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ジゴロ探偵の甘美な嘘〜短編集3 透明な季節〜  作者: 涼森巳王(東堂薫)
第二話 不可視の殺人
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不可視の殺人3



 もしも、レミがこっそり毒を服用して自殺をはかったのだとしても、そのあと、姉まで道づれにすることはできない。そのためにはなんらかの方法で、キャロンに毒を盛る必要がある。だが、誰もそれを見ていないのだ。


 そもそも、レミが姉を殺したいほど憎んでいたとは思えない。園遊会のあいだ見ていたが、二人はひじょうに仲がよかった。


 二人の両親が亡くなったのは十年前だという。そのころ、レミはまだ五歳だ。レミにとってキャロンは姉であり、かつ、母のような存在でもあったはず。

 何かに悩んで自殺するとしても、その姉をまきこもうなんて思うだろうか?


 ワレスは小間使いを見かけて声をかけた。


「屋敷のことにくわしいのは誰だ?」

「家令のヘンリーさまです」

「では、その男のもとへつれていってくれ」


 案内させて、家令の仕事部屋へ行く。家令はキャロンの祖父母、両親と子爵家三代に仕えた忠義者である。


「あんたの大事な令嬢と少年子爵は誰かに毒を飲まされたんだ。犯人をつきとめてほしいだろう?」

「もちろんです」

「では、正直に答えてほしい。ドルード子爵家の財産はどうなってる? 生活に困っているか? それとも裕福?」

「まあ、そのあいだでしょうか」

「つまり、贅沢ざんまいはできないが、貴族らしく暮らすには困らない」

「さようです。小さいながらに領地がございますから」

「もしもだが、令嬢と子爵に何かあれば、その財産は誰のものに?」

「ご従兄弟のオランデルさまのものになりますな」

「婚約者のグランドンではないのか?」

「違います。まだ正式な婚儀の前ですので」


 まあ、ここまでは想定内だ。

 だが、ほんとに知りたいのは次の質問の答えだ。


「レミはグランドンとは仲がよかったのか?」


 家令は思慮深げなおもてでワレスを見たあと、嘆息した。


「あまりよいとは言えなかったでしょうな。グランドンさまはたいそうよいかたなのですが、レミさまはなぜか毛嫌いされていまして。母上のようなキャロンさまが他家へ嫁がれることが悲しかったのでしょう」


 では、やはり、姉たちの結婚にあてつけて自殺?


 それとも二人が死ねば子爵家の財産や領地を自分のものにできるという従兄弟か?


 だが、それなら姉弟を二人ともやることが必須だ。レミが死ねば、財産はキャロンのものになる。キャロンがレミのもとへかけつけていなければ、いっしょに毒を吸いはしなかったはずだ。


 そこまで考えて、ワレスはひらめいた


(そういうことか! もしかして、毒は——)


 その疑問をヘンリーに問いただす。


「あの噴水の演出、もちろん、事前に試験はしたんだろう?」

「はい。何度も試しました。昨日ももう一度、確認いたしましたよ。キャロンさまやグランドンさま、レミさまも見物されまして」


「そのとき、変わったことはなかったか?」

「さようですね。とくにはございませんが、レミさまが不服を言っておられましたね」


「どんな?」

「あの中庭はレミさまのお気に入りの場所なのです。いつも、噴水近くの木のもとで本を読まれるのですよ。けれど、噴水を高くすると、こずえから水滴が落ちてきて読書ができないと」


「ちなみに、この家に毒物を保管してなかったか?」

「古いものなら、ございます。先々代の子爵さまが、領内の熊を退治するときに使われました残りが」

「どこに?」

「お待ちくださいませ」


 毒は家令の仕事部屋のなかにあった。壁の一部が埋没して棚になっている。その扉の鍵をあけて、家令はおどろきの声をあげた。


「ない! 毒がありません!」

「やっぱりね。わかったよ」


 家令は毒の棚の鍵を、室内の机のひきだしにいれていた。レミなら盗めなくもない。いや、レミ以外の家族にも。


 中庭に出ると、ジョスリーヌが待ちくだびれて、すっかりむくれている。


「ワレス。まだなの? わたくし、もう帰るから!」

「待ってくれ。あと五分《5ミール》」

「どうして?」

「五分で事件を解決させるからだよ」


 とたんに、ジョスリーヌの目が輝いた。

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