6話 DP
「スキルがすげえってのは十分わかった。で、このDPってのはなに?」
メニューの画面を一つ戻して、DP交換について聞く
「DPとはダンジョンポイントの略です」
「ダンジョンポイント?」
「ダンジョンと言ってもですね、無限に魔物を生み出せるわけではありません」
「ほうほう」
「魔物を生み出すにもダンジョンを運営するにも燃料が必要です。それがDP、ダンジョンポイントです」
「なるほど、ダンジョン用の燃料か。そのDPはどうやって手に入れるんだ?」
「DPの入手方法はいくつかあります、まず一つ目は自動加算です。24時間に一度、一つの部屋につき100のDPが加算されます」
「つまり5部屋あったら1日に500DP貰えるってこと?」
「そうなります。ちなみにこのリンクさせるための部屋はコアの保管場所としてプレゼントされますので最低でも1日に100DP貰えます」
1日100ポイントか、まるでゲームのログインボーナスだな
「2つ目は、ダンジョンの中で人々を殺すことです」
「ダンジョンの中で?ダンジョンは魔物を効率よく生み出すシステムって言ってなかったか?」
「魔物を効率よく生み出すために必要なことなのです。ダンジョン中で人々を殺すと、多くのダンジョンポイントを手に入れることが出来ます」
「ただ単に人を殺すんじゃなくてダンジョン中で殺してDPにした方がいいってことか」
「そうなります。そして3つ目が還元です」
「還元?」
「人々が持っている物や衣類、死体などを還元することでDPにすることができます」
「ダンジョンの中で人を殺してDPにして、持っている物や死体もDPにできるってことか」
「そうなります」
「…………DPってなんなんだ?」
「簡単に言えば、ダンジョン専用に作り変えられた魔力ですね」
「作り変えられ魔力?」
「人々がダンジョン内で死んだらコアが死体から出た魔力を吸収しDPに作り変えます。また物に込められている魔力を還元することでDPに作り変えられることができます」
「そうか…ならさ、人々がダンジョン中で魔法やスキルを使いまくったらDPが大量に入ってくるってこと?」
「残念ながらそれはできません。DPに作り変えられるのは死体から出た魔力と物に込められている魔力だけです」
さすがにそこまで簡単じゃないか
「残念…死体からでた魔力とか物に込められた魔力ってことは還元しないでダンジョン中に置いておけばいいんじゃないの?」
それならDPがずっと入ってくると思うんだけど
ミレイは少し黙り考えを巡らせている。俺でもわかるように考えているようだ
「そうですね…魔力というと、マスターにはわかりづらいかもしれませんね。死体から出た魔力は魂。物に込められてた魔力を価値。といえばわかりますか?」
「魂?あの輪廻転生とかの?」
「そうです。魂の概念はこの世界でもあります。フィアリスの人々は必ず魂を持っており、その魂がスキルや魔法、魔力を制御しています」
「その魂が無ければスキルや魔法は使えないってこと?」
「というよりも、そういった機能はオマケで本来は人格や心を作る物、なので魂が無かったらただの人形です。ホムンクスル生成で作り出すホムンクスル体のようなものです。ホムンクスル体は言わば魂が入っていないだけの入れ物ですから」
「…………リンクを繋げるってのはもしかして魂を移動させているのか?」
ミレイは少し驚いた顔を見せる
「よくわかりましたね。その通りです。ホムンクスル体の体に一時的に移動させて動かしているのがリンクを繋げている状態となります。魂をホムンクスル体に定着させることもできますがそれを行うとホムンクスル体の意味がなくなってしまうのでおススメできません」
「ふーん…コアと俺のどちらかが死ぬと両方死ぬのって魂を共有しているのか?」
今度は心底驚いた顔になる
「そうです、そうなります。これはダンジョンマスターとしてのスキルを使用するために仕方がないことなのです」
「共有してないとスキルが使えないってことか?」
「そうなってしまいます」
「そうか…まぁ兎も角、魂は1人につき一つだから一度しかDPにできないって事か?死体は?」
「そうなります。死体はどちらかというとゴミの分類ですね。DPに変化させているのはあくまでも魂ですので、肉体は関係ありません」
ゴミって…夢も希望もねーんだな
まぁ神様が皆殺しにしろって言う世界だし仕方ないか
「物に込められている魔力が価値ってのは?」
「こちらは物を還元するときに、分かりやすくするためですね」
「分かりやすく?」
「はい、価値が高ければ高いほうがDPに還元するときに高くなると思ってください」
「ほー、つまり、ただの服だとしてもちゃんとした職人が作ったようなものだと高いDPになるってことか?」
「それは…どうなのでしょう?」
「へ?」
「例えばその服に使われている糸や布が珍しいものや価値のあるもの、なんらかの魔法が込められている場合ならDPとして高くなりますが…職人が一般的な材料から技術だけで作ったとしても果たして高くなるかどうかわかりません」
「そうか…」
ブランド名代は果たして価値があるのかみたいなものか?…違うか
「魔法が込められているってそういうこともできるのか?」
「できます。代表的なものが7大魔法ってだけでその7大魔法からは様々な魔法が派生として生まれています。物に魔法を込める事が出来るのは、光魔法の派生の付与魔法と言う魔法です」
「付与魔法」
なんかカッコいい響き
「物に魔法を込めることのできる魔法ですね。切れ味を上げたり性質を変化させたりできます」
「火の魔法を剣に付与したら火の剣ができるみたいな感じか?」
「そうなります」
「おおー!ロマンだね〜そして魔法が付与されているものは価値が高いからDPも高いと?」
「そうなります」
「なるほどな…DP交換ってのはなんなんだ?」
「DP交換とはですね、DPを使って様々なものに交換する事が出来ます。例えば魔物ですね」
「生み出すんじゃなくて?」
ダンジョンは効率よく魔物を生み出すシステムっていってなかった?
「DPを使って生み出してますから」
「DPを使って魔物を生み出しているのか、そしてそのDPを手に入れるためにダンジョンの中で人々を殺すと」
「他にも道具や物に交換することができたり、ダンジョン中の罠や部屋に交換することもできます」
ダンジョンの中でコアも守るためにも、魔物に交換するにもすべてにおいてDPが必要と。そのためにも人々を殺す必要があるんだな
…………今までのダンジョンマスターはどうしていたんだか
メニュー画面が消える
「他に何か聞きたいことがありますか?」
「ん〜…今のところは特にないかな?」
「そうですか」
2人して並んで黙る、聞くことはないはずだ…今のところは
「では、はじめますか?」
ミレイはこちらを、ちらちら見ながら言う
「あー…そうだな。はじめるか!」
いろいろ変な気分を吹き飛ばすように大きな声でいう
「はい!」
ミレイは興奮しているようで目がキラキラしている
「「メニュー」」
俺とミレイの前にメニュー画面が表示される
「ダンジョン、スタートだ!」
「はい!」
ダンジョンをタップする。ダンジョンマスターとしての始まりだ!
…………あんまり大変じゃない場所でありますように