金髪はお好き?3
調査の結果をオリヴィエに報告すると、彼は落胆の表情を見せた。
「そうか。偽物か……」
「別に若くて美人なんだから、本物のブロンドでなくてもいいじゃないか。気になるならプロポーズしろよ」
すると、オリヴィエは物思いにふける目つきで昔語りを始める。
「私がブロンドを好きなのは、たぶん、初恋のあの人のせいだろう。もう二十年も前の話だ。子どものころ、となりの屋敷に女性が住んでいた。子ども部屋の窓から見ると、ちょうどむこうにも窓があり、そこにあの人はいた。陽光に輝く金髪がなんとも美しくてね。あっちは大人。私は六つかそこらだから、まったく相手にされてるはずもないが、目があえば微笑んでくれた。いつもさみしそうな顔をしていて、それが子ども心に気になったものだ」
なぜ、いきなり他人の恋話を聞かされなければならないのか。ワレスは世の不条理を味わっていたのだが、とつぜん、話は思いもよらないほうにころがった。
「だが、その窓から、ある日とつぜん、その人が消えたのだ。何日待っても窓辺に現れなくなった。私は心配になって、両親にその話をした。が、信じてもらえないんだ。それどころか、となりは長らく空き家だと聞かされた。では、私の見たものはなんだったのだろう? あの人のことが今になっても忘れられない」
空き家に女? だとしたら、その女はほんとに生きた人間だったのか? 子どもが見た幻か、妄想のたぐい? それとも霊的な何か?
「その屋敷、今はどうなってるんだ?」
「サジャン子爵の一家が住んでいるな」
「サジャン子爵」
「うちの親類すじだ。その関係で、大人になってから例の部屋も見せてもらったが、当時、女性がそこにいた証拠は何も残っていなかった」
サジャン子爵……なんだろう。つい最近、その名前をどこかで聞いた。
いったい、どこでだったろうか?
「サジャン子爵家。その屋敷へ行ってみたい」
「かまわないが」
隣家なので徒歩でも行ける距離だが、馬に乗って移動した。
屋敷に入ると、ワレスはまた一人でうろつきまわる。二十年前のことを知っていそうな年かさの召使いを探した。台所で芋の皮をむいている老婆を見つける。あまりにも高齢なので、ワレスは自分の美貌が力を発揮してくれるのか案じた。が、やはり効力はあった。
「こんにちは。二十年前、この屋敷に金髪の女性が住んでいませんでしたか?」
「ああ、はいはい。セフィネさまね。奥さまは決して誰にも言うなと言ってたけど」
「どうして?」
「嫁ぎさきから出戻ってきなさったんだよ。旦那さまに不貞を疑われてね。おかわいそうに、生んだばかりのお嬢さまとも引き離されて。傷心でね。そのままお亡くなりに」
思いだした。
サジャン子爵。カロルの母の実家の名だ。だから、聞きおぼえがあったのだ。
「わかった。そういうことか。ありがとう」
手にキスをして礼を言う。老女は頬を赤くした。




