水翼聖魔龍
さて…どうしたものかしら?
料理人を手に入れることができたのは良かったのだけれど…
王都内に住んでいた、元国民共は死んでしまったでしょうね。
もっと、真綿で首を締めるをようにじわじわと追い詰めて、死を懇願させてから殺す予定だったのに。
…まあいいか。
別に、王都にいるだけじゃないものね!
国民は。
そうなれば、次にやるべきは兵站というものかしら?
早く捕まえてやらないと、獣は逃げてしまうもの。
なら、妖精のことは妖精に聞くのが早そうだわ。
「サク。早速で悪いのだけど、戦力になりそうな妖精について教えて。」
すると彼女は不思議そうな顔で私を見た。
「戦力?女王陛下は戦争を始めるの?」
その言葉を聞いて思わず笑ってしまう。
フフ、面白いこと言うのね。
「私が戦争を始めるんじゃないの。宣戦されたから、仕方なく戦争をしてあげるのよ」
あえて、強調して言葉を紡ぐ。
そうすると、サクは面倒くさげに答える。
「人間はいつの時代も愚かで、感情的で、自己中心的なのねー」
ええ、そうよ!
人間はそういうふうにできている。
だからいつの時代も変わらない。
どれだけ厳正に統治したとしても、人々は幸福を追求をし、その結果権力者に革命を起こそうとする。
全ての責任を権力者に押し付けて。
人間の真性は悪であるのだから。
だから、だからこそ、私が変えるの。
この国を!世界を!
この世に生きる、すべての人間に分からせてやるの!
そう、つまりこれは、この戦争は
「人間に対する、この世を害する獣に対して、他生物が行うべき復讐なの!」
すると、サクは圧巻というように首を縦に振りながら、うんうんと相槌を打つ。
「流石だわ!女王陛下!そうよ、人間を滅ぼせばいいのよ!そうすれば、もっとこの世界はキレイに輝くわ!」
「でしょう?だからこそ、私達にはもっと戦力が必要なの。」
ああ、扱いやすいこと。
「そういうことなら〜…ガサゴソガサゴソ…」
空中に魔法陣を描き、その中に手を入れる。
恐らく、《収納》の魔法で何かを探しているのだろう。
「……あ!あった!」
そういって、魔法陣の中から一つのスクロールを出し、魔力を込め始める。
「我らが祖たる、五代魔神に奉る。召喚《水翼聖魔龍》」
何かを唱えた瞬間、スクロールが燃え尽き、代わりに王都をのみ込むほど大きな魔法陣が展開され、光りを伴って回転し始める。
展開された魔法陣を確認しながら、サクが呟く。
「良かったわ!原初の水から貰ったスクロールを残しておいて。」
召喚と言っていたから、何かを呼び出すのは間違いないだろう。
しかし、コレは何だ?
蠢く魔力の渦が大気を揺らし、空には雲が掛かり始める。
明らかに異常だ。
…殺すとなると手がかかるわね。
魔法陣の光がより一層強くなり、ソレがこの世に生まれ落ちた。
「我が名は、五天龍が一柱。水皇天龍 水翼聖魔龍である。汝が望みを言え。さすれば、如何なる望みも叶えてやろう」
ふむ。
一歩、水翼聖魔龍の方に歩を進める。
「ほう、汝が我が召喚…」
「頭が高い」
茨を用いて、一撃顔に入れる。
龍が蹌踉めき、姿勢が崩れた瞬間に後数発入れようとする。
「ま、待ってくれ!いや待って下さい!」
「なに?図体が大きいだけのトカゲ風情が私に意見するの?」
茨を数本巻き付かせ、巨大茨を作り今度は人体で腹に当たる部分を攻撃しようとする。
しかし、巨大茨を見た途端、龍は見てわかるほど血相を変えて言った。
「こ、降参致します!ですのでどうか、その恐ろしい武器をお静め下さい!」
龍は私に対して頭を垂れて蹲ったのだった。