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13話 空也の回想

 土岐遠空也は早く両親を亡くし親戚中をたらいまわしにされた経緯から家族愛に飢えていた。

 その為、自分を引き取ってくれた東埜宮家を実の家族と思っており、美奈子の事を『姉』として慕っていた。

 そんな美奈子から親友の紅葉を紹介されたのは小学6年の時。

 そして中学2年の時に紅葉からの告白で恋人関係となった。

 だが、空也は紅葉(彼女)の事よりも美奈子()の方を優先した。

 それは家族の為。

 二度と家族と離れ離れになりたくない、という想いから。

 だが紅葉からはそうとは見えなかった。

 付き合い始めた当初は美奈子もフォローしていたが、高校入試が近づくにつれて美奈子も自分の事で手一杯になり始める。

 彼女が受ける高校はかなりハードルが高く、美奈子の実力では合格はほぼ不可能だと言われていたのだ。

 それでも美奈子は諦めきれず合格の為に励む。

 しかし無理が祟り、身体を壊す日々であった。

 その姿を間近で見ていた空也は美奈子を懸命に支えようとした。

 だが、そんな背景を何も知らない第三者の目にはこう見えたのだ。

―――土岐遠は二股をかけている――――

―――彼女の紅葉をないがしろにして美奈子と付き合っている―――

―――美奈子は紅葉から土岐遠を奪った―――

 悪意が込められた数々の噂が紅葉の優しい心を蝕んだ。

 そして7月――1学期終業式の日、事件は起こった。

 放課後、呼び出された美奈子が紅葉と激しい口論に陥っている状況を偶々目撃した空也。

「美奈子!紅葉!」

 親友の二人が階段の踊り場で掴み合いまでに発展。

 危険を感じた空也は慌てて駆け寄り二人の間に割り込んだ、その時。

「五月蠅い!離して!」

 美奈子の強引に振り払った腕は空也の胸を強く押して――――。

「空也!」

「空也君!」

 意識を取り戻したのは病室のベッド。

 医師からは二日間意識を失っていた事、そして階段から落ちた時に左肩は複雑骨折、日常生活には支障がないが運動で肩は二度と使えない、と宣告される。

 その事が学校に伝わり、空也の部活による高校推薦は取り消しとなってしまうのであった。


「あの時の俺は身勝手だった。自分の事しか考えていなかった。紅葉の事を一切考えていなかった。俺がフラれたのも当然さ。」

『空也君は一度も私を見てくれなかったね。』

 別れ際の紅葉からの一言は今でも耳元に残り、何度も思い返す。

「紅葉の言う通りだ。俺は何も見ていなかった。紅葉の事も、美奈子の事も。俺はただ二人を苦しめて二人の仲を引き裂いただけだった。」

(ち、違う!違うわよ空也。私が悪いの。全て私が――――。)

 その言葉が喉から出てこない。

 見た事がなかったのだ。

 ずっと傍にいた空也がここまで苦しんでいる表情を。

 ここまで思い詰めていた事に全く気付いていなかった。

「俺はずっと逃げていた。二人から。他人からも。自分の事も何もかも。肩のリハビリさえ・・・。」

 そんな時である。

 失意の中、中学を卒業して迎えた春休み。

 車に引かれそうになった時、時渡りの魔眼が強制的に発動して異世界へと飛ばされたのだ。

「色んな世界を渡っていろんな人に出会って・・・。気付かされた。教えてくれた。辛い事にも向き合わないといけない。前に進む為に。俺自身の為に。美奈子と紅葉の為に。」

「空也・・・。」

〈違うわよ美奈子、貴女のせいよ。貴女のせいで空也も、紅葉も、皆不幸に―――。〉

「美奈子。俺の肩の怪我はお前のせいじゃない。紅葉の事も全て俺のせいなんだ。だからもう、自分を責めないでくれ!」

<!!!!>

 空也のこの言葉に今まで囁き絡めていた声が美奈子の心を取り逃す。

 その同時に空也が美奈子を強く抱きしめる。

「長い間、苦しめてごめん美奈子。本当はもっと早くこの言葉を言うべきだった。なのにここまで引き延ばして。ずっと言えなくてごめん。」

 美奈子からの返答はない。

 だが、彼女が空也の背中へそっと手を伸ばして静かに涙を流す。

 その行為に胸が熱くなり、無意識に抱きしめる。

 一つ救われた、とそう思いながら。


「それでこれからどうするの、空也。」

 お互いの気持ちが落ち着いた後、美奈子が今後についてを尋ねる。

 気まずさを振り払うように発した彼女の眼元が若干まだ赤い。

「あと12時間以上・・・。でも、もうすぐここから出ていかないと・・・。」

「何で?」

「この部屋は数時間経つと自然消滅するんだ。どうやらランダムでいろんな場所に出現しているみたい。」

「そんな部屋、どうやって見つけたの?」

「この眼のおかげさ。」

 身を隠しながら移動していた時、時空の歪みを発見。

 何事かと調べた結果、この部屋を見つけたのである。

「便利な眼ね。それじゃあここに隠れて時間切れを狙うのは無理ってこと?」

「そうなるな。」

「となると、隠れる場所を探さないといけないわね・・・・・・。」

 腕を組んで考える美奈子。

「それなんだけどさ・・・、実はちょっと考えている事があって。」

「??」

 何かしら?と不思議がる美奈子に耳打ち。

 空也の考えを聞き終えた瞬間、美奈子の眼が大きく見開く。

 そして一言、

「空也って本当に――――、面白いわ。」

 嬉しそうに微笑むのであった。

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