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妖刀と鬼と......  作者: 上石うらた
二章
52/53

48話 老人と犬

先週の土曜50pv記念です。

 村を飛び出し少し進んだ場所で、五十嵐碧の動きが一瞬止まる。


 五十嵐碧は刀に触れ、歯を強く噛み締めた。


「チッ......。化け狸がやられたわ」

「化け狸って俺と戦ったやつか? 結構強かったのにやられちゃったのか?」


 化け狸は太郎の力試しの際に使用された五十嵐の妖刀である。能力自体は狸が五十嵐に変化するだけのものである。しかし、複数体生み出すことが可能であり、五十嵐同士の連携は見事なものである。


「そうよ。やられたのは一体だけだけど、状況がわからない分なんとも言えないわね。急ぐわよ」

「わかった」


 一段と空気が締まる。五十嵐碧は顔など様子には一切出していないが、顕現型の妖刀を複数回それも長時間使用している。そのため、体力的にはかなり無理しているはずである。


 そんな五十嵐を先頭に走る。化け狸との繋がりがあるため、迷うことなく一直線で鬼の元へと向かう。


 五十嵐の速度が落ちていることもあり、誰1人遅れることもなく、鬼の元へと辿り着く。激しい戦闘があったのであろう。草木が倒れて場所がひらけていた。



「状況は!?」

「五十嵐隊長!!犠牲者は無し。敵は上級1匹、中級3匹下級4匹、化け狸を中心に上級は包囲しております!」


 五十嵐の登場にカエデ隊の空気が弛緩する。そして、五十嵐も犠牲者がいないと聞き、緊張の糸が一瞬緩んだ。


「緩いなぁぁぁ!!!」


 鬼が叫び上げると化け狸へと飛びかかる。一瞬の気の緩みと弱体があったとは言え、化け狸を討ち取り、上級の鬼は包囲網を抜けた。


「逃がさないぞ?」


 しかし、鬼の向かった先には太郎がいた。鬼の出る場所を本能的に察知したのであろう。飛び出た鬼の腕を掴み、肩を入れ、上半身を捻らせて、地面へと叩きつける。鬼を叩きつけた太郎には鱗が浮かんでいた。


「なんだ貴様は!?」

「お前こそなんだ?本当に鬼なのか?」


 太郎が疑問に思うのも無理がない。鬼の姿は人間と見比べてもほとんど変わらない。人間との差は鬼のツノがあるのみである。 


「鬼に決まっておろう!!」


 鬼が声を上げて力を入れる。しかし、龍化を行った太郎の手から抜け出すことはできない。


 鬼は抜け出せないことを悟ると、すぐさま腕を切り落とす。その判断力は見事なものである。


「太郎。確かにやるわね。上級の鬼が一方的にやられてるわ」


 下級、中級の鬼退治の指示を隊員に出し終えた五十嵐は、多少弱っているとはいえ、上級の鬼をも圧倒する太郎に感嘆の声を上げる。それと同時に太郎に倒されなかった自分の妖刀を誇る。


「くそがぁぁぁ!!」


 自ら腕を切断した鬼は太郎との力の差に打ちひしがれていた。一般体型のこの鬼では万全であったとしても、太郎に勝てる要素がないのである。力、速度、体力その全てを太郎が上回っていた。さらに冷静さを失った鬼が勝てるはずもない。


「こいつ倒してもいいよな?」

「まっ...待ってくれ......。ハァハァハァ......もう...。ハァ......悪いことは......しない」


 勝ちは諦めた。だが、鬼はこの場を切り抜けることは諦めていない。そんな鬼の作戦は功を奏す。


 太郎は市場での一件により、鬼を殺す覚悟は決めていた。だが、鬼にも善性はあるのではないか。長い目で見る価値があるのではないかと考えが揺れ動いていたのである。それが判断を鈍らせた。


「ばぁぁぁぁか!!」


 鬼は走り出す。しかし、太郎から逃げ出すことなど不可能である。一瞬の隙をついたものの意味はない......はずであった。


 鬼の進路に少年がいた。状況を冷静に判断し、不利であることを悟った鬼は太郎に投げつけられてからただ一つのことを狙っていた。


 そう。狙いはただ一つ。非戦力である村にいた少年である。


 少年は五十嵐の元から離れ鬼へと接近していた。怨みが先行していたのであろう。だがそれだけでこのような行為をしたのではい。鬼の姿である。鬼の姿があまりにも人間に近いため、危険を正しく認識できていなかったのである。


 五十嵐は化け狸の解放に体力を奪われて、間に合いそうになく、他の隊員も下級、中級の鬼の相手をしていて動ける様子ではない。


 鬼は少年の憎悪をも利用して、この場を逃れようとしていた。作戦勝ちである。


「丸まれ!!」


 だが、一つ考慮に入れていなかったことがある。この山にいる妖怪の存在である。


 少年はしわがれた声の指示に従い、地面に腕をつき背を丸め込む。


「なっ!!」


 勢いのままに首を狙っていた鬼は少年が聞いた声と同じ声を聞いても行動を改めることができない。そのまま突っ込み少年に足を奪われた。


「ワン!!!」


 少年に足を奪われ、転びかけた鬼を突如現れた犬が背中を小突く。ギリギリで踏みとどまっていた鬼は耐えきれず転んだ。


 転んでしまったのである。転んだ鬼の首から現れた黒い塊を犬は咥え、噛みちぎった。


「くそがぁぁぉ!!!」


 黒い塊を抜かれた鬼は形を維持できなくなり、黒い靄になって消えた。


「大丈夫か?」


 太郎が少年に手を貸す。太郎の速度であれば、鬼が少年に手を出す前に、鬼を殺すことができていたが、太郎も少年と一緒に丸まっていた。


「大丈夫。てか、なんであんたも丸まったんだよ?」

「あぁ。知ってる声だったからな!」


 丸まれと指示したものは太郎が先ほど遭遇した老人である。


 それの答え合わせかのように、木々の向こうから老人が現れた。老人も戦闘を見ていたのであろう。太郎の強さには驚かされていた。


「どうやら余計なお世話みたいだったようじゃな」

「いや、助かったぞ!」



 太郎とて上級の鬼をあの一瞬で倒せたかは定かではない。また、少年を守ることができたとしても、時間がかかった可能性も高い。そのため、老人の関与は必要なものだった。


 老人は元気な様子な太郎と、少年を見るとまた木々の向こうへと消えていく。


 そんな様子を見て少年は、誰だあれ?と呟いていた。



これで10万文字変えたはず......。

節目の話数のタイトルがすごいヘミングウェイ

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