7話 鎌鼬
見廻り。それは街の中を見廻り現れた下級の鬼を殺す仕事。下級の鬼はどこからともなく現れ、人を喰らい成長していく。
野放しにしていると力をつけていき厄介この上ない。
それに人の犠牲が多くなり、鬼全体の力も増す。百花組の仕事の中で二番目に大事なものだ。
「それじゃあ行くぞ」
厚井の号令のもと見廻りを始める。
普段は2人で別れて行動するが、初日なので全員で動く。たとえ鬼といっても下級の鬼しか現れないため、妖刀を持っていれば倒せる。
「それ便利だね」
物部太郎が光源を指して言う。
「ああこれかい。これは鬼火だよ」
「鬼火? 何で鬼ってついてるの?」
「鬼に殺された人間の憎悪の火っていう話だからさ。これがあるから安全に見廻りができるし、鬼を発見できる。ほらみろ」
そう言い厚井が指を刺す。
その先には黒い靄が蠢く。それは意思を持ったかのように動き何かを、呪うかのようなおぞましい音を立てる。
そしてその黒い靄は数匹の人型の化け物へと姿を変えた。
すぐさま甘露寺が刀を握り、いつでも殺せるように構える。
「あれが下級の鬼だ。下級は形もままならない。そこまで固くならなくても大丈夫だよ」
そうは言うが形もままならないからこそ恐ろしく見える。黒く蠢く人型は、人の目には恐ろしく映る。
たとえ訓練を積んだ隊士であろうとも。
「こ......これが......鬼!!」
津雲がポツリと漏らす。
津雲はまじまじと鬼を見たことがない。訓練を積もうと初めてみる鬼に体が震え言うことを聞かない。
「まぁ。初めはそうなるさ。見てなさい」
厚井がそういうと甘露寺が動き出す。
「行きます」
甘露寺がそういうと刀を抜き放つ。普通だったらこんな距離で構えても届くはずがない。
「鎌鼬」
甘露寺の妖刀があるからこそできる抜刀術。たとえ離れている敵であろうと斬りつける事が出来る風の刃。
それが下級の鬼に襲いかかる。
その刃はスパッと言う音と共に下級の鬼の首を落とす。そして下級の鬼は、跡形もなく崩れ落ちて黒い霧となり天へと昇る。
「これが妖刀での鬼退治だ」
(すげーーーー!!)
声にこそ出さなかったが、太郎も津雲もそう思っていた。
今まで早寝早起きの生活だったため、夜更かしに慣れない太郎は眠かったのだが、今ので目を覚ます。
「甘露寺凄いな!!」
「ええ。ありがとうございます」
それから数時間のうち歩き回り鬼を探したが、一度も巡り会うこともなく見廻りは終えた。
「よしおしまいだ。こんな手順で見廻りは行う。何となくわかっただろうが、鬼は大して出ないから安心しろ。次は俺と篤人、広と太郎で見廻りをする。わかったね?」
「はい!」
3人が返事をする。
鬼を殺すところを見てやる気を削がれてもおかしくないはずだが、覇気のこもったいい返事だった。
びびっていた津雲篤人も今では恐れていない。
むしろ先輩甘露寺の妖刀を見て興奮していた。
(すげぇ!! 俺もこんな感じで鬼を倒してぇ)
そう津雲は考える。
妖怪と契約ができないことを忘れて。
読んでいただきありがとうございます。
次も読んでくれると嬉しいです。
ちょっと甘露寺の口調が前おかしかったなぁって......