51話 アランベルト王国の滅亡・後
何処からともなく現れたミレイさん
国王が偽物でした?
「申し訳ございません、マスター。私の失態です」
ミレイさんは酷く落ち込んでいる
それにしても国王が影武者でした?
そんなはずは無い
「国王は鑑定したけどちゃんと国王って書いてあったよ」
俺の記憶に間違いが無ければ絶対にアランベルト王国、国王って書いてあった
それに影武者なら影武者と鑑定結果に反映されるはず
スパイだって鑑定結果に出たしな
反映されてないって事は本物
「逆です、マスター」
「逆?」
「鑑定結果に出なかったからこそ、我々は騙されたのです」
ミレイさんはしっかりと俺の目を見て言う
「詳しく聞かせてくれ」
「はい、マスター。まずですね、この世界、フィアリスにはスキルがあります。そしてそのスキルを管理しているのは創造神様です。ここまでは良いですね?」
「うん」
俺は素直に頷く。間違いは無い
「創造神様がスキルを管理している為、スキルはこの世界では絶対的な地位を獲得しています。スキルは人の手によってどうこう出来る事柄では無いですから」
「うん」
それもそうだ
「これを言い換えますとフィアリスではスキル=正しい、スキル=絶対と言う固定概念が生まれると言う事になります」
スキル=絶対の固定概念?
ああ、でも言われると何と無く分かる
イーリスの町で出会った犯罪者達、彼らとは一言も話してはいない。それなのにも関わらず俺は何を持って彼らを犯罪者と認識したのか
鑑定結果にそう出たからである
仮に鑑定結果に優しいだとか紳士だとか善人みたいなのが出ていれば絶対に犯罪者だとは思わなかった
なるほど、確かにスキル=絶対の固定概念が生まれるな
「つまり言ってしまえば、スキルさえ欺く事が出来れば見破る事が殆ど不可能と言う事になります」
まぁ…確かに
スキル=絶対の固定概念があるとすれば騙されるよな、鑑定結果を誰も疑わないし
鑑定結果を疑えば全ての鑑定が意味が無くなってしまうからな
それにしてもスキルを欺く?
「そんな事出来るの?」
「限り無く不可能に近いですが、鑑定関連のスキルに関しては出来ると思います」
鑑定関連のスキル限定で欺く方法があるって事か?
まぁ努力や経験が必要なスキルを誤魔化すのは無理だもんな
でもどうやって…
「マスター、名前とは誰が決めますか?」
ミレイさんが真剣な顔付きで聞いてくる
名前?
「んなもん、親と…か………ああ!!」
そう言う事か!!!
やっとミレイさんの言いたい事が理解出来た
名前とは親であったり親戚であったり、友人や知り合いと様々だが、ようは自分以外の他者が付けた物である
にも関わらず何故、他人が付けた名前が鑑定結果に反映される?
それはその名前を自分の事だと本人が認識しているからだ
つまり、鑑定結果は本人の認識と他者の認識が大きく反映されていると言う事になる
そうじゃなければ称号などと言う欄は必要無い
称号とはまるっきり他者からの評価だ
つまり
「国王の影武者が自分の事を影武者と知らず、国王と同じ名前で、国王として育てられていたとしたら」
「鑑定結果には一切反映されません」
そこまでするか普通?!
「如何しますか?マスター、本物の国王には逃げられている可能性があります」
そうだね、たぶん逃げているだろうね
そして最悪な事にも気付いたよね
俺は遥か遠くにあるダンジョンコアに魔力を送る
ダンジョン内全て、つまりアランベルト王国その全土に魔物支配のスキルを発動
【全員動くな】
そう命令する
すると天井からポトッポトッと数匹の魔物が落ちてきた
「アイアイカメレオン!?」
ミレイさんが叫ぶ
「つまり?」
「インビブル・アイの劣化版です」
要するに俺達は最初から監視されていたって事か
俺は身を翻して歩き出す
ミレイさんも後からついて…桜は?
桜を見ると固まっていた
あーさっきの命令か、と言う事は紅も?
「桜と紅、動いて良いよ」
そう魔物支配を発動する
何と無く2人の動くな命令が解けた事がわかった
と言うか遠隔操作、スキルの長距離発動が可能になってる?
前々から出来たのだろうか?
んー…分からん
まぁ良い、今は最悪な事を何とかしなければ
俺は歩き出す
今度は桜も付いてきた
………
「そう言えばどうして国王が偽物だと?」
移動中、ふと気になった事をミレイさんに聞く
「王妃が拷問に耐えきれず漏らしました」
「ああ、王妃が」
あの聖女の守りを使った人ね
「その王妃は?」
俺がそう聞くとミレイさんはポケットに手を入れて
「はい」
ネチョっとした何かを渡して来た
ネチョっ?
渡された物を見る
「みゃあああああ!!!眼球!!!!!」
俺は大きく振り被り眼球を放り投げた
ああ、ビビった
そして気持ち悪かった
ミレイさんを睨むと小さく笑ってた
この女
………
道中色々とあったが、無事に大臣達のいる部屋に戻ると
木製の全身鎧を纏った紅と倒れる大臣、妻達
桜が動かなくなった時に隙を突いて反撃してきたのを紅が気絶させたのか
紅が太い木刀を掲げている
「マスター!!お帰りなさい!!!」
「ただいま。その鎧や木刀は?」
「身体の一部を加工してみました!!!」
ほうほう
どうやら桜と紅では戦い方が違う様だ
桜は大技重視と言うか、巨大な幹を鞭の様に振り回している様だけに見える
その点、紅は自身の木を加工品の様に変化させて鎧にしたり木刀にしたりして戦うのか
何でこんなにも差があるんだろう?
まぁ性格にもかなりの差があるから当然と言えば当然か
桜が身体の一部を伸ばし、再び大臣達を縛る
「ミレイさん、起こして」
「かしこまりました」
ミレイさんはそう言うと両手をパンッと合わせる
「ハッ!!?」「イタタタッ」「…何が」
全員目を覚ました
「皆様おはようございます。どうやら我々の居ない間に色々とあった様ですね」
俺はそう言いながら微笑む
大臣達は苦虫を噛み潰した様な顔をする
俺はすかさず
「まぁご安心を、その事は不問にしましょう。そう、私から最後の質問です………あんたら囮だろ?」
大臣達が絶句する
やっぱり
「紅、殺せ」
「かしこまりました!!!」
紅は木製の大きなハンマーを創り出し、大臣達に殴りかかる
「やめっ!?」
大臣達の断末魔が聞こえるが気にしない
「どう言う事ですか?マスター」
ミレイさんが聞いてくる
「ミレイさん、こいつらは存在そのものが囮なんだよ」
ここに居た奴らは、全員が囮だった
武器、書類や過去の戦争などの本があるであろう書庫、金庫、国指定の禁庫に、漏らす事の出来ない禁書庫、暗部、宰相、王妃、偽の国王
食料庫などは宰相とかが管理していたのだろう。収納のスキルを持ってたしな
そして城には王都には兵士も十分にいる
つまり、此処にいたこいつらだけで戦争が成り立ってしまうと言う事だ
だからこそ、こいつらは残った
そしてこいつらは立場的に1番狙われる存在である
他の者は逃したとしてもこいつらは何としてでも捕まえろ、そう言われるのがこいつらの立場である
だからこそこいつらは残った、自分自身が隠れ蓑となる為に
「ずっと違和感があったんだよ………子供とかは何処行った?」
ミレイさんは俺のセリフを聞いてハッとした
そう、王族が少な過ぎるんだ。国王と王妃だけ
大臣達も夫婦しかいない
二世は?
此処は貴族社会、血を重視する文化が根付いている世界だ
子供を見捨てる可能性は低い
それに大臣の妻達は自分の家が管理していると言って居た、つまりその子供も管理する権利があると思う
城の何処かで死んでるのでは?と思いもしたけど本物の国王と一緒に逃げたの可能性が高い
「そう言えばこれを」
ミレイさんが指輪を渡して来た
指輪?
「転移の指輪と言う魔道具です」
転移の指輪?
「1度しか使えない代りに指定の場所にどんな所からでも転移出来ると言う魔道具です」
つまり非常用の緊急脱出装置
「大臣達とその妻達が付けて居ました。あと国王の王冠と宰相の持っていた杖にも同じ物が装飾されています」
本当に危険になったらこれで逃げるつもりだったのか
「王妃が拷問中にこれのオート型もあると言っていました」
オート?
「自動って事?」
「はい、王都が襲撃されたと同時に発動するそうです」
あーなるほど、これで全部繋がった
つまり、王都が襲撃を受けたと同時にオート型の転移の指輪が発動
王都に残らなければならない人達を除き、本物の国王や二世達が避難
王都に残った者達だけで出来る限りの抵抗
王都に残った者達の地位や価値が高いから、逃げた者達へ目が向きにくくなる
そして本当に危険になったら転移の指輪で逃げる
抵抗している間に、本物の国王が逃げた先で軍を集めるだけ集めて王都に戻って来る
その為に王城はアイアイカメレオンを使って、遠くからでも状況が分かる様に監視をしていた
もし大臣達や偽物の国王に万が一の事があったとしても本物の国王は逃げてるし、大臣達の二世も逃げてる可能性が高い
そして、王妃は聖女の守りを持っていた事から危険な目に遭う可能性は低い
宰相は…
「宰相はさ、何か言ってた?」
「いえ、何をしてもどんな事をしても一言も話しませんでした」
………どんな事をしたんだろ?
まぁ良いや。たぶん宰相は本物だろう
宰相と王妃が王都に残った事により、本物の宰相、王妃が偽物の国王の側にいるんだ、その隣にいる国王が偽物とは考えないだろう
あー最悪
俺達は手のひらで転がされていたって事か
「如何がしますか、マスター。本物の国王達はアランベルト王国の何処かに居ると思いますが…」
流石のミレイさんにも分からないか
インビブル・アイさえ残っていれば何とかなった可能性も…
「あ、これがあるじゃん」
俺は転移の指輪を見ながら言った
………
転移の指輪を発動して移動、メンバーは俺、ミレイさん、桜、紅の4人
キングトロールとベル君には王都に残ってもらった
神殿の様な場所に移動する俺達
大勢の兵士に囲まれていた
「副隊長!!!」
1人の兵士が叫ぶ
「全員攻「弱肉強食」」
副隊長と呼ばれた男が命令する前に桜の巨木が神殿を暴れ回る
そう言えば前回は気付かなかったけどこの技、捕えたり押さえ付けた兵士を吸収している
捕まえた人達がどんどん消えていた
だから弱肉強食なのか
ただ、数が多過ぎで桜だけでは取りこぼしが結構いる
そこを紅が全てが木で出来たボウガンみたいなのを全身から撃ちまくり、行動不能にして行く
それを桜が弱肉強食で、上手い連携だ
桜が神殿の一部を吹き飛ばす
外だ
みんなを引き連れて外に出ると、これまた大勢の兵士
「我が名はアランベルト王国、総白騎士長なり!此処から先には行かせぬぞ!!総員、限界突破を発動!!!」
偉そうな男が叫ぶ
しかし俺は別の方向を見ていた
「飛行船!?」
空に浮かぶ大きな飛行船、今まさに飛び立っていた
「魔導船です。魔力で浮かぶ飛行船ですね」
ほー魔導船
「総員突撃!!!!!」
男が叫ぶと同時にミレイさんが背後から俺の両耳を塞ぐ
ん?
「いい加減にしなさい…奥義、死の協奏曲「呪歌」」
ミレイさんから音の衝撃波の様な物が波紋の様に広がっていった
頭を上げてミレイさんを見る
今更だけど、ミレイさん背、デカくない?
まぁホムンクスル体だからどうとでも出来るけどさ
本体は俺よりもちょっとデカいくらいだっけ?たぶん
ミレイさんはきこえないが何かを歌っている?
それを聞いた兵士が次々に倒れて動かなくなっていった
すげぇ
桜と紅が倒れたのは駄目だと思うけども
音の衝撃波が飛行船…魔導船に届き軽く揺らす
しばらくしてミレイさんが耳から手を離してくれた
「終わった?」
「はい、緊急でしたので好き勝手にしてしまいました。申し訳ございません」
ミレイさんはまた落ち込んでいる
「何したの?」
「呪いの歌を歌いました。この歌を聞いた者は死にます」
………ん?じゃあ最初からそれ使えばよかったのでは?
「残念なのですが、この力は魂を破壊してしまいます」
「魂を破壊?」
「はい。つまり、この力で死んだ場合はDPにもなりませんし、新種族が居たとしても創造神様の元に送る事もスキルとして回収する事も不可能となります」
あーなるほど、だから使わなかったのか
納得
「桜と紅は…」
「あの2名は本体が神創樹なので死んでも直ぐに蘇れます」
だから敵と一緒に殺したのか
桜と紅は倒れたままピクリとも動かない
「マスター、魔導船の中に転移しますよ」
ミレイさんが俺の肩に手を置く
了解
………
魔導船の中の人も全員死んでた
結果的にと言うか予想取りと言うか
魔導船には本物の国王、王妃?側室と言うやつかな?が2人
王子が3人、王女が4人
大臣の子供達が男女共に1人ずつ
近衛騎士長ってのも居た
これでアランベルト王国は終わったと言う事だ
あー長かった
それにしても、この魔導船
何処に向かって居たのだろうか?
やっとアランベルト王国と決着が着きました!!!




