49話 ひとり
50pv記念です。
太郎たちが上級の鬼討伐したのちに、カエデ隊も中級下級の討伐、周囲の探索を終えた。やはり、鬼討伐の後処理や、事後調査などは慣れたもので、同じ百花組隊長の太郎としては勉強になるものであった。
「上級の鬼が現れるとは思わなかったけど、この程度のやつでよかったわね。あなたたちは私たちよりも先にいたでしょ?この鬼どうだった?」
「確かに、中級の鬼よりは間違いなく強いですが、隊長たちであれば間違い無く倒せる程度でした。隊長の妖刀がやられたのも、人間の姿を使った不意打ちによるものでした」
五十嵐の問いに、カエデ隊のものが答える。通常、隊長と上級の鬼が戦い、隊長が勝つのは難しい。それは、鬼と人間の傷つき方や再生速度の差などもあるが、単純に筋力差などが原因に挙げられる。そんな、上級の鬼が不意打ち以外でこちらに大した被害を出していない。
「それでも上級の鬼ではあるのよね。それをあんなに容易く倒すなんてね。連れてきた甲斐があったわね」
戦闘を終えて、少年の周りを犬とぐるぐる走り回っている太郎を眺める。太郎と少年と犬......。
五十嵐は少し間を空けてもう一度目の前にいるものに思いを馳せる。太郎と少年そして犬がいる。
「太郎!! それ!妖怪じゃない!」
「うん? 妖怪ってこの犬がか?」
鬼にとどめを刺した犬がただの犬とは考えずらいものであるが、どこからどう見ても犬である。それを差して五十嵐は妖怪と呼んだ。
「なぁ? これ妖怪なのか?」
「知らない。それたまに村に来てた犬だよ。俺餌あげてたし」
「だってよ?」
太郎が少年に聞くが帰ってきたのは知らないということを如実に表した反応だけである。それをみて、五十嵐が呆れた反応をする。
「この山にいる妖怪は送り犬っていう犬の姿をした妖怪なのよ。というか、その少年に懐いているみたいだけど、どうするのよ?だいぶ危険な妖怪のようだけど?」
「そうか。ちょうどいいな! 百花組は妖刀っていうのが必要なんだろ?」
太郎が能天気なことを言っているが、送り犬は転ばした相手の魂を削る妖怪である。相手の程度にはよるが、下等な鬼などであれば一撃である。それを踏まえて考えると危険なことがわかる。それに、妖刀契約が認められるためには、見習いを終える必要がある。
「はぁ、あなたってそれなりに強いのに、どうも抜けているみたいね」
「そうか? 良いこと思いついたと思ったんだけどな」
「良い?危険な妖怪だし、この子の契約はまだ、規則で認められないのよ」
百花組の隊長というだけはある。昨今では妖怪に対する危機感が減少しているものも多いが、妖怪への脅威も正しく把握している。それに規則を守る様は見事である。
「そうかぁ。なぁ、お前はどう思う?」
太郎が少年に問う。しかし、少年は何やら思い詰めた様子で返答までに間があった。
「......知らない。てか、俺のことは千冬って呼んで、そう呼ばれてたから」
少し淡白な喋り方の少年の声に、じんわりと悲しみの色が混じる。
今回の鬼の襲撃により、村は壊滅。生き残りも見当たらない。五十嵐と太郎は被害者でないため、先のことを考えているが、被害者である少年は、少し落ち着いたことで冷静になったのであろう。2人と比べて酷く落ち込んだ様子である。
これは、百花組をやっていれば、珍しい光景ではないが、太郎はここまで悲惨なものを見たことがなかった。それに、戦いに意識が入っていたため、千冬の感情にまで気をやる余裕はなかった。
少年がたった1人で生き残ったのである。残されたものは名前のみ。太郎にも、おっかぁが消えて1人残されたという共通点があるが、差は計り知れない。
「なぁ。やっぱり仲間にならないか? 俺も1人になったのをきっかけに村から出たんだけどさ。おっかぁを探す中で色々知ったぞ。だから、千冬も一緒にここから出よう」
「仲間って鬼を倒すってこと?」
「そうだ! 百花組に入って学んだんだ。鬼のことや、鬼の倒し方とかな。それでな。見廻ってやつをやって人を守ったりしたんだぞ! 良いだろ!」
太郎の目が爛々と輝いていた。差は計り知れないとはいえ、境遇は近しいものがある。それを千冬も感じ取っていた。それに、千冬は1人で村に住むほど強く無い。どのみち生きるためには村から出る必要があった。
村を奪われ嘆くことしかできない弱さ。1人では生きていけない弱さ。あまりに千冬は弱かった。弱さと直面したことで、さらに気分が落ち込む。しかし、年齢を考えたら、だいぶ大人びたものである。
「あぁぁぁぁぁーーーー!! もうやだぁぁ!!!! 強くなりてー!!!!!」
大きな声をあげて、自分の弱さを払いのける。生きていくためには強くなるしかないのである。千冬は吠えて吠えて吠えた。それに呼応するように、犬も吠える。かなりの時間を1人と一匹は吠え続けた。しかし、それは、悲しみと決別するのには短い時間であった。
「ふぅ......。今の忘れて。弱い俺じゃ1人じゃ生きてけないし、ついてくよ。でも、この犬も連れてきたいな。名前と一緒で村の思い出なんだ」
「良いぞ!」
危険な妖怪である。だが、太郎にとっては知ったことではない。問題は、五十嵐である。
「なによ?そんなにこっち見て」
問題となる五十嵐は、少年の視線を感じたのであろう。少し鬱陶しそうにしながら口を開ける。
「良い?私は何も見てないわ。そもそも、そこの太郎が本当に百花組かなんてわからないもの。そんな存在のことまで関与しないわ。まぁ、報告はしちゃうけどね!」
五十嵐の最大限の譲歩である。規則を守る必要のある隊長としては多少問題のある行為であるが、それでも、方便を使い自分を納得させる。
そもそも、五十嵐が知らない人間が隊長をやっているという話を信じる方が難しい。この程度、いくらでも誤魔化しが効く。
「ありがとな。五十嵐隊長」
「ふん。あんたのためじゃないし、その少年のためでもないから、お礼なんて不要よ」
そういうと五十嵐はカエデ隊の人間に声をかけ、下山の準備を行う。心なしか五十嵐の顔は赤く見えた。
「それじゃ帰るわよ!」
「はい!」
カエデ隊の声が山に響く。統率の取れた良い声である。
「何やってるの? あんたたちも行くわよ」
「はい!」
太郎と千冬は顔を見合わせカエデ隊の返事を真似した。
改稿したいなって思ってるので、よほどのことがない限り、次回の更新は間が開くかもです。




