簡単な仕事
寒いですね。マジで。
セルシュの依頼を受けてから2週間が経った。
あれから色々やってはいるんだけど、敵さんが仕掛けてくることはなかった。焦らしプレイとか好きじゃないんだけど。
今日はセルシュの借金の返済日。朝からウチは彼の家に行き、軽く打ち合わせをしているところだ。
「はいこれ。今日の支払いのぶん。あと、これは追加で出せって言われた時用のお小遣いね。すぐに出しちゃダメよ。」
「はい。」
「解放された後は自由にしてていいよ。そこから先はウチの仕事だから。なんなら妹さんのお見舞いにでも行ってあげたら?」
「そうですね。何事も無ければそうしようと思います。」
そう言ってセルシュは渡されたお金を懐に仕舞う。またいつものように怒鳴られ殴られることを考えているのか、彼の表情はいつも以上に暗く曇っている。何度か深呼吸をすると、何かに抗うかのようにグッと椅子から立ち上がり、そのまま玄関へと向かっていく。それに付いて行く形で、ウチも席を立った。家から出て早々にセルシュとは別れ、各々のルートで目的地へと向かって行った。
とある路地裏の奥にて、数人の人間族の男とセルシュが返済のやり取りをしている光景があった。男たちは前回見た時と同じメンバーで来ており、幸いにも気配の察知に敏感な種族はいないようだ。
周囲の影から見守っていると、セルシュからお金を受け取った男たちは特に何もせずにその場を離れて行った。気付かれないように影の中を移動し尾行を開始する。
入り組んだ路地裏を何の警戒もなしに進んでくれるおかげで、いつもの仕事の何倍も楽に尾行ができる。そのまましばらく進むと、男たちは小さな建物へと入って行った。外から耳を澄ませてみても誰の声も聞こえず、ただ足音が遠ざかり扉が閉まる音だけが聞こえた。
入口の隙間から影の遣いを利用して中を覗いてみるが、ただの倉庫となっているようで別の部屋へとつながる扉は見えない。周囲の物を動かした形跡はないが、一か所だけ床板に隙間があった。
隙間をくぐらせて下へと進ませると広い空間に出た。先程の男たちを含めた十数人が視認できる。どうやらここには人間族しかいないようだ。
壁際にはいくつも箱が積まれており、乱暴に積まれたのか蓋がズレているものがある。中からは大量の貨幣が顔をのぞかせている。
空間の中央に置かれているテーブルには黙々と金勘定をする真面目そうな男が1人座っている。テーブルの上には勘定中の貨幣とこれから仕舞うであろう箱があり、そこへ尾行していた男がセルシュから受け取ったお金を雑に置く様子が見られた。
2人は何かを話しているようだが、壁に張り付かせた影の遣いからでは聞くことができない。小さな生物に擬態しているおかげで気付かれることはないが、移動に時間がかかるのが難点だ。
やっと聞こえる距離まで近づいたとき、ちょうどセルシュに関連した話をしているところだった。
「今回は殴らなかったんですね。」
「前回みたいな邪魔が入るかもってよ。それに、今回はちゃんと稼げたみたいだしな。理由がなければ俺だって殴らねえよ。」
「気分でやっていると思っていましたが違ったんですね。それにしても、いつまで彼から絞るんですかね。私からすればもう十分だと思いますが…。」
「さあな。ボスがまだやれって言うんだから、あと数年はやるんじゃねえか?」
「彼女に使うモノの費用を考えたら微量のプラスにしかならないんですがねぇ。」
彼女。話の流れから察するにセルシュの妹のことだろうか。やはり何か手を出していると見て間違いはないだろう。さて、それっぽいことも聞けたわけだし次に行こう。
影の遣いを勘定中の男に寄生させる。こいつらにとってはとても大事なお金を扱っているんだ。必ず指揮をとっている人物と接触するはず。見つけた後はそいつを同じように追って、決定的な証拠あるいはアジトがわかれば解決まで秒で終わる。さあさあ早く移動しちゃえ。
長時間誰かを追いかけるなんてこと面倒すぎて嫌だけど、やると決めた仕事だ。必ずこの天才アルスタちゃんが真実を突き止めて帰るからね☆
明けましておめでとうございます。年明けちゃいました。年内に終わるといいなって言ってたのはどこのどいつですかね。皆さんはお正月どのように過ごしていますか?私がやった正月らしいことと言えば、お餅食べて、ソシャゲのお正月イベントやったくらいですね。(その時間で書けばいいのにとか言わないで…。)新年いつもと変わらないスタートとなりましたが、本年もよろしくお願いします。皆さんが忘れて思い出してまた忘れた頃に出てくると思いますのでその時まで。ではまた次回。




