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15話 笑う者 泣く者

「終了~~~~~~~!」

 うずめちゃんが競技終了を告げる。

 脱落者は二百名ほど。

 空也の推測通り、脱落者は三度倒された者のみで、牢屋に閉じ込められていた泥棒達も突破を果たした。


「美奈子!!良くぞ無事に戻ってきた。」

 無事に生き残った美奈子を大喜びで出迎える陽弥瑚。

「本当に冷や冷やしたぞ。怪我はないか?」

「はい、軽いかすり傷だけで―――陽弥瑚様?」

 返答したにも関わらず触診を辞めないので少し困惑。

(ただ美奈子の身体を弄りたいだけでは?)

 陽弥瑚の表情からそう邪推するのは仕方のないのかもしれない。

 空也の白い視線に気づいたのか、早口で労いの言葉を送る。

「空の字もお疲れ様じゃ。よくぞ美奈子を窮地から救い出してくれた。礼を言うぞ。」

「礼には及びません。俺が勝手に助けただけです。」

「それでもだ。やはり幼馴染の事は心底気になるようじゃな。」

「当たり前じゃないですか!」と即答する空也に陽弥瑚はニンマリ。

「なら、今後もよろしく頼むぞ。何せ美奈子は危なっかしい所があるのでな。」

「危なっかしい、てどう言う事ですか陽弥瑚様。」

「全くですね。」

「空也も同意しない!!」

 和気藹々、勝ち残った喜びを噛み締める。

「さあ二人とも妾が家(わがや)へ戻ろうぞ。次の遊戯まで暫く時間がある。ゆっくりと英気を養おうがよい。」

「そうですね。やる事もありますし。」

「やる事?」

 何だろう?と首を傾げる空也。

 そんな彼の腕をがっしり掴み、美奈子は含みある笑みでこう答えた。

「ええ空也、聞かせてもらうわよ。私とすれ違った数ヶ月の事を。特にその眼について詳しくね。」




「くっそが~~~。」

 徳利を地面に叩きつけ、地団駄を踏むのは大黒天。

「この儂が、敗退だと!そんな馬鹿な事はあるか!!」

 怒りを込めた足踏みは地面を揺らすので迷惑千万。

 配下達の必死の懇願により地震はようやく収まる。

「くそ、こんなはずでは、こんなはずでは・・・・・・。」

 歯軋りが王の間に響く。

 大黒天が怒り狂うのも無理もない。

 彼にはこの戦遊戯を最後まで勝ち残れる自信がかなりあった。

 彼の代理人の日吉は賢く、力に優れており先頭に立てる存在だと確信していたのだ。

 故に彼に自分の力の一部を授けたのである。

 だが結果、呆気なく敗退。

「儂は勝ち上がる!絶対にな!」と他の重鎮達に豪語していた事が赤っ恥をかく羽目に。

 しかも格下と嘲笑い見下していた陽弥瑚と九尾の狐の代理人にあっさり倒された事実が彼を余計に腹立たしくさせる要因になっていた。

「大黒天様、代理人の日吉が戻って参りました。どうされますか?」

 大黒天の怒りがある程度治ったのを見計らい、臣下が尋ねる。

「あんな奴など知らん!!どこかに捨て置いてしまえ!」

 吐き捨てるように命令を下す大黒天。

 しかし臣下は跪くまま、動こうとしない。

「何だ、まだ何かあるのか?」

「はい、実は来客がお見えになっておりまして・・・。」

「誰だ?」

 臣下が恐る恐る近づき、耳打ち。

 平常心を心掛けながら来賓の名を告げる。

「な、何だと?!」

 驚きのあまり怒りは彼方へと。

「どうなされますか?」

「・・・・・・、応接の間へ通せ。」

「かしこまりました。」とようやくこの場から立ち去る臣下。

(一体何用だ?)

 不審感を抱きながら、応接の間へと向かうのであった。


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