第一話
他のサイトで連載中ですが、手直ししながらこちらでも掲載することにしました。
話の大幅な変更は今のところありませんが、話の道筋が変わるような変更があった場合にはお知らせしたいと思います。
手直しが出来次第順にアップしていく予定です。
よろしくお願いします。
「ふぅ、暑いなぁ」
蒸し蒸しとする電車からやっと降りて、駅のベンチに腰を下ろす。
ペットボトルのお茶を飲んで、少し汗ばんだ額をぬぐった。
まだ四月の初めだというのに、今日の天気はまるで初夏のような雰囲気すらする。
ペットボトルをしまうと、宇野 真宙は、スポーツバックから一枚の地図を取り出した。
そこには、これから入学する高校と隣接する寮が書いてあった。
「今日から、か」
真宙は一言そう呟くと、ベンチから離れ歩き出した。
「俺は絶対、男の中の男になってやる」
真宙は数年前からそう思っていた。
そのため、わざわざ男子校を選んだのだけれど、そう思うようになったのには、真宙なりの訳があった。
普通の人間に見える真宙だが、実は地球人の父と宇宙人の母との混血児である。
宇宙人と言っても、見た目的にも能力的にも地球人と変わらない。
一つ違いを述べるなら「性転換能力」があることだ。
もともとアルデイシアには性別がない。
ただし、皆20歳前後に訪れる体の成熟期になると、好きになった相手の性別、または肉体的能力に応じ性別ができるのである。
しかし混血児となると話はまた別で、生まれたときから一応の男女の区別があり、地球人と同じように育てられる。
真宙の場合も同じで、男の子として今まで暮らしてきた。
成熟期を迎えても、このまま男として暮らしていく。
そう思っていたのだが、中学校に入ったころから、真宙に漠然とした不安がよぎるようになった。
あまり低くならない声。
さらさらの髪。
高くならない背。
大きい瞳。
下手をするとその辺の女の子より、女の子らしい容姿。
成熟期までこの姿だったら、間違いなく肉体的能力によって女になってしまう。
今まで男として育ってきた真宙にとって、いよいよ漠然とした恐怖が現実のものとなって押しかかってきた。
そこで真宙は、家族から離れ、肉体的にも精神的に独立した『男の中の男』となるべく、全寮制の男子校に入学することにしたのだ。
そして今日、今まさにこれから3年間お世話になる学校を目指し歩き出していた。