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11話 裏切り

 時刻は昼過ぎ。

 折り返しを過ぎ、すでに警官側と泥棒側合わせて百人程の脱落者が出ていた。

 そんな中、美奈子は日吉を含めた数人と共に隊列を組んで泥棒を捜索していた。

「何故私と日吉さんが一緒に?」

「何だ?俺と組むのがそんなに嫌なのか?」

「そういう訳ではないです。ただ私達は別れて捜索した方が効率がいいのではないかと・・・。」

「一番多く捕まえている者同士で組むからこそ確実性が上がる。黙って従え。」

「・・・・・・わかりました。」

 仕方なく頷くと、舌打ちを向ける日吉。

(あからさまに私を嫌っているわね。まぁ、私がずけずけと異議を唱えているからだけど・・・。)

 1日足らずの関係だが、事ある毎に美奈子を敵視してくる日吉。

 今回の同行もこれ以上泥棒を捕まえてでかい顔をするな、との釘差しなのだろうと推測。(美奈子は日吉よりも若干多く泥棒を捕まえていたのだ。)

「まぁ、人数もかなり差が出て私達が有利だし、大丈夫よね。」

 デバイスで生き残り数を確認していた時だった。

「見つけたぞ!」

 仲間の声に視線をあげるが、泥棒の姿は見当たらず。

「このビルの中に入ったぞ!」

「追いかけるぞ。」

「はい!」

 皆の後に続き、ビルの中へ。

「二手に分かれるぞ。」

 二人ずつに分かれ、挟み撃ちにする行動に出る美奈子達。

 美奈子は友井、と名乗る男子と共に右側の階段を昇る。

「泥棒はどこ?」

 最上階まで昇るも泥棒の姿は見えず。

 立ち止まり周囲を見渡した、その時だった。

「ここには泥棒なんていませんよ。」

「え――――。」

 なんと友井が美奈子の背中を斬りつけたのだ。

 激痛と脳内にガラスが砕け散った感触が襲う。

「あ、貴方、何をするのよ!」

 歯を食いしばり痛みに耐えながら、咄嗟に間合いを空ける。

「これで1回死んだ。後もう2回殺して失格にしてやる。」

 冗談ではなく、友井の眼は本気だと察した美奈子はこの場から逃げる行動を取る。

 しかし、

「馬鹿野郎!何をしている!」

 反対側から昇ってきた日吉ともう一人が美奈子の行く手を阻む。

「ちゃんと足を封じてから殺せ、とあれ程言っただろうが!」

「す、すいません。」

「あなたの指示なのね、日吉さん。」

「そうだ美奈子。お前は邪魔だ。ここで消えてもらう。」

「どうしてこんな事を?」

「俺に反抗的だからに決まっているだろう。年下の女の癖に。」

 吐き捨てる日吉。

「そんな理由で私を失格にさせたいの?」

「ああそうだ。幸い、泥棒側とも差が大分離れているしな。お前如きが居なくなっても支障がない。」

「でも、牢屋から脱獄されたら元の子も――――。」

「安心しろ、泥棒側に通じている奴がいる。逃げられてもすぐに捕まえられる。」

「なっ!」

「つまり、お前はもう不要。俺の絶対的権力の為に利用させてもらう。見せしめだ。」

「っ!」

「追いかけろ!」

 真実を聞いた美奈子の判断は素早かった。

 すぐさま窓へと駆け出し、そのまま身を乗り出して飛ぶ。

(くっ!)

 4階からの大ジャンプは奇跡的に着地成功。

 全身に若干の痛みが残るが、構わず駆け出す。

(大丈夫。ワタシなら逃げ切れるわ。)

 脚にはかなりの自信を持っている美奈子。

 だが、突如地面が激しく揺れ始めた事で彼女の足が止まる。

「逃がしてたまるか!」

 日吉が錫杖で地面を激しく叩き、地震を起こしていたのだ。

「大黒天様から頂いたこの力に平伏すがいい。」

 拙い、と直感。

 懐から取り出した煙幕玉を地面に叩き付ける美奈子。

 相手の視界を封じ、その隙に逃亡を図る。

「くそ!見失った。」

「まだ近くにいるはずだ。探せ!」

 煙幕が薄くなり美奈子の姿を見失った日吉達は手分けして探す。

 美奈子は少し離れた建物間の細い通路に身を潜めていた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。」

 息を整え、周囲を見渡す。

「上手く撒いたみたね。」

 日吉達の姿が見当たらない事を確認して安堵する。

 しかし美奈子は気付いていなかった。

 気配を消して背後から忍び寄る影に・・・・・・。

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