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妖刀と鬼と......  作者: 上石うらた
一章
13/53

12話 後ろの

「ワシはあの二人の元へと行こうかのぅ」


 そう言い天狗はるんるんと歩き始めた。鼻歌まで歌うほどである。



▶︎▶︎▶︎



 光忠達のいる山のさらに上の峰の辺りに太郎達はいた。


「ここはどこだ?」


 津雲が呑気にそんなことを言っている。まだ、目を覚ましたばかりで状況を理解できていないのだろう。


「津雲起きたか?」


 太郎の切羽詰まった声が聞こえる。津雲が目を覚まし、体を起こすと太郎が津雲を庇う形で立っていた。


 津雲は起き上がり、落ち着いてあたりを見渡す。すると、周りには大小不揃いのお面を被った集団がいた。


 人間の形をしているがとても奇妙な雰囲気である。何か違和感を覚える程度には人間とはズレている。


「なんだ? あれ? 太郎の知り合いか?」

「いや。しらん!」


 天狗に触れられた後、太郎は少しの間意識を手放していた。そして、気づいた時には、このお面のものは既にいた。


 太郎の伸ばした手を掴み津雲は立ち上がる。


 すると集団は二人に向かい走り出す。そのお面の集団は津雲が起きるのを見計らっていたのだろう。


 ヒュンっと風を切る音が聞こえる。太郎の顔があった場所に拳が届く。



 仮面のもの達の速度は中々に速いが太郎には劣る。太郎の影を追うのがやっとである。


 しかし、体の使い方は我を忘れた太郎に近しく、かなり身軽である。これは通常の太郎以上だろう。


 太郎は勢いよく飛びかかってきた者の頭を掴み地面へと叩きつけようとするが、腕を足で固められる。


「ちょっと邪魔!!」


 地面へと叩きつけるのを諦め、即座に周りの木に敵を叩きつけた。剛力無双の筋力を持つ太郎であれば腕に人間の体重が乗っていても大した問題ではない。


 しかし、津雲はそうはいかない。


「津雲!!」


 太郎の声により敵には気づくものの、すでに懐に敵はいた。


 津雲の腹に重い一撃が加えられる。


「カッ...」


 津雲の体が宙を舞う。


 地面に倒れた津雲は起きあがろうとするが、腹に力が入らず苦戦する。



 太郎は慌てて津雲の元へと寄ろうとするが敵が道を塞ぐ。


 うまく分断された。この状況はまずい。


 太郎の推測では自身の身体能力の方が上である。しかし、敵の数が多すぎる。一対一の形をなんとか作り出し一人ずつ倒してしまいたいが、視界の端でチラチラと敵の影が映り集中ができない。


 それに津雲のことも気になる。


 津雲が生きていることは確認できたが、どの程度の損傷なのかがわからない。


 確認したいところだが、一瞬でも視線を津雲に向けたら狩られる。そう感じるほど敵は強い。


 人数差などにより、どうしても受け身になってしまう太郎は、相手の攻撃を避けつつ、顎を鼻を鳩尾を殴り反撃を行うが中々相手は倒れない。


 仮面の敵の攻撃を交わし反撃を放つ。こうした攻防に集中していると、視界の端で捉えていた影が突如消えた。


(どこだ...?)


 太郎は常に相手の一歩先の動きを予測して視線を動かしていた。


 それを相手は逆手に立ったのであろう。わざと、動きを止めることで一瞬ではあるが、一歩先を見る太郎に姿を見失わせた。


 太郎は無理矢理視線を切られたのである。


「カハッ...!!」



 突如腹部に激しい痛みが走る。


 一瞬ではあったが意識を消えたものを探すことに割いてしまった。それが良くなかった。


 長期戦においてこの一撃は重くのしかかる。太郎は追撃を避けるためと隙を見せないために木の上に飛び乗る。


「ふーー」


 息を整える。


 太郎はこんなにも劣勢な状況に陥ったことがない。呼吸をしたことで冷静さをなんとか取り戻す。木の上に乗ったことで視野的にも余裕ができた。


 津雲の方を見ると、なかなか良い勝負をしていた。


 相手は素手であるが津雲は刀を抜いている。相手と津雲の実力には差があるはずなのだが、刀を持つことでその差を埋めている。



「お主はなぜ武器を使わんのじゃ?」


 ザワッと背中のあたりに冷たいものを突き立てられた様な感覚を覚える。慌てて別の木に飛び乗るとそこにはあの天狗がいた。


読んでいただきありがとうございます。

次も読んでくれると嬉しいです。

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