52話 後始末と近隣諸国
ハンモックに揺られ、架空を見つめる俺
場所は最初のダンジョン
神創樹に掘り返されたダンジョンを再び埋め直したのだ
そこで以前の様にハンモックに揺られている
ハンモックと木は神創樹の木の一部
桜と紅が創ってくれた
ありがたい
しかし、俺の思考はある事に支配されている
事の発端はアランベルト国王を殺した3日前まで遡る
飛行船…魔導船で逃げようとした国王達を殺し、死体を調べて回収
魔導船も勿体なかったので回収しアランベルト王国については全てが終わった
と言うのも俺はトップであり国の中枢である国王とその周り、貴族連中を殺せば全てが終わると思っていた
国のトップを殺せば国としての機能が止まる
後は煮るなり焼くなり思うがまま
そう思っていた
しかしだ、残念な事にある物を見つけてしまった
禁書庫にあった『アランベルト王国〜血の誓い〜』
小説かな?と思ったら家系図でした
つまりアランベルト国王関連の家系図
読んでみて驚いた、死体の数と人数が足りない
何度調べても足りない
そして気付いた
トップを殺す事、国の機能を停止させる事
これは戦争が身近な時代ではある意味、王道パターンだった
つまり戦争では最も理想的なやり方
このやり方で自分達の部下や仲間を代わりに置いて国を新たに統治、支配するのだ
だからそうされない為にも国によっては保険をかけておく
そしてアランベルト王国はその保険をかけていた
つまりアランベルト王国についてはまだ終わっていない。直ぐにどうこうなるという訳では無いが
俺はボックスから本を取り出し再び読み始める
えーと?足りないのは…
本には事細かに書いてあり、書いてある事で何と無くいない事が分かる
まず第一王女
つまりアランベルト国王の長女だな
お隣の国、リーンヘント王国の王族に嫁いだそうだ
国同士の関係を取り持ったり強固にする為の嫁ぎだろう
政略結婚と言うやつかな?純愛かも知れないけど
その次が第三王子
今現在は第一王女の所にいて、そこからリーンヘントの貴族学校に通っているそうだ
何故他国の王族が、他国の学校に?分からん
シスコンかな?母親一緒みたいだし
後は第五王子と第六王女
この二人はどうやら保険の保険だな
二人共平民として育てられている様子
護衛である両親役がアランベルト王国の何処かで育てているそうだ
場所については記載されていない
本当に王族がいなくなったら連れ戻したり、その子供を利用するのだろう。まぁ血さえあればいいのだから傀儡だろうな
ともあれ4人程足りないのだ
1番の問題は第一王女、絶対軍を向かわせてくるだろう
あー面倒
まぁ近隣諸国は十中八九、軍を向かわせてくるだろうから同じか
俺はそう考えながら伸びる
眠いなおい
すると
「マスター、此処に居ましたか」
ミレイさん登場
「どうしたの?」
俺はそれとなくミレイさんを見る
………血だらけなんですけど
「なんで血だらけ?」
「あ、これですか?王妃で遊んでました」
「………え?王妃生きてんの?!」
今日一番の驚き
「え?はい。ちなみに宰相と影武者の国王も生きています」
そう言ってミレイさんは不敵な笑みを浮かべる
へー、生きてたんだビックリ
まぁ…無事、では無いだろうな
たださ、なんで生首持ってんの?
俺はミレイさんが小脇に抱えている少女の生首をみる
確かあれは…本物の国王の近くで死んでたメイドの少女…だったかな?
子供の死体はあれだけだったから何と無く覚えている
「あ、これですか?」
ミレイさんが俺の視線に気付き、生首を差し出して来る
「これはですね…姉の首を引き千切ったので妹もやって置いた方がいいかな?と」
ん?
「まさか姉妹で同じスキルが使えるとは…まぁあれですね、姉よりも妹の方が優秀だったと言う事なんでしょうか?」
ミレイさんはそう言って首を傾げる
待ってなんの話?
ミレイさんはブツブツと何か言いながら熟考している
………んー…まぁあれだな、死体の話だろうしどうでもいいか
俺はミレイさんの話をボーッとしながら聞いてると
「あ、そうでした。話があるのでした」
そう言ってミレイさんは生首をボックスに仕舞う
やっぱどうでもいい話だったか
「で、話って?」
「はい、マスターの予想通りにですね。全ての門、それぞれに他国の者達が集まっております」
ミレイさんが話し始める
あーはいはい
少し前に作ったアランベルト王国を国境に沿ってグルっと囲っている高さ50m、幅10mの超巨大な壁
この壁にはそれぞれ、近隣諸国へ通じる道に大きな門を作っていた
その数は3つ
隣接している国が3つなので3つ
その門にはそれぞれに大勢の人が集まっているそうだ
ミレイさんが自身のスキルで確認してくれた。千里眼ってスキルだって
「それにしても意外ですね?」
「何が?」
「何故、門に集まるのでしょうか?」
ああ、それね
それは分からん。でもなんでかそう言う心理が働くんだよ
門が無いと人はあの手この手で壁を登ろうとする
しかし、門があると人は何故か門に集まりそこから入ろうとしてしまう
実に不思議だ
「まぁ深い理由は無いよ、何と無くってやつ?」
「そんなもんなのですか」
そう、そんなもん
「集まっている人はどんな感じ?」
「えっとですね…まず水の国、アトランティルートが冒険者を装った軍人。第14聖王国が光神教の戦士、司祭が数名。リーンヘントが商人に扮した軍人と本物の商人ですね」
ほーなるほど
これまた予想通り
と言うよりもこのアランベルト王国は放っといても勝手に滅びたんだよな
ん?言ってる意味が分からない?
長くなるけど、それでいいなら説明しよう
まず、最初にすっごい昔の設定
アランベルト王国は下水道を作ったおかげで他国から国として認められているってやつ
これは禁書庫にあった本によると、下水道の技術と効果を教える代わりに数十年と言う長期間での不可侵条約を結ぶと言う物だった
と言うのもこのアランベルト王国、立地が悪い
周りをアランベルト王国よりも大きな国よって囲まれているのだ
一つ目が水の国、アトランティルート
国土の80%以上が海に面しており、漁業と水の神を崇めている
「………水の神?水神教って事?」
「いえ、アトランティルートが崇めている水の神は言わば氏神です。強力な海の魔物ですね、人にとっては神も化け物も同じですから」
ほー、まぁ日本にもよくあった文化だな
土地神みたいなものか
2つ目が第14聖王国
「第14聖王国?」
「光神教が支配している国です。そう言った国が光神教は世界各地にありこの王国は14番目に支配された国ですね」
「宗教が国を支配?」
んな事出来る?あ、でも腐敗した宗教とか地球にもあったか
「事実上ですね。実権を握っているのはその国の国王や貴族ですが、その国王や貴族を宗教を利用し操るのが光神教のやり方です」
なるほど
そして3つ目がリーンヘント王国
近隣諸国では1番発展している農業大国であり、なんとダンジョンがあるそうだ
そう言えばダンジョンを回収するのも俺の仕事だったな
すっかり忘れてた
ハッハッハッハッ
………笑えねーぞ、おい
はぁ…ともあれアランベルト王国はその3国に囲まれており、古くより攻められ、戦に巻き込まれていた
アランベルト王国を手に入れる事が出来れば他の2国との戦争に有利になる
酷い時は1年の間に3回、別の戦争が起きた事もあったそうだ
だからこのままでは滅ぶと不可侵条約を結ぶ為に先代の国王が頑張ったそうだ
しかし、いつの時代も不可侵条約を結んだからと大人しくなる訳では無い
アトランティルートとかは特に
なんでもアトランティルートの崇める水の神は水を綺麗にしてくれるそうだ
それなのになんで人が綺麗にするんだと猛反発
まぁ他の2国を怖がって一応、不可侵条約を結んでくれた
しかしアトランティルートはその後直ぐにアランベルト王国内に複数のギルドを建設
アトランティルートは軍人を冒険者として送り込み、事ある毎に問題を起こしているそうだ
アランベルト王国で活動している冒険者、アトランティルートの軍人だろとアランベルト王国側は言えない
アトランティルート付近の白騎士は多くが買収されており、起こした事件も揉み消しているそうだ
ふーん
その連中がアトランティルートから大量の軍人を引き連れ門の近くで集まっていると
ギルドは国とは関係ないからな、ギルド員を何人増やそうがそのギルドの都合だ。国は何も言えない
どんなに有名な他国の軍人でも「うちのギルド員です」なんて言ってしまえばアランベルト王国側は黙るしか無いのだ
次に第14聖王国
国を乗っ取ると言うよりも光神教を広める為に裏で色々やっているそうだ
国の中枢まで広めれば乗っ取ったと言っても過言では無いからな
特にやっているのが、犯罪者達を利用して多数の暴行事件を引き起こす事
怪我をさせたら光神教が駆けつけて魔法で治す、他の宗教の信者だったら直さず改宗させたり見捨てたりするそうだ
そうすればそれを恐れて光神教の信者が増えると言うもの
しかも雇った犯罪者の多くは爆弾を持たされており命に危機が迫ると自爆する様になっているそうだ
爆弾が爆発すれば多くの被害者が出る
そうすれば光神教の出番と言う訳だ
光神教は多くの戦士と治癒魔法の使える魔法使いが門に集まっている
集まる理由は他国と殆ど変わらないけど
建前は、アランベルト王国にいる光神教関係者と信者の安否確認
それとアランベルト王国で何かあった時の為の、信者を増やす救助要員だな
そして最後にリーンヘント王国
リーンヘントとアランベルトは血の交換などをして繋がりを強くしているが、リーンヘント王国の本当の狙いは文化侵略
今、アランベルト王国は嗜好品や高級品、魔道具の多くをリーンヘントに依存している
リーンヘント王国が無いと駄目なくらいに
人の多くもリーンヘントに流れているそうだ
ちなみにアランベルト王国は第一王女がいるから大丈夫だと思っているけど、無理だろうな
リーンヘント王国から来る商人の多くはリーンヘントの王族に雇われている様子
リーンヘントの策略が上手くいっていると言う事
リーンヘントの王族の一言で貿易を中止したり値段を釣り上げたりするんだろう
今はその雇われ商人達とそれに扮した軍人が大量に門の所にいる
以上の点から、アランベルト王国は放っといても滅びたと言う事だ
それとアランベルト王国がここまで複雑でいつ滅びてもおかしくない状況とは考えていなかったが
俺が壁を作った理由は他国に勘違いさせる為だ
つまりこう言う事
アランベルト王国に突然、大きな壁が出来たかと思うとアランベルトの王都と連絡がつかない?
何故?と言うかどうやってこんな壁を?
数年、いや数十年、数百年単位で作る様な壁だぞ?どうやって数時間もせず作った?
分からん…分からんが、アランベルト王国にこれを可能にする技術、技能が作られた可能性がある
そんな物、各国との力関係を崩しかねない。それどころか敵対されたら負けてしまう
なんとしてでもその技術を破壊
ユニークスキルであるなら最悪その所有者を殺害しなければならない
直ぐに軍を!!!
他国はこう考える訳
つまり、後々バレるとしても数日は俺達の仕業でないと思わせる事が出来るのだ
可能性として挙げられても誰も相手にしないだろう
実際に3日ほど、時間が稼げたしな
と言うか可能性としても上がってないだろう
実際暴れたのはギガントゴーレム、キングトロール、ベル君、神創樹、ミレイさんだろ?
それでいて、でっかい壁
意味が分からなすぎて理解出来ないと思う
俺がこのいずれかの場所に居たとしても理解出来ないと思うもん
「如何しますか?門を開けろと叫ぶ者が増えています。そろそろ開けないと乗り込まれますよ?」
「んー、そだね。そろそろやりますか!!」
俺はハンモックから起き上がる
「ミレイさん、ベル君とキングトロールを王都から連れてきて」
「かしこまりました…後1箇所は?」
「マザーゴーレムを使う」
「マザーゴーレムをですか?また、ギガントゴーレムに?」
「いや?いい使い方を紅が提案してくれたんだ」
それを試してみる
俺は不敵な笑顔を浮かべながら、ハンモックを降りて歩き出した
………直ぐにミレイさんが肩に手を置いて転移したけどね
ハンモックから降りる必要、無かった




