18話 責任感
「代理人が強盗だと!?」
蓮からの報告に唖然、立ちくらみを起こす夢幻。
「何故そんな事になったのだ。神は何をしている!」
「じ、実は・・・。」
気まずそうに事を顛末を話し始める蓮。
本来、敗北した代理人は速やかに現界へ帰すのが義務として通達されていた。
「しかし、それを怠る神がいるようでして。」
友井と鳥越がこれに当てはまり、僅かな金品を渡されたのみで放り捨てられてしまったのだ。
「路頭に迷っていた所、盗賊団に捕まり、元の世界に戻りたければ仕事を手伝えと脅されたそうで。」
「神達はこうなる事を何故想定しない!」
「今、陽弥瑚様が運営と当事者に抗議しに行っていますが・・・。」
「暖簾に腕押し、だろうな。」
「はい・・・。」
お互い、深いため息を落とす。
「わかった。その二人に関しては俺が引き取り、責任を持って現界へ連れ帰ろう。後、代理人をちゃんと帰したかを確認しないといけないな・・・。」
「あの狐様、大丈夫なのですか?」
蓮は心配になる。
今現在、夢幻は抱えきれない程の案件を背負っているのだ。
「これぐらい何ともない。」
「そうなのですか?」
「ああ、順調には進んでいる。幾つか問題があるが、な。」
「問題ですか?」
「門の方は8割方塞いだ。だが、重鎮達が乱暴に開いたせいで反動が起こるかもしれない。」
因みに今、蓮と連絡を取っている最中も門の修復に勤しんでいる。
両手を細かく動かし、引き裂かれた門を光の糸で縫い合わせるよう、丁寧に修復している。
「なるほど、閉じた後も経過を見守る必要がありますね。」
「全く、問題ばかりしか起こさない悪ガキだ、あの重鎮達は。」
賛同したいが自分より身分が上で神々の中でも最年長の重鎮達に罰当たりなことが言えず、連は苦笑いを浮かべるのみ。
「それで行方不明者の方は?」
「二人を除いて全員現界へ送り返した。」
「二人を除いて、ですか・・・。もしや―――。」
「ああ、そのうちの一人は犬飼紅葉だ。隈なく探したが未だ行方知れずだ。」
髪の毛を掻きむしる夢幻。
その仕草にはかなりの焦りが見える。
「あまり根を詰め過ぎないで下さい。何でしたら、少しお手伝いをしましょうか?」
「いいのか蓮?お前には陽弥瑚の子守りが―――。」
「そちらの方は大丈夫です。美奈子殿のおかげで大分楽をさせてもらっているので。」
「そうか、ならば―――いや、辞めておこう。」
「狐様?」
「蓮は引き続き空也達の事を頼む。」
通信を終え、ふう~と大きな深呼吸。
ちょうど門の修復も終えた所である。
(これは俺がやるべき事。俺がやらねば・・・・・。)
このふざけた戦遊戯を阻止できなかった自分の戒め。
だからこそ、何事もなく終わらせねばならない。
ふと見上げると夕暮れ空に散らばる星々が。
夜空に浮かべば鮮やかに輝きを見せるであろうが、夢幻の眼に不吉な輝きにしか見えなかった。




