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第十五話

「やだなセンセ。1-Aの宇野真宙君ですよぅ」

 不意に石森の後ろから、声が聞こえた。

 目黒は鉢巻をひらりとなびかせて、真宙の目の前に来る。

「真宙ちゃん。輪ゴムもって来たよ~。

これをホックのところにくっつけると……ほら! スカートがずり落ちない! 」

 まるで某通販番組の司会者のように、目黒は鮮やかな手つきで輪ゴムをホックに掛けた。


「宇野?」

 石森は信じられないといった顔で、真宙をまじまじと見た。

「な、なんですか。先生」

 あまりにじろじろと見るので、真宙は恥ずかしくなり、目を伏せる。


「あ、先生も球技大会で副団長はセーラー服って言うのに一票入れてくださいね」

 目黒はウインクをしながら、にこやかに言う。


「あー、そう言うことか」

 無精ひげを右手でじょりじょりと擦りながら、石森は一人納得する。

「目黒。お前宇野にあんまり無理させるんじゃないぞ。

それにしても――」

 石森は真宙を見ながらしみじみと言った。

「ちょっと似合いすぎなんじゃないのか? 」




「では、新年度生徒会役員の紹介です」

 体育館に桜井の声が響く。

「皆さんおはようございます。書記を勤めます二年A組の木田明人きだ あきとです。

前年度の経験を生かし、がんばりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしま――」


 木田の一言コメントが終わるか終わらないかというとき、不意にがらりと体育館の戸が開いて、生徒たちは一斉に振り向いた。

 そこに立っていたのは、黒い学ラン、白の手袋と同じ色の長い鉢巻を身につけた目黒会長だった。

「みなさんおはようございます! 」

 大きな声で挨拶をすると、目黒は鉢巻をなびかせて、壇上へと走っていく。


「目黒! 今度は何企んでるんだ? 」

「やっぱ、お祭りごとか? 」

「応援してるぞー! 」

 驚く一年生を尻目に、目黒のお祭り好きを知っている二年生と三年生から野次がとんだ。


 目黒は桜井のマイクを奪うと、壇上の真ん中に立つ。

「みなさんご声援ありがとうございます。

新生徒会会長の目黒竜一です。

会長って言われるのはどうも性に合わないので、みなさんどうぞ竜一って呼んでください。

あ、りゅうちゃんでもいいですよ」

 目黒はそういうとウインクをした。

 格式ばっていた会場が一転、ちょっとしたイベント会場のような雰囲気に包まれる。


「さて、来月に行われる球技大会についてですが、僕にはどうしても納得がいかないことがあります。

それで、今回皆様に僕の提案を聞いていただき、多数決によって方針を決めていただきたく思います。

僕が今着ている学ランですが、皆さんどう思いますか?

二、三年生はご存知でしょうが、これは球技大会時に応援団長と副団長が着用する衣装です。

せっかく学年の敷居を乗り越えて、楽しく和気藹々と交流をしようというのに、これではいささか寂しいと思いませんか?」

 目黒はそう言うと、入ってきた扉のほうに歩いていく。

「そこで、僕なりにいろいろ考えまして、副団長の衣装を新たにリニューアルすることを提案します」

 少しざわついた場内を満足げに見渡すと、目黒は扉を開け、真っ黒いマントにフードを被った人物を招き入れる。

 その人物の横には、目黒と同じ学ラン姿の山田もあった。

 目黒は二人に目配せをすると、付いて来いといわんばかりに壇上に進み始める。

「この二人は生徒会のものですが、団長と副団長のモデルとして僕の提案する衣装を着てもらいました。

皆様のお役に立てれば幸いに思います」

 すっと息を吸って、目黒は出し抜けに手を上に思い切り突き出し叫んだ。

「みんな! 楽しい球技大会にしたいかー!」

「おーーーーー!!!! 」

 まるで、某テレビ番組の高校生クイズのノリだ。

 

 目黒には天性の人を惹きつける才能を持っている。

 そして彼は無類のイベント好きであり、学校の行事も皆で一丸となって楽しく行えればと常々思っている。

 前年度の文化祭時に「コンテスト」を開催し、文化祭を大いに盛り上げたことは生徒にとっても記憶に新しい。


「ではでは。みなさんお待ちかねの新副団長の衣装です! 」

 目黒は真っ黒い布をふわっとめくると、セーラー服に鉢巻をヘアバンド風に結んでいる美少女が現れた。

「これが新副団長の衣装です! 」

「おお~っ」と会場内はどよめく。

 そしてすぐに割れんばかりの歓声があがった。

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