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目無し
ぼーっとしてしたら出てきた思い付きのお話です。どこまで続くかは未定です。
様々な種族の人で賑わう街の中に一人の人間族の女性がいた。
色褪せた着物に腰まで垂れた長い黒髪。彼女の手には使い込まれた三味線が一本。
被っていた笠を逆さに置き、目を瞑ってただ三味線を奏でている。
傍らに置いてある杖は旅のモノか、あるいは身体を支えるためのモノか。
彼女の姿を見ても足を止めることもなく通り過ぎていく者ばかり。
時々笠に銭を入れる者もいた。それをくすねる者もいた。
しかし彼女は気にすることもなく演奏を続ける。
夕暮れ時
彼女は演奏を止め、銭を受け取り片付けた後に歩き出した。
杖を前方でカンカンと打ち歩く姿に誰もが注目し道を開ける。
普通でない光景に驚いてか、事情を察しての優しさか。
最近この街でよく見かけるようになった彼女を人々は「目無し」と呼んだ。
最近暑いのか寒いのかわからないです。