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ダブり集

間の悪い男

作者: 神村 律子

 えー、世の中には間の悪い男がおるものでして。


「真田、ビール追加!」


 新入社員の真田君は、新入社員歓迎会にも関わらず、こき使われておりました。


「はい、今すぐに」


 真田君、座敷を降りて店員さんを探し、


「すみません、生中お願いします」


「数は?」


 忙しいためか、店員さんの語気が荒いです。気の弱い真田君は、聞きそびれた事を言えず、


「三つで」


「ありがとうございます」


 途端にトーンが変わる店員さん。


 真田君はホッとしてトイレに行きました。


 ぼんやりしていた為に、ノックをしなかった真田君。


 ドアの向こうがすぐ個室のトイレだったため、中にいた女性に悲鳴を上げられました。


「きゃあああああ!」


「す、すみません!」


 鍵をかけない方が悪い気がしますが、臆病な真田君にそんな発想が浮かぶ事はありません。


 その上、勢い良くドアを閉めたため、その反動でドアが開き、再びご対面。


「何してるのよ!?」


 遂には女性にそばにあったトイレットペーパーを投げつけられてしまいました。


「ごめんなさい!」


 真田君は静かにドアを閉め、その場を立ち去りました。


「おらあ、真田、誰がビール3個頼めって言ったんだよ!?」


 いつも仕事で苛められている武田係長が顔を真っ赤にして絡んで来ました。


「ああ、す、すみません」


 取り敢えず謝ってしまう悪い癖がついてしまった真田君。




 そんな大騒ぎの中、歓迎会はお開きとなり、二次会へ突入です。


 多くの新入社員がうまい言い訳をして帰ってしまったのに、真田君はそれができず、武田係長に捕まって、カラオケに付き合う事になってしまいました。


「さ〜な〜だァ、お前歌え」


 係長はすでにヘベレケ状態で命じました。


「いえ、僕は歌はその・・・」


 躊躇する真田君をさっきトイレを「覗かれた」女性、10年先輩の「お局様」である市村さんが、


「何よう、覗きはするけど、歌は歌えないって言うわけェ?」


と大声で非難します。真田君はやむにやまれず、マイクを持ちました。


「じゃ、デュエットしましょ、さ〜なちゃん」


 市村さんがお酒の勢いも手伝ってか、迫って来ました。


「は、はい」


 ここでも断れない真田君でした。




 やがて歌と踊りで酔いが廻り始めた係長と市村さんの隙をつき、真田君はようやく脱出に成功しました。


 しかし、時刻は深夜2時。


 すでに電車もバスもありません。


 新入社員の安月給では、タクシーなんて無理です。


「どうしよう?」


 真田君は仕方なく、コンビニに向かいました。


 そこで始発まで時間を潰そうと思ったのです。


「おい」


 コンビニの前に屯している目つきの悪い連中の1人が、真田君に近づいて来ました。


「は、はい」


「火、貸してくれない?」


「ぼ、僕はタバコ吸わないので」


「ケッ、使えねえ奴」


 何で見ず知らずの奴にそこまで言われなければならないのか?


 真田君は、疲れてハイになったのか、突然切れてしまいました。


「オラオラ、てめえら、人が下手に出てりゃあ、付け上がりやがってよお!!」


 相手は10人以上いました。


 真田君はリミッターが振り切れてしまったのか、怯まずやってしまいました。 



 そして15分後。


「あんた、いくら何でもやり過ぎだよ。相手は小学生だぞ」


 警官に説教される真田君。


 確かにやり過ぎでした。


 3人骨折、5人打撲、4人鼻血。


「小学生だと思わなかったので」


「言い訳するな、いい大人が!」


 警官に怒鳴られ、シュンとしてしまった真田君に更に追い討ちが。


「巡査部長、この男のバッグの中から、こんなものが」


「む? サバイバルナイフじゃないか? これは銃刀法違反だな」


 そのナイフ、いたずらで武田係長が入れたものなのです。


 何故そんなものがあるのか、全くわからず混乱する真田君。


「そ、それはですねえ・・・」


 事情を説明しようとその警官に近づいた時、何かに足を取られ、豪快に転んでしまいました。


「うう」


 その途端、サバイバルナイフが警官の腕を切り、血が飛び散りました。


「貴様、抵抗するのか?」


「ち、違いますゥ!」


 そう言いながら、サバイバルナイフを手にしている真田君は、説得力の欠片もない状態です。


「ああ」


 警官が次々に駆けつけ、辺りは騒然として来ました。


「犯人は刃渡り二十五センチのサバイバルナイフを所持。警官の制止を振り切り、暴れている模様です」


 テレビの臨時ニュースにまで出てしまった真田君。




 すぐに誤解は解けましたが、会社は首になってしまいました。




 そして1ヶ月後。



「おーい、真田、生中追加!」


「はーい」


 再び同じ境遇の真田君が、居酒屋の中を走り回っておりました。


 歴史は繰り返す。


 怖い事です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラストがイマイチよくわかりませんでした。 真田くんは居酒屋に勤めることになったのでしょうか。 それともまた別の会社に新入社員として入社して、また新入社員歓迎コンパでパシリをさせられてるのでし…
2011/01/27 23:29 退会済み
管理
[一言] 毎度おなじみ、過去の作品をあさる人です。 この話を初めて読んだ時、初めの真田君と一番最後の真田君とは別人なのかなと思っていましたが、改めて読んでみるとどうやら同じ人のようでした。 いますね、…
[一言] 残念ながら筆者の狙いが、はっきりとわかりませんでした。 それにしても作品を書くペースがあまりに早いことに驚きました。絶対に面白い作品も書けると思うので頑張ってください。楽しみにしています。
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