妖刀契約
節分に投稿したいということで投稿しました。
あとで書き直すかもです。
人を遥かに上回る生き物が多く存在した時代。その中でも秀でた生物がいた。その生物はとても強く、鬼と呼ばれ恐れられてきた。
鬼は個で強く、数多の人間が屠られてきた。人間は数が多く、協力することで、個の鬼に対抗することができていたのだが、ある時を境にその均衡が崩れた。
そう、鬼をまとめるものが現れたのである。鬼は個で優れた存在。まとめるものなどあり得なかった。それぞれがプライドが高く、どこかクセがある。そんな鬼をまとめることなんてできるはずがない。
それなのに現れてしまった。ただでさえ手の出せなかった鬼が、より凶悪な存在となってしまった。
もうどうしようもない。このままでは全ての生き物が鬼に支配されてしまう。そう考えられていた。
▶︎▶︎▶︎
何かから隠れているかのように、狭苦しく、薄暗い妖怪の巣窟に1人の男が乗り込む。
「なぁ。俺たちと同盟を組まないか?」
飄々とした雰囲気を纏った人間がそう言った。
そんな言葉を妖怪が受け付けるわけがなく、内心では、(人間と手を組む? そんなことはありえない。人間など、我々の生きる糧でしかない。ただ我々に良いようにされる道具でしかないのだ)と、ここの妖怪の主人も周りの妖怪も同じように思っていた。
なんなら、一人で乗り込んできたこの男をここで殺すのもありだなぁ。
そんなことを考える始末である。
だが、そんな考えが伝わったかのように、男は語りかける。
「おいおい。そんな態度でいいのかい?俺は知ってんだ。妖怪も危機的状況にあることを」
図星だった。
鬼が力をつける一方、時代が進むにつれ妖達は次第に弱くなっていた。鬼が強くなるにつれ、妖怪に構っている余裕が人間には無くなったのだ。
その結果妖怪は人間の心から消え弱くなっていった。
妖怪の強さは、人間からの恐怖などから来るのである。その人間の注目が鬼に行ってしまえば、妖怪が弱くなるのは必然だった。
そのため妖怪からしても鬼の存在は大きい。この申し出を断ることなんてできるはずがなかった。
「で、どうするんだい?」
断りようのない質問。
男からすれば、最初からわかっていたのだ。答えなどというものは...
「く......わかった同盟を組もう」
この瞬間、人間はまた妖怪を味方につけた。その契約は人間の有利な条件だった。妖怪が合意の上とはいえ人間の元で不自由に暮らすことになる。その上人間にデメリットはないのだから。
しかし、人間からしてみれば得しかない条件の同盟だが、妖怪側にも目論みがあった。人間と組み鬼を倒す。そして再び人間の恐怖の対象へと成り代わる。今ここで一人の男を倒すのは容易いが、こちらの方が得だ。そう考えたのである。
男が目的も済み帰るかというところで、ぼやく声がどこからか聞こえた。
(俺を出せばすぐに同盟なんて組めるのにな)
声はすれども姿はない。そこには人間の男が一人いるだけのはずだった。
あたりを見回せども他には何もいない。だが声はどこからか聞こえる。この聞こえる声こそ人間と妖怪の同盟の正体。
目的を達するか力尽きるまで、刀に妖怪を纏う。双方同意の上で結ばれる契約その名も妖刀契約と言う。
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