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「僕らが生きてる世界は猫が死んだ世界の続きなんだよ」
宇佐義がお茶を飲む。
その話を聞いて、首を傾げて愛想笑いをする女、冨士山ニコルンであった。
「ニャンだ、ちみは?」と猫耳をつけて宇佐義に猫パンチをする。
「その猫じゃないよ」
宇佐義は冨士山ニコルンがジャレつくのを面倒くさそうにあしらっていた。
「猫パンチ!」と冨士山ニコルンが宇佐義の顔を叩こうとする。
それを猫じゃらしでかわしながら、お茶を飲む宇佐義。
「シュレディンガーの猫ね」
賢くなったあかりんが答える。
「猫が死んだもう一つの世界がパラレルワールドなんでしょ」
「そうじゃないよ。ぼくらは何一つ別の世界で過ごしてないよ」
宇佐義はお茶を飲む。
「それってどういうこと?」
「つまりこの世界は猫が死ななかった世界なんだよ」
「だからそれがパラレルワールドなんでしょ」
「違う、違う」
「じゃあ、何、この世界は昨日の続きのまんまなわけ?」
「そう言うことだ」
宇佐義はさらにお茶を飲む。
「フフフフフ」とあかりんが苦笑い。
「ねえ、何!」と突然、冨士山ニコルンが大声を出した。
「二人が何、話してるのか、全然、分かんない」
冨士山ニコルンが怒リ出す。
「そんなことで私が騙されると思ったの」
あかりんが不適に笑う。
「ねえ、何」と冨士山ニコルンはあかりんを見つめる。
「そんなキャラじゃ無かったでしょ」
「あかりんは賢くなったのよ」
「そうだね、僕らが君の脳にいっぱい知識をインストールしたからね」
「もしこの世界が昨日の続きの今日なら、あなたがお金持ちになんかなってないんじゃない」
あかりんは勝ち誇った顔。
「あかりんの灰色の脳みそが赤味噌になったわ」
宇佐義はビビった顔でお茶を飲む。
そして顔をしかめた。
「どう、私が入れた赤だし入りの味噌汁わ」
「永谷園のひるげだね」
「あなたはタイムリープすることを知っていて、未来の競馬新聞を手に競馬場に出かけた」
あかりんはパイプをくわえてる。
「そう、あなたはズルをした」
宇佐義が思わず湯飲みをおとす。
「そしてあなたはとんでもないお金持ちになった」
「それは違うね。僕には未来が見えるんだ。超能力者なんだよ」
「じゃあ、これは何?」
あかりんが宇佐義のズボンのポケットから何かを取りだした。
「これが動かぬ証拠、競馬新聞よ」
「で、それがどうだと言うんだい。僕はただ普通に馬券を買って全てのレースで3連単を当て続けた。ただそれだけのことだ」
「そのことが昨日の続きの今日じゃない証拠よ」
「なるほど。確かに時間を遡って過去に戻って馬券を買ったかもしれない。でもそれは同じ世界で行き来しただけじゃないのかな」
「うっ!確かに……………………」
あかりんの表情が曇る。
「それだけじゃパラレルワールドを証明してはいないよ」
「なるほど……………………」
あかりんのくわえたパイプが吹き戻しに変わっていた。
「ああ、モォー!」
冨士山ニコルンが叫んだ。
「一体、なんの話をしてるの!全然わかんなーい」
「君はバカなのか!」
宇佐義が冨士山ニコルンを指差して言った。
「バカじゃ無いモン」
「エヴェレットの多世界解釈と言えば分かるのか?」
宇佐義は不思議なモノを見る目で言う。
「エヴァンゲリオン?」
冨士山ニコルンが聞き返す。
「あんた!バカ!」とアスカの真似をするあかりん。
「モォー!バカバカ言わないでよぉー!」
冨士山ニコルンが頭を抱えてる。
「量子力学をかじってれば簡単な話じゃないの」
「みんな、みんな、大嫌い!」
冨士山はブツブツ呟いている。
「ちなみに『バイオレット・エバー・ガーデン』でもないから!ね」
あかりんが付け加える。
「私は泣かない。私は自分で考えるの」
「元々知識が無いんだから、考えても無駄よ」
あかりんが言い放つ。
「うるさい!うるさい!うるさい!」
冨士山ニコルンが走って逃げ出した。
私に量子力学なんか解るわけないじゃん。
ズルいわよ。
私はインストールされてないんだから。
学校の勉強みたいの解るわけないでしょ。
モデルに学力なんて必要ないしぃー。
毎日面白おかしく生きて何が悪いのよ。
あんたたちなんか、せいぜい優等生止まりじゃ無いの。
冨士山ニコルンは一人になると寂しくなった。
「何よ。ずっと私、宇佐義さんに寄生してたのにさ」
冨士山ニコルンは小石を蹴った。
「寄生してたのに知識が伝染しないなんて、ズルくない」
冨士山ニコルンは気がつくと、海辺にやってきていた。
せっかく書いた文字が全部消えた。
やり直すのも面倒くさい。
どうせ小説家になろうは取り敢えずやめるつもり。
しばらく続きを書く。
ブログへ移行。
ブログは読みにくいので
ある程度たまったらアマゾンKDPで電子書籍として発売。
収益化をめざす。
収益化できないときは考え直す。