が別の寮だと、プランを練るのも一苦労だからね。
去年は――俺、副団だったんだけど、団長と寮が違ったから大変だったよ。
門限もあるしね」
食堂で桜井と真宙は向かい合って座わり、去年の応援合戦の話をした。
桜井との夕食はそれは楽く、真宙にとって清盛以外の人と食べる夕食は初めてだった。
(山田は、もうご飯食べたのかな? )
ふと、真宙は清盛を思い出した。
なぜか胸がきゅっと締め付けられ、顔が火照るのを感じる。
そして、その気持ちを抑えるかのように、真宙はご飯と肉じゃがをがつがつと食べた。