45話 駄目
百花組の隊長は皆等しく強い。そこに例外はない。新しく隊長として据えられた井上光忠と物部太郎に関しては、強さのみで据えられている。
「よーし。百花組の詰所まで後少しね!!」
「そうですね。五十嵐隊長」
五十嵐碧。女性だけで構成された唯一の隊。カエデ隊の隊長である。川路双姉、川路双妹、莉子なども皆カエデ隊の隊員である。
百花組の詰所に呼び寄せられたため、太郎たちとは異なり帰路である。そんな中、部下のものから声がかかる。
「隊長。あの山に、鬼の気配があります」
「犬鳴き山ね......。珍しいわね」
犬鳴山は、人間の暮らす村がある。百花組としても人間のいる場所であるため、鬼の出現頻度などの確認を行ったことがあるが、平生であれば、ほとんど鬼がでない場所である。
そのうえ、犬鳴山には妖怪がいる。妖怪としての格は高いわけではないが、下等な存在であれば人間、鬼関わらず、確殺できる力を持っている。
「どうしましょうか?」
「行くわ。万が一を考えて行動するのよ」
至って冷静に対応する。五十嵐碧は自分にも他人にも厳しく、それでいて優しい。人間に脅威が迫る可能性があれば、それを避けるように努める。
皆が、平生と違う状況に気を締めながらか、動き始める。
そんな厳かな雰囲気の中、空気を壊すものがいた。
「なぁ? ここで何してるんだ?」
物部太郎である。ぬらりひょんと別れ、次の山を目指していた。ぬらりひょんに勧められた山である犬鳴山をである。
そんな、太郎を見て五十嵐は犬鳴山の子供かと考えた。
「犬鳴山の子? 今、あの山は危ないから近づかないでね」
「なんで危ないんだ?」
太郎は犬鳴山まで迷わずに来れたことを安堵しつつ尋ねる。
「そうねぇ...。鬼がいるのよ」
鬼がいる事実を伝えるまでの間で、話すかどうか思慮したが、保護すれば勝手な行動ができないだろう。そのように考え、五十嵐は太郎に鬼がいることを伝えた。
「そうか。なら行くぞ。俺、鬼倒す仕事してるんだ!」
「鬼を倒す仕事って、ごっこ遊びのことかしら?」
「違うぞ。百花組っていうのに入ってるんだ」
物部太郎の存在をカエデ隊の人間は知らない。百花組への帰還を命じられてはいるものの細かい事情は知らないのである。
「......? そうなの? 何か証明できるものはない?」
「うーん? 俺の今持っているものはこれで全部だぞ」
太郎はそういうと、ガサゴソと衣を全て地面に置く。
「ちょっと...服は脱がなくても大丈夫よ。確かに、百花組の通行手形を持っているところを見ると百花組のようね」
「ならいいだろ?」
「でも、あなたを連れてくことはできないわ。私が知らないということを考えると新人でしょ? 流石に連れてって死にましたじゃ寝覚めが悪いもの」
「五十嵐隊長。そろそろ」
五十嵐が太郎と話していると補佐のような役割をしている人間から声がかかる。
「そういうこと。じゃあね」
そういうと、カエデ隊の者は太郎を置いて山に向かう。
「よし。俺も行くか」
何事もなかったかのように、太郎もカエデ隊の後ろに平然とついていく。
カエデ隊も太郎を置いていくつもりであるため、だんだんと速度を上げるが太郎を振り切ることなどできるはずがない。
「しつこいわね。ついてきて勝手に死ぬ分には私は関係ないけど、これでも百花組の隊長格なの。みすみす死んでもらったら困るのよ」
「大丈夫だ! 俺戦えるぞ!」
太郎の話の通じなさに呆れてしまう。
「あなた達先に行って。すぐに追いつくから」
「なんだ。お前は行かないのか?」
太郎は急に止まった五十嵐碧の行動を不思議に感じ、尋ねる。
「お前じゃなくて、五十嵐碧。あなたが弱いのについてくるっていう状況が一番困るのよ。だから、試させてもらうわ」
妖刀解放ーーー化け狸
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「待たせたわね」
他のカエデ隊の人間と別れてすぐに合流する。流石に隊長なだけあった身体能力は飛び抜けているようであった。
「あの子はどうなったんですか?」
「知ってるでしょ?私の妖刀。きっと私と戦ってるわ」




