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妖刀と鬼と......  作者: 上石うらた
一章
15/53

津雲側


 津雲は仮面の集団2人を相手取っていた。


(太郎には4人ついてるのに、こっちは2人か。ありがたいんだか、悔しいんだかわからないな)


 なんて考えている間に距離が近づいている。


「おっと」


 仮面の者の拳を紙一重で避ける。避けると同時に相手の動きに合わせ距離を詰め、顎を撃ち抜く。しかし、力が足りないのか効いている様子が一切ない。


 訓練を積んでいる津雲は相手に自身の体術が通じることに安堵すると同時に一対一なら勝てる見込みがあることを認識する。


 しかしこれは一対一ではない。


 背後から蹴りが飛んでくる。咄嗟に刀を盾にして攻撃による衝撃を多少抑える。


 体が宙に浮く。津雲は軽やかに受け身を取ると即座に立ち上がる。


(打撃が効いている様子は一切なかった。ならば...!!)


 相手の拳が再度津雲を襲う。初めの一撃と寸分違わぬものであった。その向けられた拳に狙いを定め素早く刀を抜く。


「ハッ」


 しかし、手応えはない。勢いよく拳を打ち込んでいた場合、この抜刀を避けることなんてできるはずがない。つまり、最初からこの一撃を相手は当てるつもりはなかったという事である。


(つまりこれは釣りか)


 思わず釣られてしまった津雲は顔をすくめる。その直後に腹へと衝撃が走る。


「カハッ......」


 地面に膝がつく。


 刀で体を支えるのが精一杯になるほどの衝撃であった。暫く足掻いてみるも鳩尾に入ったダメージは抜けずに、体が動かない。


(お腹は気持ち悪いし、最悪な気分だよ)


 追撃が数発顔や横腹に加えられるが、避ける気力すら湧かない。せめてもの抵抗で急所は守り、反撃のチャンスを伺う。


 相手の動きは単調なもので、急所は狙ってはくるものの死に直結するような攻撃は飛んでこない。


 そのため守り抜くことぐらいはできた。それでも、殴られ続ければいつかは倒れる。


 長い長い時間痛ぶられ続けていた。反撃の隙を見出す余裕は津雲には余裕ない。



 冷たい汗が津雲の頬を伝う。山には冷たい風が吹いていた。


「ふーーーこのままじゃ死ぬな」


 突如津雲の纏う雰囲気が変化した。痛みが消えたわけではないが、一定の攻撃を喰らったあたりから感覚が麻痺していた。


「殴られすぎて逆に冷静になれたよ」


 距離を取ると納刀し構える。刀があるため津雲の方が間合いが広い。


「よーし! こい!!!」


 気合いを入れるために津雲は声を上げる。丹田に力を込め、向かってくる仮面の集団に向かい刀を抜く。


「妖刀解放ーー付喪!!」


 素早く敵の腰から肩へと斬りつける。普段なら到底出せる速度ではない。


 力も通常人間が出せる域を超えていた。軽々と1人目を切断すると、2人目に即座と移り、流れるかのように両腕を天高く上げ、まっすぐと振り下ろし、斬る。


 流れるかの如く一連の動きを見せた津雲は相手の状況を確かめる余裕すらすでにない。津雲は吸い込まれるように地面へと倒れ込んだ。



 斜めと縦に真っ二つに切れた仮面の人間は霧となって消える。そこには太郎のときと同様にお札の貼られた木片だけが残っていた。


 付喪の能力は至って単純であった。刀の能力を最大限にすることと、所有者の能力の底上げと補助である。


 しかし、津雲は自身の刀に住み着いている者がいるということも知らない。



 大天狗は疲れているだけなんて言葉で津雲の状態を表していたが、どう見ても疲れているだけなんかではなく、戦闘明けの津雲は随分とボロボロな姿をしていた。



読んでいただきありがとうございます。

次も読んでくれると嬉しいです。

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