9話 組員
いつもより短いです。
「入れ」
「はい!!」
扉を叩き、部屋に入る許可をいただく。あの異端の鬼が出てから数週間が経っていた。異端の鬼が出てからは大した変化もなく、見廻りの役目が無事終わった。
太郎と津雲共に、異例が続いたため、見廻りは、早々に切り上げられたのである。
戦闘後座り込んだ甘露寺は、特に命に別状もなく、すでに復帰している。
異端の鬼についても未だに情報がなく調査が進んでいないが、下級の鬼の中にもああいったものが存在することを考慮し、より見廻りが強化された。
太郎と津雲に関しては、無事見廻り組を乗り切ったことになった。そのため、今日、こうして呼び出されたのである。
「よし。見廻りも全うしたし、これで正式な百花組の組員だ」
この元の発言により見習いを脱した。太郎からすればあっという間のことではあったが、横にいる津雲は違う。
妖刀契約ができず、同期が次々と隊や補給などに所属している中、取り残された出遅れである。
太郎と津雲受けた言葉は同じとはいえど、重みが違った。
「本来はここでどこかの隊に所属してもらうことになるのだが、お前らは妖刀契約をしていない。だから、本来と順番は前後するが、一度妖怪の元へ行き契約ができるか試してこい」
「はい」
太郎はいつも通り元気な返事であったが、いつもと違い津雲の返事に覇気がない。それもそのはず、契約に失敗したのは一度ではないからだ。
だが、そんなことは元も知っていた。
「まぁ今回は、はじめて妖怪の元へ行く奴らの御守が主の任務だ。それの実績でどこかの隊に入れてやる」
パッと顔が明るくなる。妖怪との契約をしなくても隊員になれる。その可能性が現れたことで津雲の目に希望の色が宿る。
津雲は隊員になろうと躍起であるが、これは珍しいことではない。百花組の詰所は下級の鬼が出没しやすいところにあるため、本来一般人からすればこの町は危険である。
その危険な町を守る組員は英雄的な人気を博する。そのため多くの者が志願する人気のある仕事なのだ。だが、津雲はその者たちとは違い隊に入り寝物語のように鬼退治する人間になりたかった。そのため、隊員に固執していた。
寝物語の英雄のようになりたいという夢のためにも津雲は隊に希望を出してはいたが、今までは隊に入れるかも怪しく辛い日々を過ごすことしかできなかった。だが、ついに手が届くところまできたのだ。
「じゃあ、おいおい他の奴らも紹介する。御守頑張れよ」
「はい。失礼します」
2人は声を揃え、元の部屋を後にしようとする。
「おっと、太郎そういえば聞き忘れてた。お前正式加入ってことでいいか?」
「おっかぁが見つかるまでならいいぞ」
「そうか。よし! 行っていいぞ! その条件で上には飲み込ませる」
「ありがとな!」
今度こそ部屋を後にし、しばらく歩くと津雲が待っていた。話し合い中に顔の色がころころ変化した津雲は太郎を見つけると、にんまりとした表情になる。
それを見て太郎は口を開く。
「お前、顔が明るくなったり暗くなったり忙しいやつだな」
「うるさいなぁ。仕方ないだろう? 夢が叶いそうなんだから」
「お前面白いな」
太郎は夢など考えたことがなかった。そんな太郎の目には、津雲は面白いものに映った。
「ふん、わるいかよ」
「わるい? なにがだ?」
「お前めんどくさいやつだな!!」
2人の声は詰所内に楽しそうに響いた。
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