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短編とかその他

振り返らずに逃げ続ける男

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/08/03



 俺は逃げている。


 家に帰るために。


 生きるために。


 安全な場所へ逃げ込むために。


 何の変哲もないこの道を一心不乱にかけて、逃げ続けている。


 背後からせまってくる存在をひしひしと感じる。


 あれに捕まってしまったら、きっと問答無用でこの命は終わってしまうだろう。


 そうはなりたくない。


 まだ、死にたくない。


 だからこそ、死に物狂いで逃げている。


 力尽きそうになっても、呼吸が途切れそうになっても。


 足を止める事だけはしてはいけない。


 理屈ではない。


 本能が訴えかけてくるのだ。


 止まったら、そこで終わる。


 そこで死ぬと。






 息が、酸素がほしい。


 休みが、体力がほしい。


 救いの手がほしい。


 この場に誰かいてくれれば、こんなにも孤独に頑張る事もなかっただろうに。


 けれど、不幸にもこの道を歩くのは、自分一人だけだった。


 これからも自分一人だけだろうから。


 自分一人でこれをなんとかしなければならないのだろう。


 奴の正体がわかれば、何か対策がとれるかもしれない。


 しかし、分かるなんてしてはいけないと思った。


 だって、本能が、背後にいるやつの危険性をこれでもかというほどつきつけてくる。


 認識は。


――何かが追いかけてくる。


 それでいいのだ。


 そのままでいいのだ。


 それ以上分かってしまってはいけない。


 正体を探っては、理解してはいけない。


 分かっている事実が、それ以上であってはいけない。


 何かがどうしてか、この道で俺を捕まえようとしている。


 分かっている事は、それだけでいいのだ。


 分かっている事実を、それ以上にしてはいけない。


 振り返って確かめてみれば、それの正体が分かるのだろうが。


――けれど、決して振り返ってはいけない。


 分かってしまう事が怖い。


 分からないから怖いけれど、分からないからまだ平静を保てている。


 分かってしまったら、それの形がおぞましさが、恐ろしさが、確定してしまうから。


 きっとその姿を見た瞬間、気が狂ってしまう。


 だから、ふりかえらずに逃げるのだ。


 分からない事で怖くあっても。


 怖いままで、ましなままで、まだとどめておくために。



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