第一話 家に住む
突然、異世界に来てしまった二人だが、近くに住んでいるマラナさんの家で一泊することになった。
「あの、これどうぞ」
俺たちはリビングって言えばいいか、そこで椅子に座った。
すると、マラナさんが料理を出してきた。
お椀に何か味噌汁みたいな感じ、それとやっぱりご飯。あんまり日本とは変わらないのか。
「ありがとうございます。いただきます」
俺たちは料理を食べる。
食間はうん、悪くない。米の方も普通に美味しい。
「美味しいです。本当にありがとうございます」
俺は笑顔でマラナさんに言った。
娘も美味しそうに食べている。まぁ、小学生だから、食べ盛りなのかな。
「そうですか、それよりこれからどうするつもりですか?」
マラナさんはこちらの目を見ながら言ってきた。
「う~ん」
俺は考える。
確かに、この先日本に帰れないとなるとここで暮らすのだけど、家もないし、金もない。娘も居るから勉強も教えないと行けない。どうしたらいいんだ。
俺は頭をかかえる。
「あの、良かったら私の家で住みませんか?ある程度お金と仕事が決まったら出ていってもらって構わないので。それに娘さんも暗い夜の外で寝るより暖かい家の中の方がいいと思いますし」
マラナさんは二人に向かって言ってきた。
「え!いいんですか?」
俺は驚く、普通なら知らない人を家に入らせ、料理を振る舞い、挙げ句家に住みませんかって、ここの世界の人は優しすぎ。
「はい、構いませんよ。それに一人で暮らすと少し辛いんですよね。寂しくて」
マラナさんは目に涙を浮かべる。
俺はマラナさんに近づき、マラナさんの頭に手を置く。
「そうですよね。一人は辛いですよね。気持ち分かりますよ」
俺は優しくマラナさんに言った。
「ありがとうございます」
マラナさんは寄り添ってきた。
うぅ、女性に寄り添ったのって妻が居たときだから二年前くらいか。まだ、馴れねぇな。
「あ、ごめんなさい!急にくっついて嫌でしたよね。すみません」
マラナさんは俺から離れる。まぁ、気持ちは、・・・うん!分からん。
「いやいや、大丈夫ですよ。それよりお風呂入ってきてください。俺たちは今日はここで寝ますので。お風呂はマラナさんのあとで入りますので」
俺はマラナさんに向かって言った。
「あの、椅子で寝るつもりですか?」
マラナさんは俺に近づいてきた。
「は、はぁそうですよ。ベッドで一緒に寝るなんてダメですよ。それに知らない男は入れたらダメって言われなかったかい?お母さんに」
俺は立ち上がり、マラナさんの方を見る。
普通なら、一緒のベッドで寝るなんて、俺でも出来ないよ。
「いいんです!私は一緒に寝たいんです!ダメですか?」
マラナさんがこちらに涙目で見てきた。
うぅ、女性に涙を見せたくないな。
「わ、分かりました。一緒に寝ましょ」
俺は少し顔を赤くしてマラナさんに言った。
「パパ、マラナさんと一緒に寝るの?」
美憂が俺の方を向いて言ってきた。
「そうだよ」
俺は笑顔を見せる。
「やったー!」
美憂は急に喜んだ。
「嬉しそうだな。でも、今回の笑顔はいつも公園で遊んでいるときよりも笑顔だな」
俺はそう言い、窓の方に歩く。
これからマラナさんの家で住むのだが、やっぱ緊張する!知らない女性の家、手料理に一緒にベッド。ぐふふ、は!いやいや、ダメだ!何を考えているんだ。バカな考えは命取りだ。
「あの、地味さん?」
マラナさんが地味さんを呼んだ。
「ひゃい!」
声が裏返る。
「ひゃい?」
マラナさんがこちらを見る。
「はい!なんでしょう」
俺は顔を赤くしてマラナさんの方を見る。
「お風呂覗かないでくださいね」
マラナさんは俺にジト目で見ながらお風呂に向かって行った。
「いや、風呂は覗きません!」
俺は心の中でそう言った。
普通なら逮捕だからな!
「パパ、このお家暖かいね」
娘の美憂は嬉しそうにはしゃいでいる。
そういえば、妻が居たときもこうやってはしゃいでたな。
はぁ、未央。空から見持っててくれよ。俺たちを。
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