7話 重鎮
「よしよし、これで申し込みは締め切りだな。」
「結局何人になった?」
「なぁに、987人ぐらいじゃ。」
「ほほう、かなりの人数じゃな。」
十人ほどの老人達が各々髭や髪を撫でながら卓を囲む。
彼等はこの天界で長寿の神達。
周囲から重鎮と呼ばれている。
「それで客引きの方はどうだ恵比寿よ。」
「問題ない。各店、戦遊戯で大賑わいじゃ。」
丸々に太った初老の恵比寿が腹を揺らす。
予想以上の売上に笑いが止まらない、そんな様子だ。
「こっちも滞りもないぞ。競技に関しても全て決まっておる。」
軍神、建御雷神が自信満々に答える。
「来賓の方も決まった。精霊の姫は参加できないが神獣の巫女姫の参列は決まった。」
「よしよし問題なく進んでおるな。」
高笑いする重鎮達。
その笑い声をかき消すように姿を現したのは夢幻である。
「何が問題なく、だ。」
「何だ九尾か。何しに来たのだ?」
「報告だ。お前達がいたずらに開けた門についてだ。」
「なんだ、その事か。」
興味なさげに鼻を鳴らす大黒天。
「お前達がしでかした事だろう。自分達で元に戻すのが道理ではないのか?」
「何で儂達がそんな事をしないといけないのだ?」
大黒天の言葉に他の重鎮達もうんうんと頷く。
「お前さんがすればいい事だろう九尾。儂達には関係ない。」
身勝手で無責任な発言に苛立つがグッと堪える。
用件は別にあるのだ。
「わかった。不本意だがその件は俺が引き受けよう。本当の用件はこっちだ。」
せせら笑う神々の前に数枚のプリントを卓上に投げつける。
「お前達が現界から攫った子供は約千人。その内20人程行方がわかっていない。その子供達の捜索隊を結成したい。人手を貸して欲しい。」
深く頭を下げた夢幻に対しての返答は許し難い発言だった。
「何故儂達がそんな面倒な事をしないといけないのだ?」
「お前達が無理矢理天界に連れてきたのだぞ。最後まで責任を持て!」
「知った事か。たかが現界人の為に何故我々が腰を上げないといけないのだ。」
「そうですよ、現界は人で溢れかえっています。別に千人程度減っても問題はないはず。」
「人数の問題じゃない。正体を担う子供立ちだぞ。それに子を失った親の気持ちを考え―――。」
「いなくなったのなら新しく造ればいいだけの話だ。」
「な!」
大黒天の発言に絶句する夢幻。
そして大黒天の発言に同調する重鎮に絶望を覚える。
「そこまで気になるのならお前一人でやればいいだろう狐。」
「そうだそうだ。」と声を合わせる重鎮達の態度と自分自身の不甲斐なさに腹立たしさと憤りが募る。
夢幻は天界で暮らしているわけではない。
北方領土付近にある地図にも記載されていない小さな島で暮らしていた。
電気や水道もなく、外界を遮断し、まるで仙人のような暮らしを。
だからこそ天界の異変に気づくのが遅かったのだ。
異変に気づいたのは日本全国の門が開かれた時。
何事かと天界へ赴き事情を知った頃には時すでに遅し。
重鎮の策略で多くの神々が戦遊戯に賛同して覆す事が不可能な状況であった。
「わかった。もういい。」
重鎮達に見切りをつけ、踵を翻す。
邪魔者が去った事でまた賑わい始める重鎮達。
「当日が楽しみですな。」
「お互い正々堂々と戦いましょう。」
和気藹々語る重鎮達に夢幻は強く思う。
重鎮達に神上をやらせてはいけないと。